今月は手賀沼通信の原点の「手賀沼」について2つのいいニュースをまとめてみました。暇な時はほとんど毎日散歩している手賀沼や手賀沼遊歩道が少しでもきれいになり、気持ちよく歩けるよう祈っています。

野良猫との共存を図る

1.増えてきた野良猫
 私の住んでいる我孫子市若松地区は手賀沼を埋めたてた造成地です。住宅の外側には手賀沼にそって遊歩道が作られています。遊歩道には梅や桜や柳や松の木が植えられており、つつじや雪柳やむくげやハゲイトウなどの潅木もきれいに手入れされています。途中には小さな公園もあります。ところが数年前からそこに住み付く野良猫が増えてきました。自分の家で飼えなくなって捨てられた猫、野良猫同士で交配して生まれた子猫などが増えたのです。
 そして野良猫が増えたもう一つの原因はねこ好きの人が餌をやっているからです。若松の人だけでなく遠くからペットフードを持ってきてやっている人も見かけます。そのような人はバックパックを持っているのですぐ分かります。公園でペットフードを出すと猫は待っていたかのように集まってきます。猫も人も嬉しそうです。
 実は以前私の家でも野良猫に餌をやっていました。野良猫は一度味を覚えるとと台所近くに来て催促します。野良猫にはもと飼い猫で捨てられた野良猫と遊歩道などで生まれた根っからの野良猫の2種類があるのが分かったのもそのときです。飼い猫あがりのほうは油断していると勝手に家に上がり込み、家の中を我が物顔で歩き回ります。なでてやると気持よさそうにのどを鳴らします。一方根っからの野良猫は餌をもらっている身でありながら、近づくと唸り声をあげて攻撃の姿勢を見せます。絶対にからだに触らせません。それでも時間になるとやってきていました。ところが、私が4年前に自治会の役員になり野良猫問題が自治会で話題になったため餌をやるのをやめました。猫のほうはそんな事情は知るわけもなく、何ヶ月も台所の外にやってきては餌をねだっていました。餌やりをやめるのは動物好きの家内にとってはかなり心残りだったようです。
 私が若松に引っ越して来たのはちょうど20年前です。そのころは遊歩道に野良猫はそんなにいませんでした。退職した今はほとんど毎日遊歩道を散歩していますが、当時は休日にたまに散歩するくらいでした。そのとき今でも忘れられないおばあさんがいました。散歩するたびいつも猫に餌をやっていたおばあさんを見かけたのです。息子夫婦と同居するようになり、家族に猫を嫌いな人がいたため家で飼えなくなって遊歩道に捨てたのです。そして毎日会いに来ては餌をやっていました。住んでいるのは若松でなく歩いて通ってきているとのことでした。それを聞いたときおばあさんも猫もかわいそうに、何とか遊歩道で無事に生きていてほしいと願ったものでした。でも今はそんな感傷は許されないようです。
 猫を捨てた人にどんな事情があるにせよ、野良猫が増えてくるといろいろ問題が出てきます。遊歩道や団地内の道路を糞尿で汚すだけでなく、住宅の庭に入りこんで糞尿をします。さかりのつく時期には異様な声を出しながら野良猫同士の喧嘩で夜の静けさを破ります。食べ物を盗んだり、小鳥や池の鯉を襲ったりします。家の近くの側溝の穴に生まれたばかりの子猫がもぐりこんで騒ぎになったこともありました。

2.共存のルールを作る
 NHKで木曜日の夜に放送されている「難問解決!ご近所の底力」という番組があります。この番組は生活上のトラブルに悩まされている地域住民がその悩みをテーマに登場し、それに対して同じ悩みをうまく解決した他の地区のやり方が紹介されます。それを参考に解決方法を模索していくというユニークな番組です。そこでは犬や猫の問題が何度か登場しました。マンションでの飼育の是非や糞害などについてでした。遊歩道の野良猫と同様、そこにもペット愛好家とペットによる迷惑を嫌う人との対立がありました。
 若松の野良猫については以前から若松に2つある自治会の中の問題として取り上げられ、回覧版などで「猫に餌をやるのはやめましょう」と注意を呼びかけてきました。中には我が家のように餌やりをやめるところもありましたが、遊歩道では堂々と餌をやる人が出てきて野良猫の数も増えてきました。
 そこで行事役として登場したのが我孫子市役所公園緑地課です。おそらく猫の被害に悩まされている人が市役所に訴えたのでしょう。野良猫についての話合いをしたいという公園緑地課の案内が自治会の回覧で回ってきました。そして何回かの話合いが持たれ、遊歩道の猫についてのルールが作られました。それは野良猫を一方的に排除するものではなく、ペット愛好家と猫の被害に悩んでいる人の両者の意見を入れて、野良猫との共存を図るものとなりました。
 平成15年11月に我孫子市公園緑地課がまとめた「遊歩道ねこ 報告書」は次のように述べています。
 『平成15年2月から自治会の役員さん、住民の皆さんと市役所が「遊歩道のねこについて」の話合いを5回にわたり続けてきました。「ねこ」を中心に話し合ってきましたが、この問題は「人」「動物」「ゴミ」といろいろなことに繋がっていることを痛感しました。
 最初は「ねこ」の存在自体がいけない、エサを上げている人がいけないと考えていた人が大多数でした。しかし、回を重ねるごとに、野良ねこだけでなく、飼いねこや飼い犬による被害も非常に多いことがわかり、「人間」のマナーの悪さが原因であることもわかりました。
 「ねこ」に被害を受けている人も「ねこ」を増やさない対策(捨てねこ防止、避妊去勢手術)、「ねこ」の管理(食事・フン・しつけ)等、<地域で協力していくことが大切>との合意から、みんなで協力していくことになりました。
 今後も話し合いは続けていきますので、ぜひ皆さんのご参加をお願いいたします。
○市広報などで広域に啓発
○市で看板を設置(4ヶ所)
○地域住民でパトロール(検討中)
○市広報などで広域に啓発
○自治会の回覧などで周知
○世話人グループの設立
(エサやり、トイレのしつけ、片付けなど)
○市でねこ用のトイレ砂場を設置
(2基設置済み)
 そして3つの呼びかけを看板に書いて4ヶ所に掲示しました。看板には
 ●猫を捨てないこと
 ●決められた人以外は猫にエサをあげないこと
 ●犬・猫のフンは飼い主が責任をもって持ちかえること
と書かれています。
 このようなルール作りを積極的に進めた公園緑地課はじめ若松自治会その他の方のご苦労に敬意を表したいと思います。市で作ったねこ用トイレは砂がたっぷりのレンガ作りで公園のすみにありました。また世話人グループは現在10名位、皆さん市の職員と同じように名札をつけて頑張っています。
 ただ、避妊去勢手術、治療費など費用は全てボランティアの方たちの好意に頼っているため負担が大きくなるようです。多くの人や企業などからの寄付が集まるようなPRその他の手段を考えていく必要があるのではないでしょうか。
 また、ルールについてもいろいろな機会をとらえて徹底を図っていく必要があると思います。ここに挿入している写真を撮りに行ったときも、家族連れで猫にエサをやりに来ている人がいました。そのときはまだ看板が立っていなかったので注意するのは差し控えましたが、気軽に声をかけるなどしてみんなでルール破りを監視していくことも大切だと思います。
 遊歩道の糞害はねこよりも飼い犬の方が断然大きいように思います。体が大きいので排泄物も大きく、堂々と道の真中に残されていることもあります。これは飼い主のマナーの悪さの証拠以外の何物でもありません。ペットを飼う資格はないのではないでしょうか。

手賀沼がきれいになってきた

1.改善された手賀沼のCOD
 平成15年11月27日に平成14年度の全国の湖沼の汚濁度を示すCOD(化学的酸素要求量)のランキングが環境省から発表されましたが、手賀沼は大幅に順位を上げワースト9位になりました。27年間ワーストワンを続け、日本一汚い沼というありがたくない名称をいただいていたのですが、平成13年にワースト2になり、ついに14年には9位に順位を上げました。平成14年の平均COD値は8.2mg/リットルで、前年の11mg/lから改善されて1桁の数字になりました。経年変化のグラフで見ると35年前の昭和44年のCODよりきれいになっています。千葉県内では印旛沼が9.1mg/lとなり、全国でワースト2位、千葉県内でワースト1位を称することとなりました。
 環境省の定めたCOD環境基準値は75%値で5mg/lです。環境基準値とは、環境基本法の第三節第十六条の『政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする』によって定められた数字です。
 手賀沼の水質経年変化を数字とグラフで見てみましょう。いずれも千葉県のホームページから持ってきたデータです。

手賀沼(測定点:手賀沼中央)の水質(COD)経年変化 (単位:mg/l)
平成5年度6年度7年度8年度 9年度10年度11年度12年度13年度14年度
75%値2224292726 2222151310
年平均値1821252423 191814118.2
 手賀沼のCODは手賀沼中央で千葉県が月2回、年間24回測定した平均値です。測定値には75%値と平均値があり、何故か環境基準値は75%値で設定されており、湖沼の汚染度の順位は年平均値で発表されます。お役所のやることはこんなところでも分かりにくいですね。
 余談ですが平成14年度のCODベストワンは北海道の支笏湖と福島県の猪苗代湖で、CODの値は0.6mg/lでした。

 手賀沼がきれいになった原因は色々考えられます。千葉県や我孫子市では手賀沼の水質保全計画として次のような手を打って来ました。千葉県のホームページに掲載された手賀沼浄化対策です。
【生活系排水対策】
■下水道の整備 平成12年3月末 下水道普及率 75.6% → 平成17年度 79.3%
■農業集落排水施設の整備 平成12年3月末 5施設 → 平成17年度 10施設
■合併処理浄化槽の整備 単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換
■生活雑排水対策 ろ紙袋や水切り孔の細かいストレーナー、三角コーナー等の使用など
【産業系排水対策】
■工場・事業場対策 規制対策事業場への立入検査、違法行為に対する指導取締りの強化
■畜産業対策 家畜排せつ物の排水基準の遵守の徹底、たい肥化・農地還元
■水産業養殖対策 飼料の適正な給餌や施設の改善等
■廃棄物処理対策 ごみ等の不法投棄及び不適切処理の防止、廃棄物処理施設の整備
【沼・河川等直接浄化対策】
■河川・都市排水路浄化施設 大津川浄化施設の改修、大津川河口部に汚濁拡散防止施設の設置
■しゅんせつ等の底泥対策 手賀沼上流部において沼内底泥のしゅんせつ
■水生植物による水質浄化 ホテイアオイの植栽、回収。手賀沼親水広場周辺の湖岸堤整備と植生による浄化
■アオコの除去 富栄養化より発生するアオコの回収
【面源負荷対策】
■農業地域対策 効果的な施肥法の改善、肥料成分の流出しにくい緩効性肥料の推進、田面水の管理の適正化等
■都市地域対策 手賀沼の自然的、社会的特性に応じた「健全な水環境の回復計画」の策定
■自然地域対策 森林の適正管理の促進
 手賀沼浄化に関しては行政だけでなく、「美しい手賀沼を愛する市民の連合会」や「NPOせっけんの街」などの地域の民間団体や流域の市民も積極的に取り組んでいます。市民の方は家庭で使用した天ぷら油などの廃油を資源回収日に出し、それを「株式会社手賀沼せっけん」などで粉石鹸にしています。これは油による水質汚染を防ぐとともに、合成洗剤を石鹸に替えることによって2重に水質保全を図る効果があります。
 これらの努力に加えて切り札となったのが平成12年4月に開始された北千葉導水路からの手賀沼への注水です。

2.効果のあった北千葉導水路からの注水
 手賀沼の西端の柏ふるさと公園の近くに北千葉導水路ビジターセンター(北千葉第二機場)があります。導水路から手賀沼への注水を行う施設が第二機場で北千葉導水路の働きをPRするのがビジターセンターです。注水は毎秒最大10立方メートル、ビジターセンターの入口から眺めると白い泡を立ててかなりの勢いで手賀沼に流れ込んでいます。
 本格運転をはじめたのは平成12年4月からですが、平成11年3月から4回にわたって試験運転をした時の数字をご紹介しましょう。数字はいずれも手賀大橋付近のCODです。
@1回目 3月24日―4月13日
  最大毎秒5立方メートル
  (21日間で手賀沼の容量の110%)
  3月19日 22mg/l
  4月13日 12mg/l
A2回目 7月5日―7月10日
  最大毎秒9立方メートル
  (6日間で容量の65%)
  7月5日  19mg/l
  7月10日 17mg/l
B3回目 9月1日―9月12日
  最大毎秒10立方メートル
  (12日間で容量の75%)
  8月31日 46.5mg/l
  9月12日までの最低
     15.2mg/l
C4回目 10月26日―11月10日
  最大毎秒10立方メートル
  (16日間で容量の160%)
  10月25日 48.9mg/l
  11月10日 4.4mg/l
     (降雨と相乗効果)
 なお手賀沼に注ぐ大堀川の上流からも毎秒最大1立方メートルの注水が行われています。手賀沼に流れ込む大堀川と大津川の水が水質汚染の大きな原因になっているからです。環境基準値の5mg/lを達成するにはまだまだいろいろな努力が必要ですが、私たち流域の住民一人ひとりが水質浄化に向けて気をつける必要があると思います。

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