21世紀の最初の10年が終わりました。
世界も日本も混沌としていますが、10年前の2001年1月号で21世紀を勝手に予測してみました。私の無責任な予測です。
2000年9月に新潮社からForesight編集部編の「次の10年に何が起こるか」という本が出版されました。専門家が10年間の移り変わりを予測していました。
その両方について、10年後の今と比較し検証してみたいと思います。
私の独断と偏見の勝手な検証になりますが、お許しください。
手賀沼通信第34号(2001年1月号)での予測の検証
1.第34号のまえがきと予測した出来事の内容
まず、10年前の手賀沼通信第34号のまえがきと予測した内容をご紹介します。
(まえがき)
いよいよ21世紀ですね。これからの100年、どんなことが起りどんな世の中になるのでしょうか。
昨年のお正月はミレニアムの替わり目を祝うイベントと2000年問題で大騒ぎでした。新しい世紀を迎えた今年は世界経済の不安と日本政局の混迷にゆれています。株も大幅に下がりました。20世紀最後の年はあまりいい年ではなかったようです。
手賀沼通信第34号では「21世紀」をテーマに、21世紀に起こりうる事件や現象を予測してみたいと思います。一市民の私の全くの作り話ですので根拠があるわけではありません。笑ってお読み捨ていただきたいと思います。ただ、書いているうちに全くの荒唐無稽な話でもないなと思うようになってきました。お正月です。良い夢にせよ悪い夢にせよ初夢をみてみましょう。以下の10の出来事は1つ1つは独立したお話です。矛盾する内容があっても気にしないで下さい。下手な鉄砲も1つくらいは当たるかなと思って書いています。
まずはショッキングな出来事からはじめましょう。
(21世紀に起こりうる衝撃的な出来事)
1.ついに日本の財政が破綻。国民は戦後の耐乏生活に逆戻り
2.アジア版EUともいえるAUが誕生したが、日本はかやの外
3.ついに関東大震災が発生。死者の数は約10万人
4.日本の人口が8000万人を切り、国土の荒廃が進みゴーストタウンが続出
5.地球温暖化が進み、国土を大幅に失う国が出る
(21世紀に起こりうる素晴らしい出来事)
1.日本人の女性の平均寿命が100歳を超える
2.進化するロボット
3.石油に代わる新しいエネルギー源の出現
4.IT革命が成功後、BT(バイオテクノロジー)革命が脚光を浴びる
5.第2の明治維新により日本再生が実現
2.21世紀最初の10年間での検証
21世紀末まで残る人はいないので誰も結果を目で見ることはできません。それを最初の10年だけで検証するのはいかにも時間が足りず乱暴な話です。しかし10年間の推移だけでも、何となくその兆しが感じられるような気がいたします。
まず衝撃的な出来事からみてみましょう。
1番目の日本の財政問題ですが、日本の国債および政府借入金の残高の合計とGDPは次のようになっています。
| 国債&政府借入金 | GDP(前年度) |
2000年3月 | 493兆円 | 498兆円 |
2010年3月 | 883兆円 | 525兆円 |
ここ10年間でGDPの伸びは、1.05倍ですが、国の借金の残高の伸びは、1.79倍になっています。EU内でのギリシャやアイルランドのようにならないことを祈るばかりです。
2番目のアジア経済圏については、今話題となっているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に加盟するかどうかという問題が出てきています。
さらに、中国が資源確保のため、発展途上国に急速に接近したり、レアアースの輸出を制限したりしている現実が、日本の前途に不安を与えています。
3番目の地震は幸いなことにこの10年間は無事で過ごせました。残り90年間の平穏を祈っています。
4番目の人口減少は出生率の改善が見られず、益々深刻になっています。子供手当ても赤ちゃんの増加には役に立っていません。公共交通機関の廃止や買物弱者の増加など、国土荒廃の兆しが見え隠れしています。
5番目の地球温暖化は着実に進行しています。今年の夏の暑さは異常でした。温室効果ガス排出の抑制も、COP16の結果が示すように、京都議定書の単純延長こそ防いだものの、肝心の温室効果ガス排出大国ナンバーワンの中国とナンバーツーのアメリカが排出抑制の姿勢を見せませんでした。
地球の崩壊を止めなければ未来はありません。
素晴らしい出来事に写りましょう。
1番目の平均寿命の延びは次の通りです。
| 女性 | 男性 |
1999年 | 83.99 | 77.10 |
2009年 | 86.44 | 79.59 |
この10年で女性は2.45年、男性は2.49年延びました。がんの特効薬が発見されれば、平均寿命は100歳を超える可能性は大です。
ただ、要介護状態や寝たきりの年数が増えるなら、平均寿命の延びが幸せかどうかは分かりません。
2番目は進化するロボットです。ロボットは着実に進化しています。例えば、2010年パナソニックのロボット「エボルタ」が東海道五十三次を走破しました。また、介護ロボットなども登場しています。
3番目の石油に代わるエネルギー源は電気がクローズアップされてきました。「新しいエネルギー」とは言えませんが、「新しい利用法」が生まれています。
石油をもっとも利用しているクルマで、ハイブリッドカーや電気自動車の普及が顕著です。水素を燃料に使うバスもまもなく実用化されます。
4番目のIT革命とBT革命も着実に進行しています。私達に身近な、パソコン、ケイタイ、デジカメ、デジタルテレビなどを見ても、この10年の進歩はすばらしいですね。BT革命はこれからが楽しみです。
5番目の第2の明治維新は今のところその気配は全くありません。10年前に比べると、むしろ日本の政治はだんだん悪くなって、世界における日本の地位は下がっています。
明治維新が黒船の来航をきっかけとしたように、何か大きな外圧かショッキングな出来事が必要なのかもしれません。
第2の明治維新を起こすには、それなりの人材が必要です。若者の中から、日本の未来を背負って立つ第2の志士が出てきてほしいものです。
Foresight編集部の「次の10年に何が起こるか」の検証
1.予測と検証の一覧表
新潮社の「次の10年に何が起こるか」は、手賀沼通信第34号の記事をまとめるに当たって購入した本です。
「次の10年を読み解く80の質問」はForesight編集部の専門家が予測しました。それについて10年後のいま、診断を試みました。私は専門家でもなく、専門の知識もありません。勝手にYES、NOを出してみました。「△」は「どちらともいえない」、「−」は「私には診断する知識がない」を意味しています。
的中の欄の「○」は専門家の予想が当たったもの、「×」は予想が外れたもの、「△」は「どちらともいえない」もの、「−」は私には診断する知識がないため、的中かどうか分からないものです。
次の10年を読み解く80の質問 |
番号 | 質問 | 予測 | 検証 |
予測 | 確率 (%) | 結果 | 的中 | 解説 |
1 | 「孤立主義」が台頭し「世界の警察官」の役割を放棄するか | Y/N | 50 | NO | △ | |
2 | 米国に対抗できるスーパーパワーは出現するか | NO | 80 | YES | × | 注1 |
3 | 「ならず者国家」が対米テロを起こす危険性は | NO | 95 | NO | ○ | |
4 | アメリカ経済の一人勝ちは持続するか | NO | 80 | NO | ○ | |
5 | 日米の株式市場の時価総額が逆転する日は来るか | NO | 100 | NO | ○ | |
6 | アメリカを代表する企業は日本企業に買収されるか | YES | 90 | NO | × | |
7 | 外資に買収された企業が買い戻される可能性は | YES | 70 | NO | × | |
8 | 日本の失業率は再びアメリカより低くなるか | YES | 90 | YES | ○ | 注2 |
9 | 中国は台湾に武力侵攻するか | NO | 99 | NO | ○ | |
10 | 中国はGDPで日本を超えるか | NO | 80 | YES | × | 注3 |
11 | 上海は東京を凌ぐ経済・文化の国際都市に発展するか | NO | 80 | △ | × | |
12 | アジアで「中国元経済圏」が確立されるか | NO | 80 | NO | ○ | |
13 | 家庭内の電化製品がすべてネット化する日は到来するか | NO | 80 | NO | ○ | |
14 | ネット広告は市場規模でテレビ・新聞広告を凌駕するか | NO | 60 | △ | × | 注4 |
15 | 国家機能を停止させるようなサイバーテロは起こるか | NO | 80 | △ | × | 注5 |
16 | 「万能携帯電話」は売り出されるか | YES | 80 | YES | ○ | |
17 | 自民党が再分裂し2大政党制が確立するか | YES | 70 | YES | ○ | |
18 | 日本国憲法は改正されるか | YES | 70 | NO | × | |
19 | 財政の悪化による日本の破産はあるか | NO | 95 | NO | ○ | |
20 | 田中真紀子氏は日本初の女性首相になれるか | NO | 67 | NO | ○ | |
21 | ヒラり−・クリントンは初の女性大統領になれるか | NO | 80 | NO | ○ | |
22 | アメリカで銃の所持が禁止されるか | NO | 100 | NO | ○ | |
23 | 南北米大陸で市場は完全統一されるか | YES | 85 | NO | × | |
24 | 大統領選挙は電子投票で行われるようになるか | YES | 90 | YES | ○ | |
25 | チベット、新疆ウィグルは独立できるか | NO | 95 | NO | ○ | |
26 | 中国共産党による一党独裁体制は終焉するか | NO | 100 | NO | ○ | |
27 | 再び「天安門事件」は起こるか | NO | 70 | YES | × | 注6 |
28 | 貧富の格差の拡大により中国が連邦国家になる可能性は | NO | 70 | NO | ○ | |
29 | 朝鮮半島の南北統一は実現するか | Y/N | 50 | NO | △ | |
30 | 南沙諸島の領有をめぐり軍事衝突は起こるか | NO | 80 | NO | ○ | |
31 | インドは中国に拮抗しうる大国となるか | YES | 55 | NO | × | |
32 | インドとパキスタンの間で「核戦争」は勃発するか | YES | 65 | NO | × | |
33 | ソ連時代のように独裁国家に逆戻りするか | NO | 70 | △ | × | 注7 |
34 | 「資源の宝庫」シベリアの開発は成功するか | NO | 95 | NO | ○ | |
35 | ロシアの核兵器は国外に流出するか | YES | 60 | ― | ― | |
36 | 「アメリカ抜きのNATO」は欧州に生まれるか | NO | 85 | NO | ○ | |
37 | イギリスの王室制度は廃止されるか | NO | 99 | NO | ○ | |
38 | 西ヨーロッパで国家分裂は現実となりうるか | Y/N | 50 | NO | △ | |
39 | ヨーロッパは政治統合により「単一国家」にまで進むか | Y/N | 50 | NO | △ | |
40 | 北欧経済圏は世界経済の中心となるか | YES | 80 | NO | × | |
41 | オーストリアに続き極右政党が政権を担う可能性は | YES | 70 | NO | × | |
42 | イスラエルとアラブ諸国の最終和解は実現するか | YES | 80 | NO | × | |
43 | アラブ産油国が再び巨大な影響力を保てるか | NO | 95 | NO | ○ | |
44 | ナスダックジャパンは時価総額で東証を抜くか | NO | 99 | NO | ○ | |
45 | 孫正義氏の資産は国家予算規模まで増えるか | NO | 99 | NO | ○ | |
46 | 東京大学が私立になる日は来るのか | NO | 100 | NO | ○ | |
47 | NTTドコモのような「大化け株」は出るか | YES | 90 | NO | × | |
48 | 大蔵省(財務省)から国税庁は完全分離されるか | NO | 70 | NO | ○ | |
49 | 消費税は10%に引き上げられるか | YES | 70 | NO | × | |
50 | 日本企業で退職金は廃止されるか | YES | 75 | NO | × | |
51 | 共産党が政権与党に参加する可能性 | NO | 90 | NO | ○ | |
52 | 英語は日本の「第二の公用語」になるか | NO | 70 | NO | ○ | |
53 | 日本の少子化現象に歯止めはかかるか | NO | 80 | NO | ○ | |
54 | 女帝が認められるように「皇室典範」は改正されるか | YES | 70 | NO | × | |
55 | 東京23区の新築マンションは2000万円まで値下がりするか | Y/N | 50 | △ | △ | |
56 | 郵便貯金の民営化は実現するのか | YES | 80 | YES | ○ | |
57 | 首都圏に甚大な被害をもたらす巨大地震は起こるか | NO | 60 | NO | ○ | |
58 | 「分数もできない大学生」は当たり前になるか | YES | 98 | △ | △ | |
59 | 日本の新聞社やテレビ局は「外資」に買収されるか | YES | 70 | NO | × | |
60 | 電通・博報堂に伍する外資系広告代理店は出るか | YES | 65 | ― | ― | |
61 | エコカーは販売台数でガソリン車を越えるか | NO | 99 | NO | ○ | |
62 | 地球温暖化で水没する国は出るか | NO | 99 | NO | ○ | |
63 | 新たな「代替エネルギー」は開発されるか | NO | 95 | NO | ○ | |
64 | 東京湾の4分の1がゴミで埋まる事態はあるか | NO | 75 | NO | ○ | |
65 | ヒトゲノムを利用して人類はガンを克服できるか | Y/N | 50 | ― | ― | |
66 | バイオ臓器による移植治療は一般化するか | YES | 90 | NO | × | |
67 | 「クローン人間」は誕生するか | YES | 55 | NO | × | |
68 | 「第二のエイズ」というべき難病は発生するか | NO | 80 | NO | ○ | |
69 | アルツハイマー病の「特効薬」は登場するか | YES | 80 | ― | ― | |
70 | ゲノム解析の進展で「遺伝子差別」は起こるか | YES | 90 | ― | ― | |
71 | 「介護用ロボット」は発売されるか | NO | 80 | YES | × | |
72 | リナックスはウィンドウズを利用者数で超えるか | YES | 60 | NO | × | |
73 | 彗星や小惑星の地球への衝突は起こるか | NO | 99 | NO | ○ | |
74 | コンピュータは将棋で羽生五冠を破るか | NO | 70 | NO | ○ | |
75 | 同時通訳・翻訳マシンは完成するか | YES | 80 | ― | ― | |
76 | 「虫サイズ」ハイテク兵器は実戦で使用されるか | NO | 60 | ― | ― | |
77 | スター選手の年俸(年収)は1億ドルを超えるか | YES | 70 | YES | ○ | 注8 |
78 | 日本はサッカー強国になれるか | Y/N | 50 | YES | △ | |
79 | 日本のプロ野球は米大リーグに吸収されるか | NO | 70 | NO | ○ | |
80 | 宇多田ヒカルは全米ヒットチャート1位をとれるか | YES | 85 | ― | ― | |
2.解説
スペースがないので一部だけの解説になりました。申し訳ありません。
(注1)中国が米国に対抗するスーパーパワー。
(注2)失業率は以下の数字です。
| 日本 | アメリカ |
2000年6月 | 4.7% | 4.0% |
2010年10月 | 5.1 | 9.8 |
(注3)2011年1月中国国家統計局は2010年のGDPが515兆円と発表。2月に発表される日本のGDPを超えることは確実です。
(注4)電通総研の「情報メディア白書2010」によると、テレビは16000億円、ネットは7000億円、新聞は6500億円で、2009年にネット広告が新聞を抜いて2位となりました。
(注5)ウィキリークスの例があります。
(注6)チベット族や新疆ウィグル族の弾圧は第2の天安門事件といえるでしょう。
(注7)プーチンは憲法により連続3選が禁止されているため大統領にはなれませんでしたが、首相に就任して引き続き権力を握っているようです。
(注8)ウィキペディアによるとタイガーウッズの2007年の年収が1億ドルとなっていました。
的中(○)は半分の40、外れ(×)は25、どちらともいえない(△)は7、検証できない(―)は8でした。検証は私の独断によるものです。読者の方は別のご意見があることと思います。