今月のテーマは「年金改革」と「読者の広場」です。
 選挙の争点となり政局の焦点になっている年金改革の方向について、各方面での論議と11月17日に発表された厚生労働省の年金改革案を解説してみましょう。
 読者の広場は「私の防犯対策」と「私の防災対策」について、いただいたご意見をご紹介いたします。

年金改革はどうなるか

1.改革についてのさまざまな意見
 先ず選挙での対決がありました。  今年の衆議院議員選挙はマニフェスト対決といわれました。その目玉が「年金改革」でした。2004年が年金改革の年であるため、年初からたびたび年金改革がマスコミに取り上げられていました。少子高齢化や不況や財政赤字などから年金制度に対する不信感が強まり、年金制度の危機が叫ばれています。これが選挙の絶好の争点になったのです。自民党のマニフェストは「年内に年金制度改革案をまとめる」となっていましたが、民主党が具体的な改革案を出してきたためあわてて小泉首相が具体的数字を挙げました。年金対決というには、結局はそれほどの違いは見えなくなってしまいましたが各党の公約を比較してみます。
自民党(小泉首相の発言)
 将来の厚生年金の給付水準は現役世代の平均手取り収入の50%程度。企業負担を除く個人保険料は年収の10%程度。消費税は向こう3年間は引き上げない。
公明党
 国民年金の保険料上限を月1万8000円台におさえ、厚生年金の給付水準は現役世代の50−55%を確保。消費税は4年間引き上げない。
民主党
 税財源の基礎年金と所得比例年金の2階建ての新年金制度を4年以内に構築。給付水準は現役世代の50−55%。保険料は企業負担も含めて収入の20%以下。基礎年金の財源は消費税を引き上げ目的税化する。

 なお現在の給付水準は現役世代の59%、保険料は年収の13.58%(労使折半)となっています。
 ところで基礎年金の財源を全額税金とし、それに消費税をあてるという年金目的税化については厚生労働省と財務省ともに反対しています。ただ反対の理由は全く違います。厚生労働省は自分たちが年金財政の権限を手放すことになると同時に社会保険庁の人員縮小も図らねばならないという理由で反対、財務省は消費税を自分たちで自由に割り当てる権限がなくなるという理由で反対です。一致しているのはともに国民のためではなく自分達の省益を守るために反対していることです。また、小泉さんもかたくなに「自分が総理でいる間は消費税引き上げにノー」と言っていましたが、財源問題で責められているせいか最近になって3年間は引き上げないという言葉に変わってきました。
 基礎年金(国民年金)は現在3分の1が国庫負担です。それを2分の1に引き上げることは国会で承認されていますが、引き上げの時期については決まっていません。理由は財源の見とおしがないからです。

 9月中旬、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)年金部会と財務省が来年の年金改革に向けた意見書や基本方針をまとめました。特に財務省は財政上の問題から給付水準の思い切った削減と、今まで聖域とされて来た現在年金をもらっている人の年金も減額することを提案しました。別表に日本経団連の意見書と坂口厚生労働相試案も合わせてまとめてみました。
 日本経団連は企業の年金負担が増えることを嫌って保険料の引き上げに慎重姿勢です。現に法人税の総額より厚生年金保険料の総額の方が多くなりました。
 私も4年ほど前から年金講座などでは、基礎年金は税方式に移行し全額税でまかなうべきと唱えています。そうすれば保険料未納の問題も解決します。保険料が高額所得者も低所得者も一律という逆進性もなくなります。大赤字を出したグリーンピアのような厚生労働省お役人の積立金の無駄遣いも少なく出来ます。高齢者も消費税を負担することにより、若い人の負担も減ります。

年金制度改革4案の比較
 給付額保険料積立金(147兆円)国庫負担引き上げの財源
社会保障審議会現役世代の保険料が過大にならないよう給付水準の見なおし 年収の20%以下一定額は必要。十分な検討を消費税上げ、年金課税や相続税や歳出の見なおし
財務省現役世代の一定割合の保障なし。受給中の年金も聖域とせず抑制 税金と合わせて負担出来る水準とする言及なし具体的な財源確保が引き上げの条件
日本経団連一定期間で最低2割程度抑制。高所得者の支給は停止厚生年金の保険料率は15%が限界 1年分を残し取り崩し消費税を活用。公的年金控除は廃止。将来は基礎年金の全額を消費税で
坂口厚労相試案現役の手取り年収の50%〜50%台半ば程度を確保年収の20%を超えない 1年分を残し95年かけて取り崩し言及なし

 今年も毎年の恒例になっている厚生労働白書を購入しました。腰の重いお役人の作文も、さすが年金改正の前年のため「制度を見なおす必要が生じている」と書いています。しかしそのトーンは大変控えめで、他人事のような書き方になっています。何が問題か、どうすれば良いかなどには触れられていません。年金制度を背負ってたっている当事者の論調ではありません。
 ところが経済財政白書が「社会保障抜本改革を」と、年金など社会保障制度の抜本改革が急務と訴えました。どの白書も従来はあまり他の省庁の守備範囲には切り込まないか、切りこんだとしても省庁間の見解が異なる場合は事前に擦り合わせをして無難な結論に導くことが多かったのですが、今回は大きな問題をはらんでいるため放っておけないと感じたのではないでしょうか。日経新聞によると「制度を担当する厚生労働省に果敢に議論を挑んだ執筆者の姿勢が行間から読み取れる」とありました。
 厚労省に論戦を挑んだ分野はいくつかありますが、真っ向から対立を打ち出したのが厚生年金の世代間の「損得勘定」です。厚労省の試算にくらべて経済財政白書の試算は70年以降に生まれた世代は保険料が年金額を上回る負担超になっています。試算の前提条件が違うので単純な比較はできませんが、年金改革の議論の材料を提供したことは大きな功績と日経新聞はとらえていました。

2.厚生労働省の年金改革案

 11月17日に発表された厚生労働省の年金改革案の骨子「給付と負担の見直し」は次のようになっています。

給付水準
・現役世代の手取り年収の59.4%→50%を確保(標準ケースで54.7%)
保険料率
・厚生年金 労使で年収の13.58%→2022年に20%(2004年10月から毎年0.354%引き上げ)
・国民年金 月額1万3300円→2011年度に1万7300円(2005年4月から毎年600円引き上げ)
基礎(国民年金)の国庫負担割合
・3分の1→2分の1に引き上げ
現在約150兆円ある積立金の取り崩し
・2100年に給付費の1年分(約25兆円)に

   なお上記以外に「多様な働き方に対応する制度改正」「積立金の運用組織」「国民年金保険料の徴収強化対策」などについても改正案が出されています。これらの詳細については、議論の成り行きを見ながら時間と紙面をかけて解説していきたいと思っています。
 厚生労働省の改革案が発表されるや、早速各方面からいろいろな意見が飛び出しました。1節で説明した「さまざまな意見」をさらに具体化した意見やマスコミの無責任な意見などいろいろです。
 私はそれは良いことと思います。厚生労働省案はまだ抜本的な解決になっていません。はじいた数字の根拠も自分たちに有利な数字を仮定しています。「モデル夫婦世帯」も夫は40年の会社員生活、妻は一生専業主婦となっています。これからの社会にこんな夫婦は少ないでしょう。国民レベルでこの際大いに議論して抜本的な改革に持っていく必要があります。既に年金をもらっている高齢者の皆さんも、年金を人ごとでなく自分の問題として考えていく必要があるのではないでしょうか。

読者の広場

「私の防犯対策」と「私の防災対策」とも、お送りくださったのはお一人だけでした。同じ方で75歳の柏市在住の男性です。防犯対策を匿名にした都合上、防災対策も匿名にさせていただきました。
 どちらもご自分の体験を克明に書いてくださっており、大変参考になります。特に防災対策の方は、タイミングが北海道十勝沖地震と重なったため、3回もお送りいただきました。

私の防犯対策   A氏(75歳)

 完璧と言う事はあり得ないが、私の会でも2回の柏市消防部の普通救命講習会、2回の柏市経済部の悪徳商法講習会に加え、2年前に柏署警部補の防犯講演会を開き、会員に注意を喚起しました。

 色々と伺った中で、賊に入られない様に戸締りを適正にする、塀、庭を見通し良くし、刃物を持って居るから犯人と距離を置く、隣近所の方達と親しく声を掛け合ってお互いに異常に注意を払う、自転車の前篭はカバーを付ける、等々を教わりました。マニュアルも配布しました。
 最近の泥棒は必ず下見をして、確実な先へ侵入する。それは、簡単に入り込める、確実に稼げる、捕まらない環境にある事。狙われ難い家は、補助錠や複雑な錠で侵入に10分以上掛かる、近所の人にジロジロ見られたり、声を掛けられる、犬が居たり警備会社のマークがある、センサーライトがある、塀が低く植栽塀である、通りの交通量が多い、窓に格子がある、回りに玉砂利が敷き詰めてある、等々と教わりました。
 全部が全部出来なくても、半分でも出来れば、泥棒は侵入を諦めるだろう。モノがなければ来ないから、余り物持ちに見えない様にする事も肝要だ。

 わが家の防犯対策を下記しましょう。
@玄関は一つで、ツーロック、ピッキング対策、棒チェーン、センサーホーン付き。各部屋のサッシ窓は補助錠付き。トイレ。風呂場、小窓は格子付き。
Aベランダには足がかりはない。手すりは格子風で見通しは良い。垣根は格子風で植栽、見通しは良い。
 わが家は表通りから一寸入った住宅地で、敷地は角地で、2面は6メートル、4.5メートルの通り、北側は小公園で植栽、西隣は隣家と接して居る。
 (欠点は門扉に錠はない、センサーライトはない、窓は強化ガラスでない)
B来客は玄関チャイムに応答し、断るモノはその時点で断る。宅配等、必要なモノは玄関脇の窓から確認する。認め印は玄関にあって、ドアの外で授受し、決して玄関内に入れない。
C侵入されたら、外に逃げて傍に寄らず、近所から110番する。就寝中に起こされたら逆らわずに言う通りにし、階下に下りてから逃げる事を考える。
 木刀はベッドでなく隣室のドア際に置き、そこから持ち出して侵入者を後ずさりさせて階段から突き落とすと目論んで居る。上手くいけば拍手喝采だが、不味ければ一巻の終わり。
D訪問販売には一切乗らない、要らないと断る。家屋修理修繕等は工務店とメンテナンスを相談して居るからと断る(実際にそうだが)
 クーリング・オフ5日間は承知して居るが、凡て分かって居る先としか取引しない。金の問題ではない。
 (昔、流しの塗装屋に雑な仕事をされた苦い経験がある)

 以上が現状であるが、後はセンサーライトを入れ、窓ガラスにフィルムを張るかどうか、と思って居る。昔は昼間留守勝ちだったが、飼い犬が居て、空き巣に入られた事はない。犬のお蔭と、角地で人の目があるからと思って居る。
根がのん気で楽観論者だから、入られたらしょうがないとのんびりして居る。

私の防災対策   A氏(75歳)

 横浜の一級建築士の友人は、関東学院大学の先生等と組んで防災研究会を主宰し活動を行って居り、研究誌を送って呉れるが、私は殆ど目も通さずに無防備の侭である。阪神大震災の時、持ち出しバッグも作ったが、以来食べ物は抜いて、懐炉と懐中電灯が入って居る侭である。この辺には活断層はないと、たかを括って何もして居ないのが実情である。
 最近近くに耐震構造の新築が2軒、建ったので、築後27年のわが家が残らないのも如何にも残念だし、第一、この家がなくなって再建築する気力、金力はもう私にはない。神戸市の小学校同級生が再建築して「偉いなぁ!」と感心したが、2年も住まずに亡くなって了った。
 1、2年位前だったか、耐震調査のビラが入り、出入りの工務店に耐震調査をして貰い、床下、天井裏と補強して貰った。約百万円掛かった。これで、全部は無理でも、半分位は残って、夫婦が死ぬ迄は住めるだろう一安心した。
 今度は箪笥など什器備品が倒れて怪我する事を恐れ、1階の食器棚、洋服箪笥は同工務店に壁に固定して貰った。2階は次男の使って居た北側の部屋は整理して納戸とし、寝室の箪笥類はそこへ移動した。寝室には小箪笥があるがベッドの角で大丈夫だろう。
 後は、残った什器備品類が動き出さぬように、「ふんばる君」と言うビニールの敷板(7ミリ傾斜のある)とテレビ等は両面テープで止めようと、ホームセンターで買って来ました。一段落したら取り付ける予定。
窓ガラスが割れると思うが、これはカーテンがある程度吸収して呉れるかと期待して居る。
 地震の最中は、ガスの元栓を止め窓を開けて、テーブルや机の下に潜り込み、落ち着いてからバッグを担いで脱出である。2階の寝室からの脱出は階段が使えない場合は、状況を見極めての話だが、2階の窓から屋根を伝わり物置の屋根へ。更に自動車のボンネットへ降りて脱出すると考えて居る。ベランダから布団を落としてその上に飛び降りるのは一寸リスキーだ。車の上に布団を落として置くのも宜しかろう。余震の激しい時は危険だ。2階には衣類、靴は置いてないので、至急、用意する必要がある。
 東海地震は早ければ2年以内と言われて居る。関東大震災から80年経った。50年周期説もあって、昭和46年、海外転勤になり、どうやら免れたと思ったが、幸か不幸か、以来、首都圏には大地震はない。
 地震よりも心配は北朝鮮のミサイルが東京を外れて、ここ等に落ちる可能性の方が高いかも知れないと思って居る昨今である。

 今日は「ふんばる君」と言うビニール製7ミリテーパー付き敷板を切って、本棚、食器棚、等4個に敷いて、倒れないようにした。(洋服箪笥と食器棚(大)は固定済)その上にあるテレビ2台や別途、PC、モニター、プリンター、電話機等は両面テープで固定した。食卓テーブルは潜り込む防具だが、これも向きを替えて食器棚に寄せ、万一に備えた。これで約1時間、汗をかいた。
 納戸にした2階の部屋に、箪笥が2棹あるが、これは取り敢えず人間に害はないので、後にした。洋服箪笥の上の書画、写真の額等は降ろして納戸に納めた。
後は脱出用に靴を含めて衣類一式と非常持ち出し袋の準備か。今夜から枕を高くして眠れるでしょう。

 今日、食器棚(大)(固定してある)に「ガラス用粘着シート」(46cmX185cm、930円)をガラスに貼った。少し足りない位だった。経師屋でないので上手くは貼れず皺が寄って、家内は不満だったが、「貼ったと言う証拠。ガラス小片が来なけりゃ上等」と言い返してやった。他に本棚(小)もあるが、再度買って来てやるか、考慮中だが、内容が食器ではないので、多分しないと思う。

 これで当分、対策は終了するが、いざと言う時に有効に働いて呉れるか見もの。転ばぬ先の杖ですよ。

読者の広場を閉じます

 読者の広場は2回ご意見や体験談を載せさせていただきましたが、応募の方が少ないため今日限りで閉じることといたします。原稿をいただけなかったのは私の力不足と思いあがりであったと深く反省しています。
 なお当初の計画では、1年に4回くらい次のようなテーマで体験談やご意見をお寄せいただく積もりでした。読者の広場は閉じますが、このようなテーマでエッセイなどいご投稿いただければと念じております。

 予定していたテーマ
・心に残る1冊の本
・忘れ得ぬ味覚(食べ物、レストラン、旅館)
・忘れ得ぬ名映画
・心に残る名曲
・心に残る一言
・私の薦める温泉
・思い出に残る旅
・お勧めのウォーキングスポット
・素敵なお花見スポット
・素敵なお月見スポット
・私の好きな人物
・私の趣味
・私の闘病記録
・生涯現役で続けたいこと
・第2の人生の過ごし方
・感動したこと
・恐ろしい体験
・孫のしつけ方
・知って損しない生活上の智慧

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