平成19年4月19日から27日まで、妻と阪急交通社の「オランダ・ベルギー・モンサンミッシェル・パリ9日間」という旅行に参加しました。
 オランダ・ベルギー・ルクセンブルグを回るというのが普通のコースですが、ベネルックス三国でなく、人気の高いフランスのモンサンミッシェルを取り入れたところがこのコースの売り物のようです。また選んだ日程が、オランダのリッセで1年に1日だけ開催される花のパレードを見物するのも目玉のようでした。

オランダのキューケンホフ公園
 いい時期を選んだことにより、また連日の好天にも恵まれて、オランダのチューリップをはじめ各都市や観光地でいろいろなきれいな花を目にすることができました。世界遺産のモンサンミッシェルは評判どおり素晴らしく感動的でした。ただ、このコースは移動時間が多く、かなりきつい日程で観光名所のつまみ食いといった印象も受けました。パリは付け足しで、モンサンミッシェルにいく都合上、コースに組み込まざるを得なかったのではないかと思います。そのためかパリ観光はかなり手抜きが目立ちました。
 今回は旅行記というより、ブログに書いた体験したこと、感じたこと多少加筆修正しております。
 内容は例によって、独断と偏見に満ちています。ご容赦ください。
 なお挿入した写真は妻が撮ったものです。

ヨーロッパの都市の美しさと汚さ
 
 まず感じたことはヨーロッパの都市の美しさと汚さでした。
 今回の旅行で訪れた場所はアムステルダム、キンデルダイク、ブリュッセル、ブルージュ、モンサンミッシェル、パリ、フォンテーヌブローです。世界遺産を6ヶ所回りました。どこも美しく素晴らしい場所でした。歴史の遺産がしっかり守られていました。
 特にパリの街並の美しさは都市美の極致といってもいいと思います。景観の素晴らしさです。日本ではいたる所で見られる看板や自動販売機はありません。パリでは景観を台無しにするような建物を立てることが出来ないと聞いています。環状道路で囲まれたパリ市内には、高層建築はほとんどありません。東京のように景観を全く無視した都市開発と比べると、建物の高さの制限など景観を守るための手立てが見事に守られています。エッフェル塔はどこからでもその優美な姿を見ることが出来ます。高層建築はパリ市外のラ・デファンスにまとめて建設されていました。
 凱旋門とシャンゼリゼ通りに見られる放射線と直線を重視した街路、コンコルド広場に配置された左右対称の建物、広々した石畳の道、両側の美しい街路樹、歴史を感じさせる石造りの建物、古い駅舎を美術館に変身させるような古いものを大切にする伝統など、どれをとってもその素晴らしさに魅せられてしまいました。
 アムステルダムやブルージュの街並もそれぞれ見事でした。
 ところが私たちの感覚からすると気になることがいくつかありました。街並の美しさに比べて、市内の道の汚さです。ブリュッセルでもブルージュでもパリでも感じたのですが、道を歩く時は下を向いて歩かないと、犬の糞を踏みつけるおそれがあります。ブルージュでは犬だけでなく、観光用に走っている馬車の馬糞が加わっていました。犬の散歩をしている人には、日本のように糞を拾うためのビニール袋や手提げを持っている人は見かけませんでした。

パリのエッフェル塔
 歩きながらタバコを吸っている人も大勢いました。しかもそのタバコを無造作に放り投げるのです。石畳の目地にタバコの吸殻がいっぱい詰っていました。石畳のため掃除しても吸殻をなかなか機械が吸い込まないようです。
 道路はまるで駐車場です。古い建物は石造りで駐車場を持っていません。駐車場を設けるように改造している建物もありましたが、簡単ではないようです。
 路上駐車のためか車もあまり洗わないのではないでしょうか。ほこりまみれの車が結構走っていました。
 美しさと汚さが混在しているヨーロッパの町でした。

観光産業は女性が支える


美人のバス運転手
 パック旅行をするたびに観光産業は女性が支えているのだということを痛感します。
 添乗員はほとんどが女性です。今まで経験した海外旅行の添乗員は全て女性でした。それも若い女性で、きびきびした態度で要領よく中高年の参加者をリードしていました。女性は男性よりソフトで明るく楽しい気分にさせてくれます。国内旅行の場合も2回ほど男性だった記憶がありますが、あとは全て女性でした。
 海外の各都市の観光には現地のガイドがつきます。日本語の達者な現地人であったり現地に長く滞在している日本人であったりしますが、このガイドも女性の割合のほうがかなり多いと感じています。今回の旅行でも7人中6人が女性でした。
 圧巻はパリ−モンサンミッシェル片道358キロの往復のドライバーが女性だったことです。映画スターといわれても不思議ではないくらい若くて美しい女性でした。休憩時間になるとタバコをスパスパ吸っているのは気になりましたが、重たいスーツケースを軽々とトランクから出し入れしていました。運転は女性らしく丁寧でスピードも押さえ気味でした。
 それに何より観光を支えているのは女性の観光客です。今回の旅行も参加者32人中25名が女性でした。夫婦はわずか4組、旅行は賑やかな女性群がリーダーシップをとっていました。バスやレストランの座席も我が物顔で確保していました。そして行く先々でちょっと場違いな日本女性の高笑いが響いていました。
 買い物も女性の特技です。男性がお金を使うのは飲み代くらいですが、女性は観光地でその場所の名物を上手に見つけます。ブランドものの知識も豊富です。そして思い切ってお金を使います。
 つくづく女性が観光業を支えていることを実感させられました。

ヨーロッパは物価が高い

 日本人にとって今回のヨーロッパ旅行は物価の高さを感じさせられた道中でした。その原因はユーロ高です。
 円をユーロに換えたのは柏のワールドカレンシーショップですが、昨年5月にイタリア旅行をした時、平成18年5月25日のユーロの交換レートは147.94円でした。今回は4月13日に交換しましたが、レートは164.65円に上昇していました。1年間で11%以上の上昇です。(なお5月3日のレートは167.11円にまで上昇しています。)

ベルギーの高級アーケード街
ギャラリー・サンチュベール
 昨年ベニスに行った時に、11年前と同じベネチアングラスの販売店に立ち寄りましたが、同じ商品が倍の値段になっていました。今から12年前は円の対ドルレートが80円を切って円が一番高い時だったので安く買えたともいえますが、ユーロに統一されたときに物価が上がり、さらに今のユーロ高で、ヨーロッパでの買い物は日本人にとっては高いものにつくようになりました。
 今回の旅行では500ミリリットルの水が安いところで1ユーロ(約165円)、観光地では2ユーロ(330円)以上でした。日本より50%以上高くつきます。食事や買い物も日本円に直すとほとんどが日本よりも高い値段になっていました。
 そのせいもあってツアー仲間にも以前ほど買い物に勢を出す人が多くない感じです。買い物店に立ち寄る回数も減りました。
 買い物目的でなく観光目的の私たち夫婦には図らずも好ましい結果となりました。

「ニーハオ」が東洋人への挨拶?

 旅行中に街を歩いていると、町の人や西洋人の観光客からなんどか「ニーハオ」と声をかけられました。
 その度ごとに、私と妻は日本人を中国人と間違えるとはとんでもないと感じました。たしかに中国人や韓国人の観光客も来ていますが、東洋人の中で圧倒的に多いのは日本人の観光客です。
それなのになぜ「ニーハオ」なのと、ショックを受けました。  しかし何度か声をかけられているうち、はたして彼らは私たちを中国人と思って「ニーハオ」と声を掛けたのだろうかと考えるようになりました。以下は私の独断と偏見での解釈です。
 欧米人を日本の街角で見かけたとき、私たちが声を掛けるとしたら、「ハロー」か「グッドモーニング」ではないでしょうか。フランス人なら「ボンジュール」、イタリア人なら「ボンジョルノ」、ドイツ人なら「グーテンモルゲン」、スペイン人なら「ブエノスディアス」というべきなのでしょうが、その人がどこの国の人かは見分けは付きません。「外国人」は「ガイジン」としか映りません。
「ガイジン」なら英語というのが私たちの発想です。
 ヨーロッパ人はおそらく私たち東洋人が、日本人か、韓国人か、中国人かは分からないと思います。小柄で黄色い肌をし、同じような顔をしている私たちが、どこの国の人間か区別することは、私たちが欧米人を見るときと同じように難しいと思います。
 彼らが「ニーハオ」と呼びかけるのは、おそらく「ニーハオ」が一番言い易いのでしょう。「こんにちは」とか「アンニョンガセヨ」より短く、覚えやすく、発音がしやすく、しかも元気のよい挨拶言葉です。
 あるいは、もしかしたら欧米にも中国製の商品が市場にあふれていてそのため中国に親近感を持ち、「ニーハオ」と言うのかもしれません。「経済は1等国だが、政治は3等国」といわれた日本が、経済でも3等国になったのかもしれません。
 私たちが「こんにちは」と言われるためには、観光客をいっぱい送り出すだけでなく、もっと別の面で日本の存在感を示すことが必要なのかもしれません。

印象的だったのはキリスト教のパワーと水のある風景

 昨年のイタリア旅行でもキリスト教のパワーに圧倒されましたが、今回の旅行でもキリスト教の力を再認識しました。

フランスのモンサンミシェル
 比較的宗教色の薄いプロテスタントのオランダ、プロテスタントとカトリックが混在するベルギーにも多くの教会、修道院、大聖堂、礼拝堂がありましたが、感動的だったのはモンサンミシェルです。モンサンミシェルはパリから約360キロ、フランス西海岸、サンマロ湾上の小島に築かれた修道院です。
 8世紀はじめに「岩山に修道院を建てよ」との聖ミカエルの命によって、小島の岩山に小さな礼拝堂を建てたのが修道院の始まりです。10世紀末にはベネディクト派の修道院となり、11世紀にはロマネスク様式の教会が建てられ、13世紀のゴシック様式が登場すると、建物は上へ上へと延びていきました。19世紀にはこの建築のすばらしさが再認識され、現在は世界遺産に登録されています。
 私たちはモンサンミシェル内のホテルに宿泊し、翌日現地ガイドの案内で修道院と教会を観光しましたが、小さな岩山に長い年月をかけてよくもこのような建造物を立てたものと驚嘆しました。
 今回の旅での2番目の発見は水のある風景の美しさです。オランダのアムステルダム、ベルギーのブルージュ、フランスのパリの美しさです。

ブルージュの運河
 アムステルダムは運河の町です。オランダは国土の25%が海抜0メートル以下です。詳しいことは分かりませんが、運河を作ったというより、水の中に土地を作ったため、残った部分が運河となったと言ってもいいのかもしれません。運河クルーズをしましたが、水面から見るアムステルダムの町は一段と立派に見えました。
 ブルージュは水の都です。運河と橋が美しい街です。中世そのままの景観が残っていて世界遺産となっています。運河クルーズでその美しさを堪能しました。
 モンサンミシェルも海の潮の満ち干きの見事さで有名です。干満の差は15メートルもあり、満月と新月には自然の威力による最大のショーが演じられます。今回は潮の満ち干きは楽しめませんでしたが、以前テレビで見たときは驚きでした。
 パリのセーヌ川河岸は世界遺産となっています。セーヌ川クルーズでは両岸の景観の見事さを心行くまで楽しめます。今回はバスでの観光でしたが、現地ガイドの説明でその美しさを保つには当局と市民の並々ならぬ努力があることを知りました。

自転車道はいいもんだ

 オランダには車道と歩道の間に自転車専用道があります。日本のように自転車は歩道を走るのではなく自転車道を走ります。

アムステルダムの自転車道
 日本では歩いている時はスピードを出して歩道を走る自転車が気になります。恐怖と怒りを感じる時があります。自転車に乗っている時は、のんびり歩いている人がわずらわしくなります。
 オランダでは歩道は安心して歩けます。時々後ろを振り返る必要はありません。自転車道は人を気にせず走れます。かなりスピードを出せます。お互いにハッピーです。
 日本では最近自転車による歩行者への事故が増えています。自転車に乗る人が増えたことと乗る人のマナーが悪くなっているためです。私も先日歩道で高校生に自転車をぶつけられ、足をすりむきました。
 オランダで気をつけなければならないことは、歩いている時自転車道にはみ出さないことです。日本人観光客は大勢でぞろぞろ歩く上に自転車道があることを忘れて、つい歩道からはみ出してしまいがちです。また、道の向こう側に渡るとき、クルマだけでなく、自転車道を走ってくる自転車にも気をつける必要があります。
 オランダでは自転車が一番威張っている感じです。今は知りませんが、8年前に中国に行った時自転車の数の多さに驚きました。自転車は車道をクルマとすれすれに走っていました。バスガイドは自転車のほうが威張っていると言っていました。
 しかしオランダの自転車は専用の道があります。そこが中国と違います。通勤や通学で多くの人が自転車に乗って通っていました。冬にオランダに行った人の話では、凍りついた運河を通勤や通学にスケートで通う人がいるとのことです。クルマと比べるとはるかに環境に優しい方法です。
 クルマ公害がますます激しくなっている日本でも、自転車専用道を作る都市が出てきてもいいのではないでしょうか。

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