今月は高校時代からの友人石嶋氏より、貴重な体験談「そけいヘルニア手術を受けて」をいただきました。手術体験談は手賀沼通信の中でもっとも反響の多い記事です。ぜひ皆様のご参考にしていただきたいと思います。
 「70歳での自動車免許更新」は、70歳になって高齢者免許(といっても免許証には高齢者の文字はありません)を受けた私の体験談です。これから70歳以降の免許更新をされる方のご参考になれば幸いです。

そけいヘルニア手術を受けて

石嶋 佳陽     

 私は昨年6月7日に、そけいヘルニアの手術を受けた。この病気も治療も、さほど大騒ぎするほどのものではないが、ただ、加齢に伴って増加してくる病気だということで、一種の老人病と言えなくもない。そこで啓蒙の意味も込めて、この治療経過を記してみたい。

 私は平成15年9月に前立腺がんの全摘出術を受けている。そして更に16年12月には尿路結石を患い、導尿カテーテル(バルーン)を42日間も留置するという治療を受けていた。これらの病気そのものは根本治療できたと思っているが、不幸にも、その後も「尿もれ」に悩まされ続け、前立腺がんのフォローの意味もあって泌尿器科をずっと受診してきた。

 5月の末に、左下腹部の足の付け根のところ(鼠径部・そけいぶ)に鶏卵よりやや小さめの、ぷよぷよした柔らかい突起物があるのに気が付いた。痛みはまったく感じない。最近は腹も出てきたし、脂肪でも溜まったのだろうくらいに考えていた。しかし、優しく押さえ込むと、抵抗無く引っ込んでしまう。こんなことを一日に数回繰り返すような状態だった。
 さいわい月末に泌尿器科の定期健診があり、そこで診て頂いた。医師の診断は「そけいヘルニア」なので、外科を受診するように、という指示であった。直ぐに外科外来を受診したが、結果は「そけいヘルニア」で、外科医からは手術するようにアドバイスされた。
 私は専門が薬学なので、医療関係については多少の知識はある。しかし現実に疾病を告げられ、手術の可否を判断すべき段階になると、ほとんど役に立つような知識も無いことに気づかされた。その日は外科医から予備的な話だけを聞いて、少し考えます、ということにして病院をあとにした。
 常套手段だが、ネット情報の収集・調査を開始した。「そけいヘルニア」という病気の内容、治療法、闘病記、専門医等を調べて、大よその輪郭を知ることができた。
 まず、そけいヘルニアは、足の付け根にある腹壁が加齢とともに弱くなり、腸の一部が飛び出してくる病気である。わかりやすく言うと、脱腸であり、男性の老化現象とも言える。生体構造上女性には少ない。初期には自覚症状も無く、指で押さえれば引っ込むが、慢性化すると痛みを伴ったり潰瘍を起こしたり、押さえても引っ込まなくなってしまう。
 治療は手術以外には無い。手術方式、麻酔方法等にバリエーションがあるが、現在ではプラグ法という術式が普及しており、手術難易度も件数も、盲腸の手術と同程度である。つまり、さほど怖い病気では無さそうだ、というのが一般的な調査結果であった。中には日帰り手術を売り物にしている施設もあるくらいだ。
 このプラグ法というのは、7x10センチくらいのポリプロピレン製の網状メッシュを腹壁の弱った部分に埋め込んで、ヘルニアの出口を塞ぎ、強化する方法である。手術時間は30分から1時間で終了する。
 ここまでの予備知識を持った上で、外科医と面談、詳細な説明を受けることにした。
 課題は、@どこの病院で手術するか、Aどういう手術様式を選ぶか、という2点である。@について、私はその病院の実績を尊重することにしており、受診した狭山市のS病院では、年間150例以上の手術件数を確認した。この数値は、週に3例の手術件数になる。経験度としては、遜色が無いと思われた。
 Aの手術様式はプラグ法という術式に統一されているから、選択の余地は無い。違いは麻酔法だけのことで、局所全身と全身麻酔の、どちらにするかという問題であった。
 ここで私なりの課題があって、できれば『導尿カテーテル(バルーン)』は使いたくなかった。前記したように、私は前立腺がんと尿路結石のフォロ−段階で、尿もれに苦しんでいた時期である。ここで導尿カテーテルを使うと、尿もれが悪化してしまうという不安があった。
 S病院では通常局所麻酔のもとに導尿カテーテルを使い、4,5日の入院ということがルーチン化されていた。しかし私の不安を担当医に相談して、導尿カテーテルを使用しなくてもすむ方法を検討していただいた。担当医、指導医、麻酔医、それに私が加わって相談し、全身麻酔に変更することで私の要求が満たされるということになった。
 手術当日は10:30に手術室に向かい、全身麻酔で手術をして(家人の話では約1時間)、観察室で覚醒したのが17:00であった。嬉しいことに導尿カテーテルは装着されていなかった。担当医から許可が出たので、自力で歩いて自室に戻った。一休止してからトイレに行き、導尿カテーテルなしで、術前と同じように排尿できた時は、独特の感動が沸いてきた。
 5日間の入院のあと退院し、1週間後に外来でチェックを受けて、全ての治療が終了した。
 この手術は、ポリプロピレン製のヘルニアシートを埋め込むためか、術後にツッパリ感があると言われており、確かにそうした軽い局所症状が残っている。半年から1年は継続するらしい。それと導尿カテーテルを留置しなくて済んだから、尿もれを悪化させずに済んだことに、大変満足している。

 今回そけいヘルニアの手術を受けてみて、感じたことがいくつかある。
 そけいヘルニア自体は決して怖い病気ではないが、40歳以上の高齢男性の老人病だから、発病の機会が多い。慢性化させないで、手術を受けたほうが良い。
 自分が患った病気については、自分で充分に情報収集をすべきである。ネットがこれだけ発達しているから、情報はわんさと転がっている。欲しい情報はいくらでも手に入る環境ができている。自分でパソコンを操作する自信が無ければ、恥ずかしがらずに孫・子に頼めばいいし、友人に頼んでも良い。医師との会話で、自分にわずかでも知識があるかどうかは、とても重要なことだと思う。
 どういう病気でもそうだが、どこの病院を選ぶか、どんな治療法を選択するのか、これらは自分で決定しなくてはならない。そのためにも、できるだけ多くの情報を集め、場合によってはセカンドオピニオン(別の医師等の意見を聞く)を得る努力も必要だろう。
 さいわい医療現場では医療過誤ということを念頭に入れて、患者への情報提供は、以前に比し、格段に親切になった。自分の病気に関して、不安なことは、徹底して相談すべきではないかと思う。
 仮に患者に対しての情報提供や説明が不適切だと思われるような医療機関や医師なら、そこでの治療は思いとどまったほうがよい。
 要は、自分の健康は自分で責任を持つ、自分の病気は自分が納得してうえで治療してもらう。極めて常識的な話だが、そけいヘルニアに限らず、これが病気治療の基本のような気がしている。

70歳での自動車運転免許更新

 平成19年1月末に満70歳になりました。ちょうど70歳の誕生日に自動車の運転免許証の更新時期を迎えました。ほとんど運転しませんが一応ゴールドカードですので5年ぶりです。平成19年1月4日に千葉流山の運転免許センターに行き、免許を更新してきました。そこでこれから70歳以上の免許更新を迎える方のために、私の体験をまとめてみました。
 70歳以上になると運転免許の更新方法がそれまでの方法と違ってきます。高齢になればなるほど身体能力が落ちて、運転者としての適正が欠けてくるというのがこの制度を取り入れた理由のようです。最近のニュースなどからは、重大な事故を起こすのは高齢者よりもむしろ若者という感じがしますが、身体能力が衰えてくるのは紛れもない事実なので、新方式は人のためというより高齢者自身のためと割り切るほかないのかもしれません。
 それにしてもお金がかかります。またゴールドカードの人でも70歳ちょうどの人は5年ですが、71歳は4年、72歳以上の人は3年となって、次の更新までの期間が短くなります。これからは高齢者が急速に増えます。各県の公安委員会もいいお金儲けの方法を考えたものです。

1.分かりにくい「高齢者講習」
 平成18年8月、千葉県公安委員会から「高齢者講習受講のお知らせ」というはがきを受け取りました。70歳の誕生日より6ヶ月近く前なのでいぶかしく思いながら読みました。ところがこれが大変難しい内容で何度も読み返しました。それでもよく理解できず、結局免許センターに問い合わせた結果、次のことが分かりました。

@「高齢者講習」
 道路交通法の規定により70歳以上の人が免許を更新する際に受講しなければならない講習。
 受講期間:誕生日の2ヶ月前から1ヶ月後の前日までの間
 費用:6150円
 内容:講義、運転実習(合否の判定はない)、適性検査と視力の判定、各1時間、合計3時間

A「シニア運転者講習」
 この講習は「高齢者講習」と同じ内容でこれを受けると、@の高齢者講習は受けなくてもよい。
 受講期間:誕生日の5ヶ月前から1ヵ月後の前日までの間
 費用、内容とも@に同じ

 何で@とAがあるのか聞いたところ、当初は@しか用意されていなかったのだそうです。ところがその期間だと講習を受けられない人が出たので、あとでAを加えたとのことでした。私が受けたときは一度に3人でした。3人で3時間かかったので1回の定員は3人なのかもしれません。これでは「高齢者講習」の期間内だけでは処理できないのでしょう。そんなことなら@をやめてAだけにすればよいと思うのが普通ですが、当局は頭の固い人が多く法律を変えるのがいやなのでこんなおかしな状態が残っているのでしょうか。
 なお、運転実習、適性検査と視力の判定、の各1時間は3人で1時間ということで一人当たりの時間は10分〜20分くらいです。

B「チャレンジ講習」と「特定任意高齢者講習(簡易)」
 「高齢者講習」に代るものでこれに合格すれば、「高齢者講習」は受けなくてもよい。
・「チャレンジ講習」
 自動車の走行試験で合否の判定がある。不合格の場合は再チャレンジか、「高齢者講習」を受講。そのつど費用がかかる。
 費用:2750円
 時間:1時間
・「特定任意高齢者講習(簡易)」
 「チャレンジ講習」合格者が受けられる講義と適性検査。
 費用:1400円
 時間:1時間

 Bの意味は私の推測ですが、運転に自信のある人に多少安い費用で高齢者講習を受けさせようというものではないかと思います。高齢者講習は高いという批判をかわすために設けられたのでしょう。しかし一度不合格になると費用はかえって高いものとなります。面倒なシステムを作ったものですね。
 はがきには、千葉県内の「高齢者講習」開催教習所の一覧表が載っていました。さっそく我孫子自動車教習所に申し込んだところ、4週間ぐらい先の日を指定されました。それでも一番早い日でした。

2.「シニア運転者講習」を受講する
 平成18年9月21日(木)我孫子自動車教習所で「シニア運転者講習」を受講しました。受講者は3人でした。
 講義は高齢者の安全運転に焦点を絞って説明がありました。そのなかで千葉県の交通事故による死亡者は愛知県についで全国2位、65歳以上の死亡者が約3分の1を占めるという話がありました。でも歩行者の死亡が多いとのことです。気をつけるのは高齢者というより運転者全てです。やや的外れの説明でした。
 そのあと「優良運転者であり続けるために」という高齢者4人が主人公のビデオを見ました。それをみて感じたことは歳をとったらあまり何時までもハンドルにしがみつくのではなく、早めに運転をやめる決断が大切ということです。自分のことより、相手や家族が苦しむことになります。免許証がなくなると本人確認に不便ですが、免許証を返済して1000円支払えば、「運転経歴証明書」を交付してもらえるとのことです。
 そのあと外に出て教習所のコースを走りました。講師と受講者3人が一台のクルマに乗り交替で運転しました。合否の判定はないのですが、30数年前に教習所で習ったときの緊張感が甦りました。空いていたので、「止まれ」の標識があったにもかかわらず、気がつかないで一時停止を怠ったりしました。
 最後は4種類の「運転適正検査」と3種類の「視力検査」でした。「運転適性検査」の機会はゲームセンターにあるゲーム機に似ており、ブレーキとアクセルを操作して信号機を模した赤や黄色や青に反応したり、障害物を避けてハンドルを切ったり、またその両方の組み合わせて操作をしたりします。小学生の孫のほうがいい得点を獲得すること間違いありません。
 視力検査のほうは年令より劣った結果でがっかりでしたが、適性検査のほうは高齢者平均、全運転者平均よりもよい結果が出たのでほっとしました。
 8年前の退職後、健康維持のため歩くことに時間をかけるようになってほとんど運転をしなくなりました。運転から遠ざかると運転をしないことが当たり前になり、かえって運転が億劫になります。ところが70歳の免許更新では実地試験があるといううわさ話を聞きました。本当は実地試験ではなくただ運転してみるというだけだったのですが、実地試験があるなら練習をしなければと半年くらい前から時々ハンドルを握るようになりました。自転車に乗るのと同じで、しばらく乗っていると以前の感覚が戻りました。
 今回の適性検査で標準以上という結果が出たので、今後は自信を持って乗るつもりです。ただ、健康維持の基本は歩くことです。1日1万歩への挑戦のほうがプライオリティは高いと自覚しています。
 「シニア運転者講習」を受講した証拠として「特定任意高齢者講習終了証明書」を受け取りました。これを免許更新時に免許センターに持参して更新をすることになりました。

3.免許を更新する
 平成19年1月4日、千葉県流山の免許センターに行き自動車運転免許証を更新してきました。千葉県の免許センターは従来は幕張の1ヶ所でしたが、東葛地区の住民にとっては遠いのと東葛地区の住民が増えたので、数年前流山にも免許センターが設けられました。
 1月4日なら空いているだろうと「特定任意高齢者講習終了証明書」を持参して新年の仕事始めに出かけたのです。確かに免許センターまでの道はガラガラでしたが、免許センターは大賑わい、長蛇の列でした。休日が続いて待ち焦がれていた人と4日はまだ会社が休みで訪れた人などで混雑したのではないでしょうか。総合受付、印紙購入、適性検査(視力検査)の3ヶ所で数十人の待ち行列に並びました。ただ、高齢者は事前に講習を受けることが義務付けられているため講習の時間はなく、1時間15分ほどで免許証を受け取ることができました。更新手数料は2100円、高齢者講習の費用と合わせると、8250円でした。
 ちなみに70歳未満の免許更新にかかる費用は、更新手数料は2100円ですが
講習手数料  合計
・優良運転者700(30分)2800円
・一般運転者1050(1時間)3150円
・違反運転者1700(2時間)3800円
・初回更新者1700(2時間)3800円
 といずれも高齢者より安くなっています。今の違反の多さと悪質さを考えると、悪質な違反者については、講習以外に適性検査や実技試験も加えて高齢者以上の費用を徴収してもいいのではないかと思います。

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