今月は千葉県の「生涯大学校」について詳しくご紹介しましょう。
 もう1つのテーマは最近増えている「架空請求」です。最近の実例を2つご紹介します。

千葉県生涯大学の2年間

 平均寿命が世界一になり元気な高齢者が増えるにつれ、現役を退いたあとをどう生きるかが切実な問題になっています。農業や漁業に従事している人や、自営業、職人、芸術家、オーナー経営者などには、死ぬまで「生涯現役」という方もいますが、ほとんどのサラリーマンには定年があります。また主婦業には定年はありませんが、子育てが終わり、両親を見送ったあとはかなりの自由時間が生まれます。生きがい発見は、人生の最終ステージを楽しく送るための大きな課題です。
 「生涯学習」もその生きがいの1つです。「生涯大学」は「生涯学習」をモットーに一緒に勉強しながら生きがい発見のきっかけと場を与えてくれます。ここでは千葉県のケースを取り上げましたが、皆さんの都道府県や市区町村にも同様の施設やプログラムがあると思います。

1.千葉県生涯大学校とは
 千葉県生涯大学校は昭和50年老人大学として開校、平成5年に生涯大学校に名称を変更しました。卒業生は3万人を超えています。総長は千葉県知事、千葉県健康福祉部高齢者福祉科と生涯大学事務局で運営されています。
 設立の趣旨は入学案内によると『60歳以上の方々が、新しい知識を身につけ、広く仲間作りを図るとともに、学習の成果を地域活動で役立てるなど社会参加による生きがいの高揚に資する』ことを目的にしています。
 入学資格は千葉県在住の60歳以上の人です。

 学習期間は2年間、週1日(年間37日程度)、10時から3時までの4時間です。卒業後は希望者は抽選にあたれば、さらに2年間の専攻過程に進むことが出来ます。
 授業料は年額18000円ですが、私が入学した平成14年までは無料でした。千葉県の財政事情が厳しくなったため、昨年の入学生から有料になりました。

江戸川台校舎の正面
 校舎は広く県民が出席できるよう、千葉県下に点在しています。京葉学園(千葉市)、東葛飾学園浅間台校舎(松戸市)、東葛飾学園江戸川台校舎(流山市)、東総学園(銚子市)、外房学園(茂原市)、南房学園(館山市)です。
 科目は、福祉科、生活科、園芸科、陶芸科の4科目となっています。
 なお、在宅で学ぶ通信過程もあります。
 入学手続は入学願書を千葉県生涯大学校へ提出、応募者が定員を越えた場合は公開抽選により決定します。競争率は有料になってから低下しましたが、人口の集中している京葉学園や東葛飾学園では応募者が定員を越えています。特に陶芸科と園芸科が毎年競争率が高くなっています。
 開校までのスケジュールは、平成16年4月入学の場合は次のようになっていました。
・願書受付 前年11月12日〜12月26日
・入学通知 2月18日までに郵送により通知
・入学式 4月14日(千葉県文化会館)
・授業開始 4月後半より

2.クラス運営と学習内容
 私が学んだのは東葛飾学園江戸川台校舎の25期福祉科Aクラスでした。クラスの人数は78名(男性48名、女性30名)、登校日は1年目は月曜日、2年目は火曜日、午前と午後2時間ずつの授業でした。8月と3月、年末年始の3週間が休暇です。

教室の正面掲示の校歌
 78名を住所と男女比で7つの班に分けていました。各班で班長と副班長を選び、クラスでは会長と副会長と会計を互選しました。そのメンバーはほとんど全員が2年間勤めました。授業のカリキュラムはほぼ学校の方で決められていますが、時々自主学習の時間があり、クラスで内容を決めて自主運営する必要がありました。それ以外に、作品展や懇親会などもクラス役員で運営しました。卒業アルバムの制作、修学旅行の実施、同好会の設立などは別のメンバーが担当しました。
 授業開始の前に校歌を唄います。最初はやらされているような感じであまり熱が入りませんでしたが、だんだん声を張り上げて歌うようになりました。

 福祉科の学習内容をまとめて見ました。
1年生の学習テーマ
高齢者・福祉
高齢者の役割、高齢者の福祉(現状と課題)、高齢者の福祉(在宅)、介護保険制度、家庭介護、介護実習、社会福祉協議会の活動、高齢者の雇用と就労問題、障害者の福祉、高齢者と家族関係、青少年の福祉、手話、地域ぐるみ福祉、老人保険制度、老人クラブの役割、生活保護、社会保障、高齢者の在宅福祉施策、社会福祉の現状と課題
趣味
短歌の作り方、園芸に親しむ、陶芸に親しむ、絵画に親しむ、音楽に親しむ、書に親しむ、文学に親しむ
社会生活・家庭生活
交通安全、情報社会と生活、消費者保護、ボランティア活動入門、暮らしの法律、男女共同参画社会とは、家計と資産管理、環境問題
スポーツ
ゲートボール、体育レクの指導法
教養
人間関係論、憲法、文書の作成技法、心理、話し方教室、会議の運営技法、カウンセリング
千葉県関連
房総の偉人、千葉県の国際化と文化の振興、郷土の祭り、房総の歴史
健康
健康管理(脳卒中・心疾患)、栄養

2年生の学習テーマ
高齢者・福祉
高齢者の社会参加、高齢者の福祉(施設)、救急法、年金制度、障害児・者の教育、高齢者を取り巻く諸問題、家庭介護実習、母子の福祉、老人クラブ活動の実践例、高齢者の健康について、手話、熟年社会と高齢者の学習課題、児童の福祉、国民健康保険
趣味
音楽に親しむ、文学に親しむ
社会生活・家庭生活
暮らしと経済、地域コミュニティ活動、消費者と契約、防災の話、ボランティア活動の実践例、NPO活動実践例、ボランティアの意義と役割、ボランティア(施設実習)、税金(相続税・贈与税)、自然・動植物環境、循環型社会、・環境アクションプログラム作成、暮らしの法律、住居と生活環境
スポーツ
軽運動(自疆術)、体育レクの指導法、ペタンク
教養
カウンセリング(実習)、コミュニケーション、博物館学習、広報紙の作成技法、国際情報、リーダーのあり方、憲法
千葉県関連
房総の歴史、房総の文学、千葉県の文化財と保護
健康
食中毒の予防、健康管理(歯)、健康管理(ガン・糖尿病)、薬用植物、生活習慣病と食生活について、精神保健、公衆衛生

 ほとんどは江戸川台校舎での講義でしたが、なかには「自疆術」や「体育レクの指導法」のように体を動かしたり、「音楽を楽しむ」のように声を出したり、「手話」のように指先を使ったりと実習を取り入れたカリキュラムも用意されていました。ゲートボールやペタンクは公園の広場で楽しみ、看護実習は看護学校で指導を受け、介護施設でのボランティア体験もありました。自主学習では博物館、美術館、水上バス、大学の薬学部、醸造所などを訪問しました。
 講師は以前から引き続いて担当している専門の講師、市役所や県庁や国やそれぞれの外郭団体の職員、福祉などの現場で活躍している担当者などいろいろでした。さすが専門の講師は教え方が上手で面白い内容が多かったのですが、中には時間つぶしのようなあまりやる気のない講師もいました。現場で苦労している人のお話は具体的で興味深く、考えさせられるような問題の提供が多々ありました。期待外れの内容が多かったのは役所や外郭団体の職員のお話でした。抽象的で、用意した資料をそのまま読んでいるような講義が大半でした。新しく職場に赴任した職員の教育の場に生涯大学が使われているのではないかという感じの講義もありました。
 なお生涯大学の運営にあたった職員は大変熱心で親しみ易い方が多かったように思います。

 生涯大学には、趣味を楽しむとともに校友関係を深めるため、いろいろなクラブや同好会がありました。
 詩吟、俳句、短歌、書道(漢字)、書道(かな)、日本舞踊、民謡、ゲートボール、ウォーキング、ダンス、コーラス、ゴルフ、グラウンドゴルフなどです。これに加えて同級生が写真クラブを作りました。
 仲間作り、友達作りにはクラブや同好会のほうが卒業後も続けられるため役に立つのではないかと思っています。

3.生涯大学校で得たもの
 2年間の生涯大学で得たものをまとめてみましょう。
@生活のリズムが生まれた
 週1回の生涯大学が生活のリズムを作りました。退職したあとは毎日が日曜日のため何となくすごしがちです。ところが週1回生涯大学に出席することになってサラリーマン時代と同じように週単位のリズムが生まれました。

休憩時間の受講生
 まず年間の学習予定表を見て手帳に1年分の予定を記入しました。そしてそれ以外の日の予定をだんだん書きこんでいくのです。私の場合、春から夏にかけては不定期の仕事が入るためそのときはそちら優先でしたが、それ以外はなるべく学校優先にしました。
 生活のリズムができるということは、高齢者にとっては精神的にも肉体的にも健康を維持する1つの条件だと思います。
A興味の範囲が広がった
 今まで知らなかったこと、知ろうともしなかったことを学習する機会が得られました。その結果大袈裟に言えば、知的好奇心が刺激され、新しい世界を知ることができました。例えば手話を集中して勉強し、自分で使ってみることにより手話が大変身近なものになりました。残念なことにその後使う機会がなかったためすぐ忘れてしまいましたが、聴覚障害者の世界をほんの少し実感することができました。
Bネットワークの輪が広がった
 多くの友人、知人を得ることができ、ネートワークの輪が広がりました。2年間ほとんど毎週同じ人と顔をあわせていると自然と親しくなります。1年目は同じ班の人と親しくなり、2年目は同じクラスの人、歩こう会の人と親しくなりました。そして多くの方から知識だけでなく、生き方、考え方などを学びました。手賀沼通信を読んでくださる方も増えました。
 卒業後もクラス班で引き続き交流を楽しんでいます。歩こう会ではOBから現役まで一緒になって月1回のウォーキングを楽しんでいます。
C自分を変えていくきっかけをつかんだ
 いまや変革の時代、世界も日本も、社会も企業も、そして個人も良い方向に変わるあるいは変えていく必要があります。生涯大学とその仲間から自分を変えていこうというキッカケが得られたと思っています。地元にもっと関心を持つこと、他の人との関わりを強くすることを模索しています。そのための行動パターンを少しずつ変えていこうとしています。
 生涯大学の仲間には企画力と行動力がある人や心の温かい人が大勢いました。その人達をお手本に自分を変えていければと思っています。

架空請求にご用心

 オレオレ詐欺と同様、新聞やテレビで騒がれている架空請求が私と友人に届きました。2つの架空請求は内容がかなり違っており、だましの手口も巧妙になったのをうかがわせます。手賀沼通信の読者の方は騙されることはないと思いますが,参考のためご紹介いたします。

1.アダルトグッズ・有料情報サービス利用料金の支払い請求
 私の所に来たはがきです。
 『料金お支払いのお願い(最終通告のお知らせ)
 平素は,アダルトグッツ、有料情報サービスをご利用いただき,有難うございます。さて,貴方様が過去にご利用いただいております本サービスのお支払期限を過ぎておりますが,まだ確認ができておりません。未納使用料金の,お支払い,ご連絡を最終期限までにいただけるようお願いいたします。万が一、到着後一週間以内に御連絡の上、お支払いに応じて頂けないお客様に関しては、遺憾ながら訴訟、その他法的手段を取らせていただきますことをご了承ください。』
 そのあとに,会社名と料金担当,お客さま相談担当,お問合せ担当の3つの携帯電話番号が書かれていました。私に振られたお客様番号まで印刷されていました。はがきの消印は5月30日豊島、おそらく東京都豊島区から出したものでしょう。
 もちろんそんなグッズやサービスを利用した覚えはありません。早速我孫子警察生活安全課に連絡したところ,「一切連絡はせず無視してください」とのことでした。
 はがきが届いたのは5月31日,6月23日にまたほぼ同じ文面のはがきが届きました。会社名、連絡先電話番号、お客様番号は違っていました。投函場所も王子になっていました。

2.著作権違反支払の請求
 上のはがきが届いたのと同じ日,近くに住む友人から次のようなメールをいただきました。
『前文省略。さて、最近はやりの架空負債通知とそれの督促状の「ハガキ」が来ました。
・請求書(5/28日配達):ファイル交換ソフトによる違法な音楽データのやりとりが確認され、それは著作権法違反です。よって、日本レコード協会よりの委託により、428,000円を請求します。5月31日までにお支払いください。
・督促状(5/31日配達):未納金につき、その債権が譲渡されました。和解の意思のある方は大至急連絡してください。
 以上、各々異なる会社名と住所及び携帯電話番号が記載されています。
@私はファイル交換ソフトを所有していません。
A二つのハガキに全く同じ住所ラベルが使われています。
B住所表記が住民票記載と同じで通常私が使用している住所表記と異なります。
架空請求は明白なので、「柏市消費生活センター」と「柏警察署生活安全課」に通報しました。
 両者ともに、「オレオレ詐欺に続く新手詐欺で続発している。無視して、電話等での連絡は絶対にしないこと」「何か実被害(脅迫等)があれば、警察署・交番・110番に連絡するように」とのことでした。』

 その後3枚目のはがきが届きそれには最終通告とあったそうです。友人による3枚のはがきの分析結果は次の通りです。
『@3枚のハガキに使用されている住所ラベルは用紙・住所表示・字体・体裁ともに全く同一。同一人の仕業でしょう。住所氏名の情報出所は不明。
A3枚のハガキに記載されている「管理番号」「お客様コード」はそれぞれ違います。また記載されている内容にも関連性はありません。
B3枚のハガキ記載の住所を地図ソフトで調べてみました。
 1枚目:ホテルがあります。
 2枚目:住所表示が存在しません。
 3枚目:中野第2コーポなる建物です。
C投函郵便局:
 1枚目:埼玉新都心
 2枚目:中野
 3枚目:浅草
D使用ハガキ:3枚ともに「トキ」の50円ハガキ。』

 なお友人が消費生活センターに問い合わせたところ「ハガキで債権回収に関する請求・通告・督促等がなされることは無い」とのことです。
 皆さん気をつけましょう。

inserted by FC2 system