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今月は中国旅行体験記をお届けいたします。写真を多く入れたので、６ページになってしまいました。
ツアーの日程は６泊７日。新装なった羽田空港から出発。北京で国内線に乗り換えて蘭州まで飛びました。 蘭州に２泊し、１日は蘭州大学の外国語学院日本語学科の学生との交歓会、１日は炳霊寺観光と西寧へのバス移動でした。 西寧に１泊、翌日は青海湖と日月亭観光のあと、蘭州に戻り飛行機で敦煌へ移動しました。 敦煌には３泊しました。１日目の午前は鳴沙山、月牙泉観光、午後はお目当ての莫高窟見学などでした。２日目は遠出して、漢の長城や玉門関や陽関などを観光しました。最後の日は午前中買い物の後、国内線で北京まで移動、北京で乗り換えて日本に帰国しました。 日記風の詳しい記録や写真は９月の手賀沼通信ブログに載せてあります。 ２.蘭州大学生との交歓会 この旅行の目的の１つは、蘭州大学を訪問し蘭州大学の学生と交歓会を持つことでした。おぜん立てをしたのは元同僚の日本語の先生です。心憎いばかりの好企画でした。 今回学生たちとコミュニケーションをとるチャンスは４回用意されていました。 １回目のチャンスは蘭州に着いた夜の夕食会でした。 蘭州大学は本部は蘭州市市街の中心にあり、大学院生と４年生がここで学んでいます。１年生から３年生までは、４７キロ離れた楡中キャンパスで寮生活をしながら学んでいます。ホテルで行われた夜の夕食会には４年生が数人参加しました。４年生なので皆さん日本語が上手でした。私の隣に座った男子学生は、日本の大河ドラマ「江」を見ていると言っていました。 ２回目のチャンスは翌日の午前中の観光、牛肉ラーメン店での昼食、楡中キャンパスへの移動の間、３年生１２人が、私たち１２人をマンツーマンでガイドしてくれたことです。
３回目のチャンスは楡中キャンパスでの特別授業でした。２年生と３年生の約６０名が出席しました。中国では新学期は日本と違って９月から始まります。１年生は入学したばかりで、全員屋外で体力と精神力を鍛えるトレーニングを受けていました。 特別授業は午後２時から４時まで、日本語だけの内容の濃い２時間となりました。 １２人のメンバーがまず自己紹介をした後、パソコンとプロジェクターを使って蘭州大学と楡中キャンパスの紹介がありました。続いて４人の女子学生がＳＭＡＰの歌を、２人の女子学生が松田聖子の歌を日本語で唄って歓迎してくれました。 私たちの中からは３人が代表して、１人約３０分それぞれの体験談を話しました。 あとで先生から生徒のアンケートの結果を送ってくれました。２年生にとってはちょっと難しいところもあったようですが、全員面白い授業だったとの感想でした。 ４回目のチャンスは大学内のレストランでの懇親会でした。バスで一緒になった１２人とは別の学生が１０数人選ばれ、３つの食卓を囲んで夕食をともにしました。楡中キャンパスで日本語を教えているもう一人の日本人の先生も参加、午後５時半から８時ころまで、時間のたつのを忘れて会話を楽しみました。 日本語学科を選んだ学生は日本企業へ就職すること、日本語の観光ガイドになること、大学院に進んで日本語教師になることなど様々な目的を持っているようです。 学習態度は真剣、目の輝きが素敵です。それぞれの夢が実現するよう願いながらキャンパスを後にしました。 ３.仏教芸術の素晴らしさ 紀元前５世紀にインドのガンジス川中流域で釈迦によっておこされた仏教はシルクロードを通って中国に伝えられました。シルクロードは鳩摩羅什（５世紀）、法顕（５世紀）、玄奘（７世紀）などが通った道でもあります。仏教はその途中の要所要所に仏像や壁画などの素晴らしい芸術を残しました。 今回は炳霊寺と敦煌莫高窟で仏教芸術の片りんに触れることができました。
劉家峡ダムから１４人乗りの快速艇に乗り約１時間で到着しました。船でしか行けないため、ほかの観光地と違って人影は少なく、落ち着いて見物することができました。一つだけ気になったのは、中国の観光グループを引率する観光ガイドのマイクの音がうるさかったことです。私たちのガイドは中国語以外はマイクが許されていないと悔しそうに話していました。 炳霊寺は黄河北岸の切り立った崖に、長さ約２キロにわたって１８３か所の石窟が掘られています。ところが一番大きな高さ２７メートルの大仏は修理中で、青いシートがかけられていました。 石窟や仏像は撮影禁止でしたが、景色をとるのは自由です。景色を写すふりをして何枚か撮らせてもらいました。 敦煌莫高窟は今回の観光の最大の目的でした。タイミングよくＮＨＫテレビのプレミアム放送で、１９８０年に放送したシルクロードを「もう一つのシルクロード」というタイトルに変え、デジタル画面にグレードアップして放送していました。そこに展開される石窟の仏像や壁画は息をのむ美しさです。 確認されている７３４窟のうち、一般に開放されている石窟は約４０か所です。見学は莫高窟専属の日本語ガイドの案内で１０か所を見て回りました。世界中からやってくる観光客が集中しないよう、ガイドごとに見学する石窟を決めるようです。石窟の中は照明はありません。照明は仏像や壁画の色を退色させます。ガイドは強力な懐中電灯で仏像や壁画を照らしながら説明しました。 カメラは莫高窟には持ち込み禁止です。入場前にバスガイドに預けました。 回った１０窟のうち、印象深かった２つの窟をあげます。 現地では残念ながらその美しさは見ることはできませんでしたが、莫高窟に来た、仏像や壁画の現物を見た、という充実感は味わうことができました。
１７窟－１９００年に１７窟から大量の敦煌文書が発見されました。それまでは１６窟に通じる壁でした。この壁の奥に１７窟があるのが発見されたのは偶然からでした。そのあと数々のドラマが生まれました。 莫高窟は想像していた通りのスケールの大きさでしたが、その鑑賞の仕方はイメージとだいぶ違っていました。 世界でも有数の観光地になった以上仕方がないのかもしれません。テレビで見る３１年前の莫高窟には周りの鉄柵はありません。入場料は取っていなかったのでしょう。人影もまばらでした。このときの取材班はおそらく蘭州から敦煌までの河西回廊を何日もかけて車で行ったのでしょう。 いまは蘭州から敦煌までは飛行機で１時間４０分でした。帰りは敦煌を１３時１０分に発って、北京で乗り換え、羽田に着いたのは２１時５０分でした。もう西域は辺境の地ではありません。こんなに近くなれば観光地化するのは当然の成り行きでしょうか。 ４.悠久の歴史を感じる旅 今回の旅は中国の悠久の歴史を感じる旅でもありました。そして長くて複雑な中国の歴史の一部を少しだけ学ぶことができました。 中国西域の旅の最終日は敦煌から遠出して、史跡を訪ねました。 まず最初に行ったのは敦煌から西約１１０キロのところにある漢代（紀元前２世紀ころ）に築かれた長城でした。漢の武帝、霍去病、張騫などの名前が浮かびます。漢の長城は北京郊外の八達嶺の万里の長城のように立派なものではなく、葦と土を突き固めたものです。くずれかけた壁と狼煙台が残っていました。 その近くの疎勒河のほとりには漢代に作られ、武器庫とも食料庫ともいわれた河倉城の遺跡がありました。
これらの遺跡群の周りには何もありません。ゴビ砂漠が広がっているばかりです。漢の都長安から玉門関までは約１９００キロあります。将軍や兵士たちはどんな気持ちでここまで来たのでしょうか。 敦煌市の西には沙州古城の遺跡がありました。ここは漢代の敦煌があったところでした。 敦煌近くの鳴沙山にある月牙泉は漢代から遊覧地として知られていました。 敦煌市内にある白馬搭は、４世紀の末鳩摩羅什の経典を運んでいた白馬を祭った塔でした。 敦煌莫高窟は３６６年に僧楽?によって造営が始められました。そして北涼、北魏、隋、唐、五代、元と開削
炳霊寺は西秦（４世紀）から清の時代にかけて刻まれた仏像や彫刻がありました。 甘粛省博物館で見た汗血馬の銅像「馬踏飛燕」は武威市の漢代のお墓から出たものでした。 青海湖の近くの日月山に日月亭がありました。唐の時代、皇女文成公主が吐藩（チベット）王に嫁いでいく時、標高３５００メートルの峠から、振り返って唐に別れを告げた場所です。日月亭の下には文成公主の銅像が立っていました。 西域の旅で知った中国の歴史は、辺境との戦いと仏教に関係することが多いことでした。 ５.中国という国 この旅で感じた中国の印象です。無責任な旅行者が限られた時間と場所で感じたことです。懐の深い中国をちょっとかすっただけかもしれません。 （１）大きさ、多様さ 中国は広い国です。何をいまさらといわれるかもしれませんが、それを実感した旅でした。
北京から蘭州に富んだときは雲の晴れ間から見える風景は、緑のない土地が広がっていました。 敦煌は北京から１時間４０分ほど時差があるそうです。北京と同じ時間なので朝７時になっても暗く、夜８時になっても明るさが残っていました。 中国は多様さも感じました。羽田から飛び立った中国国際航空便は日本列島を横切りました。日本はところどころ市街地や耕作地が見えましたが、国土のほとんどは緑で覆われた山岳地帯でした。
中国には５５の少数民族が住んでいます。西寧では、白い帽子をかぶった男性やスカーフで髪を隠している女性を多く見かけました。イスラム教徒で、顔つきからして漢族とは違うようでした。少数民族のためのお店もありました。イスラム教徒が安心して食事ができる豚肉を出さないお店もあるようです。 青海湖では子供に民族衣装を着せて歌を歌わせ、観光客にお金を要求する少数民族の親がいました。 （２）サービスの悪さ、親しみやすさ 中国のお店で笑顔に出会うことは稀です。レストランではウェイトレスが食べ物のお皿をテーブルに乱暴に置きます。航空機内のスチュワデスも笑顔はなく淡々とサービスします。空港内や機内ではお知らせや説明はあまりありません。敦煌で航空機の出発が遅れた時も、説明はありませんでした。 蘭州大学の学生は大変人懐っこいみなさんでした。笑顔もあり、いろいろ気を配っていました。北京からの航空機で隣り合わせた中国人の男性は、出発を待っている機内で大声で携帯電話を使っていましたが、突然にこやかに話しかけてきました。中国語がわからないと言ってもなかなかやめず、こちらの都合も聞かないでスチュワデスに毛布を頼んだり飲み物を頼んだりしてくれました。 ビジネスの場ではそっけなく、個人的には気がいいのでしょうか。どちらが中国人の本質か分かりません。 （3）懸命さ、いい加減さ 中国は高度成長期の日本のように経済成長と国威発揚に懸命になっています。高速鉄道の追突事故が起きた時には、安全の犠牲にして開発を急いでいると言われました。これと決めたことには集中力を発揮できるようです。 ３つの都市を訪れましたが、どの都市も建設中のビルや住宅が目につきました。敦煌の飛天ショーは豪華でスピーディでした。西寧市は街路をきれいに清潔に保つため努力しているとのことでした。どの信号機にも、あと何秒で信号が変わるかの表示がありました。日本では見られない装置です。 ところがいい加減さも目につきました。ホテルの部屋の設備はどこかに不備がありました。西寧のホテルは朝食時間になっても料理が出ていませんでした。 高速道路の入り口が突然閉鎖になり入れませんでした。要人が利用するためでした。敦煌の空港は突然出発時間が変わり、何の説明もありませんでした。航空会社の都合で結局１時間３５分も遅れました。 （4）若者のたくましさ 日本語を学ぶ蘭州大学の学生には日本の学生に欠けているひたむきさが感じられました。まだまだハングリー精神が残っているのかもしれません。 中国は一人っ子政策の国です。漢族の普通の家庭では子供は１人、小皇帝と言われて甘やかされているようです。中国の大学は９月から新学期が始まります。私たちが蘭州大学に行った時は、ちょうど新入生が入学時のトレーニングを受けている最中でした。迷彩服を着て、屋外で教官の号令に合わせて集団行動を取っていました。まるで日本の戦時中の軍事教練のようでした。小皇帝はここで団体生活の洗礼を受けるようです。かなり厳しい教育で、終わったら一皮むけるとのことでした。 ６.中国旅行者へのアドバイス ここで初めて中国旅行をする人へのアドバイスを、私の体験をもとに思いつくままにご紹介しましょう。 ・両替 両替のレートは中国のホテルが一番いいようです。柏のワールドカレンシーショップでは１元が１３.７８円でした。１万円では約７２５元です。しかも１００元札しかありません。 北京の空港のガイドのレートは１万円が７８０元でした。敦煌のホテルでは１万円が８００元を超えた日もありました。 ・トイレ ホテルや空港のトイレは問題ありませんが、観光地のトイレは要注意です。劉家峡ダムのトイレは、大の方は個室ではなく、目隠しもなく、ものを置くスペースもトイレットペーパーもありませんでした。観光地の個室のトイレも、トイレットペーパーがなくなっているところが多いようです。 ホテルもトイレットペーパーの予備は置いてありません。少なくなったときも取り換えてくれません。少なくなったらはずしておいた方がいいでしょう。 ・お酒 西域ではアルコール４０度くらいの白酒（パイチュウ）が主で、紹興酒にはお目にかかれませんでした。白酒はストレートで飲むのが習慣のようです。結構いける味でした。 ビールは冷やしたビールと言わないと、生ぬるいビールが出てきます。劉家峡のレストランでは冷やしたビールと一緒に凍ったビールが出てきました。 ・ホテル ４つ星のホテルでもホテルの設備は完全ではありません。部屋に入ったらまず設備の点検をした方がいいでしょう。電気はつくか、トイレの水は出るか、シャワーと風呂の切り替えはＯＫか、風呂の栓はＯＫか、テレビはつくか、トイレットペーパ－は十分か、などなどです。不備があればすぐフロントに連絡しましょう。 チップは原則不要です。スーツケースを部屋まで運んでくれたときだけ１０元程度渡しました。 ・道路の横断 中国は車は右側通行です。横断歩道にはあと何秒で信号が変わるという表示のついた信号機がついています。ところが右折車（日本の左折車に当たる）が要注意なのです。 日本なら人が横断歩道を渡り終えるまで車は待ってくれますが、中国では右折車がお構いなしに突っ込んできます。ただ、人をうまくよけながら走り抜けるので、歩いている人は走ったりせず、そのまま歩き続けるのがコツのようです。ちょっと勇気がいります。 ・買い物 デパートやスーパーは利用する機会がなかったので分かりませんが、お土産を売っているお店では値切るのが普通のようです。どこまで値切れるかそれは買う人の腕次第です。敦煌の夜店で半分に値切って買いましたが、まだ甘かったのかもしれません。時間があればいくつかのお店をまわって買い物を楽しむのがいいと思います。 | ||||||||||||||||||||
