今月は日食観測記です。

日食観測記

 平成21年7月22日、日本中が皆既日食の話題に湧きました。私も我が家で部分日食を見ようと張り切っていましたが、千葉県我孫子市の空は厚い雲に覆われました。せっかく買った日食グラスは出番がありませんでした。
 でも皆既日食は見ることができました。今月号はそのレポートです。
 観測記だけでなく、ついでに日食の知識や日食にまつわるエピソードなども調べてみました。
 この記事を書くに当たって
・ホームページ:国立天文台 2009年7月22日皆既日食の情報
・ホームページ:Wikipedia「日食」
・「完全ガイド皆既日食」武部俊一 朝日新聞出版
・NHK総合テレビ「体感生中継!46年ぶりの皆既日食」
を参考にしました。
 1章、2章、3章は文章を日食観測前のトーンでまとめています。そのあとは観測時、または観測後のトーンとなっています。

1.日食の基礎知識

(画像のクリックで拡大表示)
// 画像  そんなことは知っているよといわれるかもしれませんが、まずは日食についてのおさらいをしてみましょう。
 国立天文台のホームページには次のような説明が載っていました。
 『「日食」とは、月が太陽の前を横切るために、月によって太陽の一部(または全部)が隠される現象です。太陽が月によって全部隠されるときには「皆既日食」と呼ばれます。今回は一部の地域でこの「皆既日食」が見られます。また、太陽のほうが月より大きく見えるために月のまわりから太陽がはみ出して見えるときには「金環日食(または金環食)」と呼ばれます。太陽の一部しか隠されないときには「部分日食」と呼ばれます。
 日食は、見る場所によって、どのくらい深く欠けるかも違いますし、日食が始まる時刻や一番大きく欠ける時刻・日食が終わる時刻も違います。』
 太陽の直径は月の直径の400倍です。また、地球と太陽との距離は、地球と月との距離の400倍です。
 NHKテレビで秋田の小学校での授業風景が紹介されていました。ダンボールか何かで数十センチの物差しを作り、その両端に地球と月になぞらえた球を大きさと距離を縮小してくっつけました。大きな風船を月の直径の400倍の大きさに膨らませて、別の先生が風船を抱えて物差しの400倍の遠くの場所に立ちました。運動場の向こう端でした。生徒はその物差しを風船のほうに向けて覗き、風船が小さな月の球に隠れるのを実感していました。
 皆既日食では突然夜が訪れたり、ダイヤモンドリングや太陽面のコロナなどが見られます。

2.今世紀最大の皆既日食

(画像のクリックで拡大表示)
// 画像  今回の皆既日食は21世紀最大の皆既日食といわれます。その理由は皆既継続時間が6分39秒で21世紀最長のためです。21世紀中に6分を越える皆既日食は後3回ありますが、2009年を越えるものはありません。次の長い皆既日食は2186年7月16日の7分29秒です。
 日本にとっては1963年北海道での皆既日食以来、46年ぶりに陸上で見られる皆既日食です。小笠原での洋上皆既日食からも21年ぶりのこととなります。
 今回の皆既日食観測の日本での主舞台はトカラ列島です。皆既日食中心線に一番近い悪石島が最も人気がありました。7月21日のNHKのニュースでは住民68人の悪石島に218人が来ると報じていました。
地名食の始め食の最大最大食分食の終り
札幌10時4分30秒11時10分18秒0.50612時16分3秒
仙台9時59分9秒11時12分52秒0.65712時26分24秒
東京9時55分33秒11時12分58秒0.74912時30分20秒
京都 9時47分40秒11時5分52秒0.80912時25分21秒
福岡9時37分39秒10時56分5秒0.89712時17分48秒
那覇9時32分50秒10時54分7秒0.91712時20分19秒
 その他、北は屋久島と口永良部島の全島、種子島の最南部、南は喜界島全島、奄美大島の北部が皆既日食が見られる陸地となりました。
 これらの場所で日食観測を行うツアーが人気を呼び、宿泊施設が少ないこともあってほとんど満杯とのことです。
 その他の日本各地では部分日食が見られます。上の図はそれを示しています。見にくいのでその一部を拡大すると左記のようになります。

 今回の皆既日食は、インドのムンバイの北200キロのインド西岸での日の出に始まり、インド、ネパール、バングラディッシュ、ブータン、ミャンマー、中国、日本などを通って、中部太平洋キリバスまで続きます。インドのボパール、ヴァラナシや中国の成都、重慶、武漢、杭州、上海などの都市でも皆既日食が楽しめます。
 中国への日食観測ツアーも大人気と聞いています。

3.部分日食観測の準備
 私が日食を初めて知ったのは、1948年5月9日の北海道礼文島での金環日食の時でした。小学校6年生でした。終戦後3年、日本はまだ戦後の混乱期でしたが、日食は子供たちにとっては宇宙や天体現象を知る絶好のチャンスだったと思います。たしかすすで黒くしたガラス片で部分日食を見たのを覚えています。他の島の名前などほとんど知らなかった6年生が、礼文島という小さな島の名前をしっかり覚えたのもそのときです。
 今回の日食観察では、すすで黒くしたガラス片は目に悪いので使わないよう注意が出ていましたが、当時はそれくらいしか観測手段はありませんでした。
 46年前の北海道の皆既日食は記憶にないので、今回の日食観測は私にとって実に60年ぶりです。72歳の年齢では次はいつ見られるか分かりません。しっかり日食を観察しようと6月中頃から準備を始めました。手賀沼通信の絶好の記事になるはずです。
 まず我孫子市の図書館で日食に関する本を探しました。2009年5月30日に出版されたばかりの「完全ガイド 皆既日食」武部俊一 朝日新聞出版が見つかり借りてきました。大変読みやすく分かりやすい本でした。よく借り出されずに残っていたものです。
 また、7月22日の日食に関する新聞記事はすべて切り抜きました。
 次にその本に出ていた日食グラスを「メガネのパリミキ」で取り寄せ購入ました。世界天文年2009日本委員会推奨のピクセン社の日食グラスです。アルミ箔をコートしたポリエステルの窓から太陽を見るようになっていました。
 小学6年生の時はすすをつけたガラスで見たのですが、それでは安全性は保証できないようです。当時は日食グラスのような気の効いたものはなかったのでしょう。
 あとは当日のお天気が良くなることを祈るだけでした。

4.皆既日食を見た
 7月22日はいつものように5時に起床し空を見上げましたが、我孫子は厚い雲が空を覆っていました。これでは太陽は見えません。部分日食が最大となる11時13分頃に雲が切れてくれればいいのですが、天気予報ではその望みはないようでした。
 仕方がないのでテレビで皆既日食を観測することにして番組を調べました。
 NHK総合テレビが10時30分から、日本テレビが8時から、TBSテレビが10時5分から、フジテレビが9時55分からそれぞれ生中継の特別番組を組んでいました。
 結局放送開始が一番早い日本テレビを8時過ぎから見始め、10時30分過ぎからはハイビジョンのNHKを見ることになりました。
 日本テレビでは中国上海にレポーターを派遣していました。日本より早く9時40分頃に皆既日食となりましたが、天候は雨、日食は全く見られませんでした。ただ、突如夜がやってきました。テレビのレポーターの顔が見えなくなり、まわりのライトが輝き始めました。レポーターは自分の持っていた懐中電灯で自分の顔を照らしながらそのときの上海の様子を話していました。
 NHKは太平洋上と硫黄島からハイビジョンで皆既日食を中継しました。
 太平洋上はクルーズ船からの中継でした。船は雲のないところに自由に移動できます。船にはNHKの報道班だけでなく、観測ツアーに参加した日食ハンターが乗っていました。NHKは男女各1名のレポーターを派遣し、船の上から見る皆既日食や周りの情況などを報告しました。
 硫黄島は国立天文台のチームが、コロナの観測とあわせて、皆既日食の生中継を行いました。中継計画は、硫黄島で撮影した日食のハイビジョン映像を、日本の超高速インターネット衛星「きずな」を介して、世界中にリアルタイムで公開するというものです。また、生中継は国内の各テレビ局や科学館などにもハイビジョンで配信されました。

日食観測を行った硫黄島(画像のクリックで拡大表示)

皆既日食で夜になった船上(画像のクリックで拡大表示)

皆既日食で太陽が隠れた(画像のクリックで拡大表示)

コロナのプロミネンス(画像のクリックで拡大表示)

 妻と私は42インチのテレビで太平洋上と硫黄島から送られてくるNHKのハイジョン画面を見ました。そしてデジカメでその画面を撮影しました。
 ここでご紹介した写真はテレビ画面を写したものです。時間は11時20分頃から11時40分頃までとなっています。

ダイヤモンドリング直前か直後(画像のクリックで拡大表示)

ダイヤモンドリング(画像のクリックで拡大表示)

 皆既日食となったトカラ列島、奄美大島、屋久島などは雨や曇り空で、皆既日食の観察はできませんでした。日本全体も曇り空が多く、部分日食が観測できたのはごく一部でした。沖縄では好天に恵まれ部分日食が観測できました。
 話題の中心となった悪石島では島民68人の4倍を超える約290人の観光客やツアー運営スタッフを受け入れました。皆既日食の時間にはあいにくの豪雨に見舞われ、「黒い太陽」は拝めずじまいでしたが、真夜中のような状態が6分ほど続きました。
 都心では雲間に部分日食が見えたようです。

inserted by FC2 system