今月のテーマは61号に引き続いて「健康」です。
 私たちの年齢になると健康問題に一番関心があるようです。今年は世界をSARSが震撼させました。幸い日本では発生していませんが、いつどうなるか予測は出来ません。台湾の医師が旅行した時の厚生労働省の対策がいい加減だったのが不安の種です。
 それはさておき友人の大野さんからご自分の健康についての体験談を投稿いただきましたのでご紹介いたします。加齢とともにやってくるからだのいろいろな不具合について「数病息災」という表現でさらりと述べておられます。
 次に皆様の貴重な体験を投稿いただきそれをご紹介するコーナーを設けたいと考えております。詳しくは3ページでお願いしておりますが、第1回目は健康問題についての体験談を募集させていただきます。よろしくお願いいたします。
 最後にまた年金を取り上げました。この4月から取り入れられた制度です。

特別寄稿
数 病 息 災

大野耕一    

 年齢の話になると、「大野さんは、お若いですね」とよく言われます。別に、取り立てて言うほどのことをやっているわけではないので、多分身体が小さいのと童顔のせいでしょう。
 ところが、「外見はわかりませんが、身体の中はガタガタなんですよ」というと、これまた驚かれます。そうなんです。頭のてっぺんから足の先まで、いろいろな障害を持っているのですが、ここでは、そのうち高齢者の方々の参考になるようなものを、いくつか紹介します。
 発症順に、まず耳の病気です。10年近く前に、何もしないのに、耳に水が入ったような状態になりました。耳鼻科に行くと、滲出性中耳炎と言われました。耳の鼓膜の内側に水が貯まる病気で、乳幼児や高齢者に多く見られるそうです。
 風邪などが原因ですが、鼻から管を入れて耳に空気を送る方法で、大抵は治ります。しかし、ひどい時には鼓膜を切開して、水を排出したりします。私の場合は、もう何回も再発を繰り返しているので、左耳の鼓膜を切開して、そこに直径1ミリ位の穴の開いた長さ3ミリほどの小さなプラスチック製のチューブを挿入しています。つまり、鼓膜につねに穴が開いた状態で風通しを良くしているわけです。こうしておけば水は貯まらないし、聴力も低下するわけではなく、健常者と同じ状態になります。しかし、そのチューブも自然に取れてしまうので、年に1〜2回鼓膜を切開して、つけ替えています。耳の中にチューブが入っていることは外見からはわかりませんし、私自身も全然違和感がありません。
 つぎは、甲状腺です。ある時、食事をする度に、異常に汗をかくことに気がつきました。病院で検査をすると、甲状腺機能低下症とのことでした。甲状腺は身体の様々な機能を調節している器官です。その活動レベルが下がるので、異常発汗のほかに、私はまだ経験していませんが、だるさ、むくみ、皮膚の乾燥などの症状も出るそうです。
 治療法は、甲状腺ホルモン剤を飲み続けます。最初は少量を飲み、徐々に増やしていって、血液中のホルモン濃度が正常の範囲に入ったら、その量を続けます。私の場合は、『チラーヂン S・50』を、最初1日4分の1錠から始まり、半年位かかって1日1.5錠で安定したので、現在でもその量を飲んでいます。この病気は治ることはないので、薬は一生飲み続けなければなりません。
 三番目は、心臓です。朝起きてトイレに入った時に、胸がきゅっと絞めつけられるような痛さを感じたことが2回ほどあり、専門医に診てもらいました。通常の心電図のほかに、運動負荷心電図(トレッドミル)も取りました。これは、室内ランニングマシンで走りながら心拍数や血圧を計測する検査で、平静時では出にくい不整脈を見つけることができます。脈拍数が130を越えた時点で、異常が発見されているそうで、その他の検査も総合して、狭心症と診断されました。
 狭心症とは、もともと心筋の酸素需要に見合う血液が十分に供給されず、心筋が一過性の虚血状態に陥った状態をいいます。その危険信号として胸痛などが現れるのですが、安静にしていれば、数分以内に元に戻ります。しかし、動脈硬化で狭くなった冠動脈が血液の塊などで詰まり、血液がまったく流れなくなると、心筋の一部が壊死して、心筋梗塞になります。
 したがって、心筋梗塞の前兆である狭心症の段階で治療を受けることが、肝心のようです。通常、薬物療法のほか、大動脈冠動脈バイパス手術などが行なわれますが、私の場合は、現在、投薬で済んでおり、『ヘルベッサー R100』を朝夕1錠ずつ飲んでいます。万が一の時のためにニトログリセリンも常時携帯していますが、薬を飲み始めてから3年間、まだ一度もそのお世話になったことはありません。
 四番目は、高脂血症です。高脂血症とは、血液中の脂肪が異常に増加した状態をいいます。これが長く続くと動脈硬化が生じ、さらに放置すると、狭心症、心筋梗塞等になるようです。
 高脂血症の多くは無症状なので、その発見は検査に頼らざるをえません。私は、平成13年10月の成人病健診で、総コレステロール値が231(mg/dl)と出ました。日本動脈硬化学会のガイドラインでは、総コレステロール値の適正域は199以下、境界域は200〜219、高脂血症は220以上と定められています。私の値は、まさに高脂血症の領域に入っています。もっとも、日本人は240以下ならOKという学説もあるので、境界域なのかもしれません。
 高脂血症と診断されて、まず生活習慣を点検しました。私は肥ってもいないし、タバコも吸わないので、問題は食生活です。まず、コレステロールを増やす作用のある牛・豚肉、バター、チーズなどの動物性脂肪やコレステロールが多く含まれている卵黄、肉類のレバー、いくら等は控え、逆にコレステロールを下げる働きのある魚を多く摂るようにしました。また、食物繊維も十分に摂るようにしています。野菜やきのこ類、豆類などです。海藻もいいのですが、これは甲状腺に良くないので、避けなければなりません。こうしたことを念頭に置いた上で、さらに栄養のバランスを考えます。
 この食事療法と並行して、薬も服用しています。『リピトール(10mg)』を毎夕1錠ずつ飲んでいますが、薬の効果も、食事の注意を守ることで、はじめて期待できるようです。
 その結果、今年3月の成人病健診では、総コレステロール値が適正域の157に下がりました。お蔭で、薬も用量が半分の『リピトール(5mg)』に替わりました。これでまた、しばらくの間、様子を見るそうです。食事療法で細心の注意を払ってくれた家内に、大変感謝しています。
 五番目は、大腸ポリープです。私は、会社が退職者に対して毎年行なっている大腸癌の便潜血検査(郵送)を受けていますが、一昨年、これが初めて陽性になりました。それを1年くらい放置していたのですが、やはり気になって、海外旅行の直前でしたが、大腸内視鏡検査を受けました。
 その結果、S字結腸に1センチ位のポリープが見つかりました。その場で切除してもらい、生体検査もやり、癌ではないことがわかりましたが、これを放置すると、癌になる可能性があるようです。
 ポリープがいったん出来ると、そういう体質になってしまうのか、その後の経過観察が必要になります。私の場合も1年後に内視鏡による再検査を行ないましたが、その時は何もありませんでした。再発していなかったので間隔を空け、つぎは2年後に経過観察を行なうことにしています。
 ところで、便潜血陽性者に対して大腸内視鏡検査を行なうと、どの位の割合で病変が発見できるのでしょうか。仙台市医療センターが発表したデータによると、内視鏡検査の対象になった2000例のうち、約半数の987例(49.4%)に腫瘍が見つかっています。この数値を高いとみるか、低いとみるか。自分にポリープが見つかったせいか、私は高いと思いましたが、皆さんは如何でしょう。ちなみに、腫瘍が見つかった987例のうち、842例(85.3%)がポリープ(良性腫瘍)で、残りの145例(14.7%)が癌だったそうです。
 最後は、ごく最近のことですが、中高年の男性なら誰でもなると言われている前立腺肥大症に、私もなってしまいました。半年前から尿の出が悪くなったのです。公衆トイレの「朝顔の外にこぼすな竿の露」の張り紙が気になったわけでもありませんが、あそこに立つと、出るまでに10秒近くかかります。出ても、尿線の勢いは弱く、尿の切れも悪い。夜中にトイレに2〜3回起きるようになって、やっと泌尿器科へ行きました。
 医師は、肛門から直腸の中に指を入れ、前立腺の大きさや形、硬さなどを調べます。「ちょっと肥大しているなあ」と言われましたが、それでも症状は軽いらしく、その日は、そのあと採血しただけで、当面、薬の服用で様子を見ることになりました。『エビプロスタット』を1日3回、毎食後に2錠ずつ飲みます。
 薬を2週間服用して、驚きました。尿の出が正常に近づいているのです。夜中にトイレに行く回数も、ひと晩平均1回は少なくなっています。たった2週間でこんなに効き目があるのなら、半年も悩まずにもっと早く病院に行けばよかったと、後悔したくらいです。
 2週間後に病院に行って診察を受け、そのことを話したら、医師は、「もう少し薬を飲み続けてみよう」と言って、4週間分の薬をくれました。この分なら、手術をしなくて済むようです。その時、血液検査の結果も知らされました。PSA(前立腺特異抗原:癌になると血液中に増加する前立腺特有の物質)を調べることで、癌かどうかが簡単にわかるそうです。正常値は、4.0(mg/dl)以下ですが、私は1.9で癌の心配もないことがわかり、一安心しました。
 いろいろ書きましたが、はからずも身体の上部から下部へといったようです。これだけの持病があっても、日常生活には大した支障がありません。健康に気を遣い、手当ての遅くなった場合もありましたが、それでも検査を受け、手が打てているからでしょう。しかも、幸いなことに、酒を止められることもありませんでした。1日の仕事(と言っても、ボランティアや地域活動などですが)を終え、テレビで野球やら演歌を見ながら一杯できるのが、最高の幸せです。
 電気製品は、不良部品の交換が可能です。しかし、生身の人間はそうはいきません。還暦を過ぎたら、もうどこが悪くてもおかしくない状態ですから、悪くなったことに、早く気づくことが肝心です。数病息災、私もこれから、これらの病気と一生上手につき合っていこうと思っています。

お 願 い
「読者の広場」新設と体験談募集

 手賀沼通信は体験談を中心に紙面を作るように心掛けています。ところが毎月のことになると編集者の体験談のネタがだんだん尽きてきました。ネタそのものもワンパターンになって来ているのではないかと心配しています。
 幸い毎月多くの方から貴重な寄稿文をお寄せいただいています。それが手賀沼通信の目玉になっており、呼び物となっております。ありがたいことです。今後ともよろしくお願い申し上げます。
 読者の広場はこちらでお願いするテーマについて、体験談やアイデアやご意見や感想などをお寄せいただきそれを掲載させていただく場です。数行の短いもので結構です。メールやはがきで気軽にお寄せください。
 本文のあとに、(お名前と年齢)を入れさせていただきますが、匿名でも年齢を省略でも結構です。その場合はその旨ご記入ください。
 先ず1回目のテーマとしては次のようにさせていただきます。
 ★私の健康法
 ★私のストレス解消法
 このテーマは友人の大門美代松さんからいただいたものです。締め切りは7月20日とさせていただきます。多くの方の投稿をお待ちしております。
 なお今後もいろいろなテーマで読者の広場の活性化を図っていきたいと考えています。

女性のための年金講座
今年の4月から適用されたデフレ下の物価スライドと総報酬制

1.物価スライドと総報酬制とは
 物価スライド制は昭和49年に取り入れられましたが当初は物価が5パーセント以上変動したときにスライドするというものでした。平成元年の年金財政再計算でそれ以下の数字でもスライドする完全物価スライド制になりました。ところが平成11年4月に物価スライドが適用され、老齢基礎年金の満額が804,200円になって以来物価スライド制は適用されませんでした。理由はデフレで物価が下がったからです。
 完全物価スライド制では物価が下がったら、年金額も下がることになっています。ところが年金額を下げるのは高齢者の生活に与える影響が大きいという理由で、物価上昇率がマイナスになった平成12年4月以降物価スライド制の適用を見送ってきました。本当の理由は政府と自民党以下の与党が国民の支持を失うのが怖かったのかもしれません。おそらく民主党以下の野党も物価スライドの適用には反対したことでしょう。政治家の体質そのものです。ところが財政の赤字はますます増大しています。このままでは年金制度そのものが危うくなるということにやっと気がついたのでしょう。物価スライド制の適用が復活し今年の4月から年金額が引き下げられることになりました。
 昨年度の物価上昇率は−0.9%です。804,200円の老齢基礎年金の満額は797,000円になります。スライド率も昨年1年間の数字にするか、過去4年間の数字−2.6%にするか論争があったようですが、4年間の数字にすると年金の減額が大きくなるため1年分だけとなりました。障害基礎年金(2級)、遺族基礎年金も797,000円となります。なお国民年金の保険料の増額は依然として見送られ13,300円のままです。
 厚生年金では報酬比例部分と加給年金に物価スライドが適用されます。
 総報酬制とは給料と賞与とに同じ保険料率をかけた額を厚生年金保険料として徴収する方式です。

 平成15年3月まで平成15年4月以降
給料厚生年金173.5/1000厚生年金135.8/1000
健康保険85/1000健康保険82/1000
賞与厚生年金10/1000厚生年金135.8/1000
健康保険8/1000健康保険82/1000

 給料は30等級の標準報酬月額で上限62万円,賞与の上限は150万円です。保険料は厚生年金保険だけでなく健康保険も同時に総報酬制になります。料率は給料:賞与が1:0.3の割合で計算されています。ボーナスが年間3.6ヶ月出るとして率が計算されていることになります。大企業のボーナスはそれ以上出る場合が多いため、大企業の従業員にとっては料率アップになります。また健康保険の保険料は計算上はボーナス年間3.6ヶ月なら75/1000ですので、実質引き上げになっています。
 総報酬制導入により、給料を少なくしてボーナスを増やし保険料を意図的に少なくするというような手は使えなくなりました。また雇用形態が多様になり、年俸制や契約社員などボーナスのない社員が出てきています。総報酬制はこれまでのシステムより、より公平なシステムであり、いままで総報酬制にしなかったのは厚生労働省の怠慢と言ってもいいでしょう。

2.頑張れ!松戸社会保険事務所
 5月20日の千葉県生涯大学の講座のタイトルは「年金制度」、松戸社会保険事務所から年金専門官の肩書きを持つ講師が派遣され2時間の講義がありました。私は7月以降公民館その他で4回ほど年金の説明を依頼されているので、新しい情報が得られるし、話し方の参考にさせていただこうと、生涯大学の学習予定表をいただいたときからこの日を楽しみにしていました。
 ところがちょっと期待外れ、参考にするための情報はあまり得られませんでした。講義の資料に配られた「年金受給者ハンドブック」は平成13年度のものでした。なぜ古いのを配ったのかそれともこれが最新のものかわかりませんでしたが、もし古いものなら余ったものを配ったのでしょうか。制度の基本は変わらないかもしれませんが、年金は毎年少しづつ変更があります。例えば働きながら年金を受け取る「在職老齢年金制度」については、昨年から導入された65歳以上70歳未満の仕組みについての記載が当然のことながら抜けていました。またもしこのハンドブックが最新のものだったとしたらそれも問題です。高齢者の生活を支える最も重要な年金制度については、毎年改定して最新のものにしておくべきでしょう。市販の年金に関するハンドブックは毎年改定されています。
 講師のお話は話し方が単調で、内容も乏しく、2時間の講義は中間に20分の休憩をとり、終了予定の15分前に終わりました。正味1時間25分です。終わったあとの質問は私一人でした。ほかの講義は通常休憩は10分、質問が出ると時間をオーバーすることも少なくありません。たしかに、すでに年金をもらっている男性はあまり年金の話に関心を示しません。自分にはもう関係ないと思っているのです。でも女性は国民年金や遺族年金については知りたがります。今回のお話は女性の関心もあまり引かなかったようです。
 最後に、今年から適用されている物価スライドについて質問しました。平成14年度老齢基礎年金満額804,200円は減額されていくらになったかということと厚生年金の報酬比例部分の計算式に使われる物価スライド率がどうなったかと聞きましたが、明確な答えは返ってきませんでした。
 帰宅後、市役所に電話して老齢基礎年金額を聞いたらすぐ回答がもらえました。物価スライド率は松戸社会保険事務所に電話して聞きましたが、5分近く待たされたあげく、やはりあまり明確な答えはいただけませんでした。
 2004年にはまた年金改革の年を迎えます。年金受給者の急増で松戸社会保険事務所も人手不足かもしれませんが、頑張ってもう少し年金の最新情報に精通し、親切に指導して欲しいと感じました。

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