今月は133号の続きと旅行記です。
 先月号で天地人の主人公を直江兼次と書きましたが、直江兼続が正しいです。申し訳ありません。

平成百景決定

 手賀沼通信133号で取り上げた読売新聞創刊135周年記念の新時代の景観を選ぶ平成百景が決まりました。
 投票は300の候補地から1人5ヶ所までの併記式で、はがき11万6242通、インターネット5万7372通、合計64万2314通の投票が寄せられました。
 1位から30位までは投票どおりに選ばれました。31位から100位までは順位をつけないこととし、70の景観を10人の選考委員が決定しました。70の景観については、地域振興のための地域バランスや平成になって再生・見直しされた景観などを重視しているようです。得票順位100位までの景観の約7割が平成百景に入っているとのことでした。
 下記の表が平成百景です。

平成百景
順位平成百景都道府県予想 順位平成百景都道府県予想 順位平成百景都道府県予想
1富士山山梨・静岡 2昇仙峡山梨  3知床北海道
4十和田湖・奥入瀬川青森・秋田 5合掌造り岐阜・富山 6京都の寺社京都
7姫路城兵庫 8上高地長野 9函館の夜景北海道 
10尾瀬群馬・福島・新潟 11高千穂峡宮崎  12宮島広島
13甲府盆地の夜景山梨  14秩父夜祭埼玉 15縄文杉鹿児島
16東京タワー東京 17美瑛の丘北海道  18釧路湿原北海道
19白崎海岸和歌山  20伊勢神宮三重 21阿蘇山熊本
22黒部ダム富山 23霞ヶ浦の帆引き船茨城  24曾木の滝鹿児島 
25日光の社寺・杉並木栃木 26錦帯橋山口  27東京ディズニーリゾート千葉
28蔵王山形・宮城 29サンゴ礁沖縄 30原爆ドーム広島
 流氷北海道   旭山動物園北海道  ねぶた青森
 弘前城青森  白神山地青森・秋田  平泉岩手
 角館秋田   山寺山形  松島宮城
 会津若松福島   大内宿福島   草津温泉群馬
 鉄道博物館埼玉   川越埼玉   長瀞埼玉 
 佐原千葉  丸の内東京   秋葉原東京 
 京浜工業地帯東京・神奈川   浅草寺雷門東京   柴又帝釈天・矢切の渡し東京・千葉
 日本橋東京   横浜みなとみらい神奈川  鎌倉神奈川
 箱根芦ノ湖神奈川  北アルプス長野・岐阜等  松本城長野 
 妻籠・馬籠長野・岐阜  山古志の棚田新潟   金沢石川 
 永平寺福井  東尋坊福井  犬山城と日本ライン愛知・岐阜
 名古屋城愛知  大井川鉄道静岡   高山岐阜 
 琵琶湖滋賀  延暦寺滋賀  祇園京都
 天橋立京都  伊根の舟屋京都   奈良の寺社奈良
 法隆寺奈良  吉野山奈良  大阪城大阪
 中之島大阪   通天閣大阪  神戸ルミナリエ兵庫
 高野山和歌山  熊野古道和歌山・奈良・三重  四国霊場八十八か所四国
 金刀比羅宮香川  直島香川   鳴門の渦潮徳島
 四万十川高知  道後温泉愛媛  鳥取砂丘鳥取
 宍道湖島根  出雲大社島根  倉敷岡山 
 秋吉台山口   大宰府天満宮福岡  吉野ヶ里遺跡佐賀
 平和公園長崎   雲仙岳長崎  熊本城熊本
 別府八湯大分  湯布院大分  桜島鹿児島
 竹富島沖縄

予想的中率67%

百景の私の予想的中率は67%でした。30位までに限れば70%当たりました。
 投票は旅行を楽しむ人だけでなく、地元や観光業者などの観光を推進したい人の意向が反映します。読売新聞には、地元山梨の熱烈な支持で2位に入ったのが「昇仙峡」とありました。13位に入った「甲府盆地の夜景」も、おそらく地元の投票が多かったのではないでしょうか。両方とも行きましたが、私は2位と13位の順位は出来過ぎではないかと感じています。
 読売新聞では百景を旅行ルートに織り込んだ旅行プラン「四季の島 35の道」を募集しています。百景がこれからの観光にどう発展していくか楽しみです。
 私の予想が外れたのは下記の33の候補でした。おそらくいくつかの候補は投票で100位までに入っていたのではないかと思っています。

<予想が外れた候補>
 大雪山・層雲峡北海道  さっぽろ雪まつり北海道  YOSAKOIソーラン祭り北海道
 三内丸山遺跡青森  桧原湖・五色沼福島  奥日光栃木
 華厳の滝栃木  偕楽園茨城  谷川岳群馬・新潟
 浅間山・鬼押し出し群馬  東京湾アクアライン千葉・神奈川  東京ドーム東京
 築地市場東京  東京ベイエリア東京  善光寺長野
 トキ新潟  おわら風の盆富山  立山連峰富山・岐阜
 白山石川・福井・岐阜  浜名湖静岡  彦根城滋賀
 五山送り火京都  だんじり祭大阪  甲子園球場兵庫
 明石海峡大橋兵庫  桂浜高知  阿波踊り徳島
 大山鳥取  石見銀山島根  しまなみ海道広島・愛媛
 博多祇園山笠福岡  霧島宮崎・鹿児島  首里城首里城 沖縄

松山の春

1.50年ぶりに見るふるさとの桜
 平成21年4月5日から7日まで、父の17回忌のため四国の伊予市に帰省したとき、妻と二人で四国松山の春を楽しんできました。
 春や昔十五万石の城下かな 
 正岡子規がふるさと松山を読んだ句です。松山を県都とする愛媛県は瀬戸内海に面した穏やかな県です。人も穏やかで文人や学者は多く輩出していますが、お隣の高知県のように高名な政治家や革命家などは生んでいません。
 私は松山で生まれ、松山から10キロほど西の伊予市(昔は郡中町でした)で育ち、高校を卒業した年の夏から東京に出ました。学生時代は春休みに帰省してふるさとの桜を楽しみましたが、サラリーマンになったあとは桜のシーズンに帰省した記憶はありません。ほぼ50年ぶりに見るふるさとの桜でした。
 今回訪れたのは道後公園と松山城です。どちらも桜の名所として有名です。
 宿の道後温泉についたのは夜でしたが、道後公園のライトアップされた満開のソメイヨシノが夜空に白く浮かんでいました。

道後公園の桜
 翌朝、あらためて道後公園を歩きました。道後公園は道後温泉に隣接した公園で、中世伊予の守護河野氏の居城だった湯築城跡です。資料館や復元した武家屋敷があり、国の史跡に指定されています。私が子供の頃は公園の中に動物園がありました。子規記念博物館もすぐそばです。
 公園の中心にある小高い丘から見下ろす桜は見事としか言いようがありませんでした。
 次に松山城に向かいました。道後温泉から市内電車に10分ほど乗り、大街道で降りて登城口まで5分ほど歩きました。登城口のロープウェイ乗り場からはロープウェイかリフトで頂上近くまで登れます。私たちは外の空気に触れられるリフトを選びました。

松山城の桜
 松山城は豊臣秀吉の家臣だった賤ヶ岳七本槍の一人加藤嘉明が築城した名城で、海抜132メートルの勝山山頂に聳え、市内どこからでも見ることが出来ます。火災や戦火で失われた櫓などもすべて木造で復元、築城当時の姿を残しています。江戸時代以前に建築された天主が現存する全国12城の一つで、日本100名城に選定されています。
 天守閣を望む山頂の公園や途中の数々の門の脇の桜がまばゆいばかりです。天守閣からの眺めは春霞でややぼやけていましたが、桜の季節には合っていたのかもしれません。


2.道後温泉本館
 道後温泉に泊まる最大の目的は道後温泉本館の湯に入ることでした。

道後温泉本館
 道後温泉本館は、日本最古の歴史を誇る道後温泉のシンボルです。木造三層楼の本館は明治27年に建てられました。平成6年には温泉施設として日本で始めて国の重要文化財に指定されました。
 よくテレビドラマや報道番組で道後温泉というと本館が登場します。おなじみの建物です。
 ここでの入浴方法は4種類です。
 ・神の湯 1階  400円
 ・神の湯 2階  800円 貸浴衣、お茶、せんべい付
 ・霊の湯 2階 1200円 貸浴衣、お茶、せんべい、貸タオル付
 ・霊の湯 2階 1500円 個室、貸浴衣、お茶、坊ちゃん団子、貸タオル付
 本館は私たちの宿から5分ほどのところにありました。宿にも立派な温泉があるのですが、1度本館の湯に入ってみたいというのが妻の願いでした。私も本館の湯に入るのは十数年ぶりです。私が子供の頃は道後温泉には内湯がなく、温泉に浸かるには本館まで行く必要があったのです。今ではその必要はありませんが、昔の風情を求めて多くの泊り客が本館を訪れます。
 私たちは1200円のコースにしました。大広間に衣装かごと座布団が並んでいました。平日で空いていました。浴場は1階にあり、石造りで歴史を感じさせるつくりになっていました。浴槽は深く豊富な湯がそそがれていました。でも豪華な温泉ホテルの浴場と比べてはいけません。浴槽はそれほど広くなく外の景色は全く見えません。洗い場も少なく、設備は質素です。夕方でしたが入っていたのは私一人でした。
 妻も苦笑いしながら出てきました。イタリアのアマルフィやフランスのモンサンミシェルの歴史の古い由緒あるホテルに泊まった時にも感じましたが、歴史を伝えるということと快適な施設や設備にするということは二者択一のものかもしれません。

3.坂の上の雲ミュージアムと伊丹十三記念館
 坂の上の雲ミュージアムと伊丹十三記念館は松山の新しい観光スポットです。共に約2年前にオープンしました。ミュージアムは平成19年4月28日に、記念館は平成19年5月15日に開館したのです。

坂の上の雲ミュージアム
 坂の上の雲ミュージアムは司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」から生まれました。「坂の上の雲」は、松山出身の正岡子規、秋山好古、秋山真之を中心に日本における近代国家の形成を大きな時代の流れの中で描いたスケールの大きい作品です。司馬遼太郎の作品の中では、「竜馬がゆく」と共に最も高い人気を博しています。
 松山市は「坂の上の雲」で街づくりを図っています。ミュージアムはその構想の中で企画されたのでしょう。松山城のふもと、愛媛県庁のそばに建設されました。すぐ裏には、正岡子規と夏目漱石が共に暮らした「愚陀佛庵」があります。
 ミュージアムは三角の建物の中に展示物が大変洗練された形で配置されていました。
 ところどころに小説の中の文章が顔を見せます。見物客を作品に引き込んでいく、憎いばかりの気配りがなされていました。
 入口には、この秋から3年間に渡って放映されるNHKのスペシャル大河ドラマ「坂の上の雲」のスチール写真が展示されていました。おそらく放映が開始されたら、多くの観光客でにぎわうことでしょう。

伊丹十三記念館
 伊丹十三記念館はミュージアムと比べると規模は小さいですが、とてもしゃれた記念館になっていました。場所は市の中心の大街道からタクシーで900円足らずのところにありました。
 伊丹十三は京都市生まれ、松山に住んだのは高校時代の数年ですが、なぜか記念館は松山に建てられました。館長は宮本信子さん、今大河ドラマ「天地人」の語り手を務めています。記念館を入ると、まず宮本信子さんの映像と声で迎えてくれます。
 伊丹十三は、商業デザイナー、俳優、エッセイスト、テレビマン、雑誌編集長、映画監督と多彩な分野で才能を発揮した人です。記念館にはその業績を髣髴させる展示がなされていました。
 お土産にかわいい「十三まんじゅう」が売られていました。
 伊丹十三の突然の自殺は今も不可解ですが、記念館には微塵もそんなことを感じさせないさわやかな雰囲気がありました。

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