友人の大野耕一さんからスイス旅行の感想をお送りいただきました。大野さんは奥様と二人でヨーロッパに旅行された記録を
・「オーストリア、音楽の旅」   平成6年
・「イタリア、こころの旅」    平成8年
・「フランス、美術の旅」     平成11年
・「ドイツ、再び音楽の旅」    平成14年
として、手作りの本を出されています。
 「街道を行く」の司馬遼太郎氏のように、出発前に十分時間をかけて参考文献を読むなど調査し、旅行中はメモ、写真、スケッチをこまめにとり、帰ってからは執筆、印刷、編集、装丁、製本をご自分で行われます。100ページ前後の本格的な本となります。出版社に依頼して作る自費出版より味のある仕上りです。
 この春にはスイス旅行の5冊目の本を出されるそうですが、事前にその旅の感想を「スイスの美しさ」としてお送りくださいました。

 「死亡時の諸手続き」は昨年私が経験したことです。ご参考になれば幸いです。

特別寄稿
ス イ ス の 美 し さ

大野耕一     

 平成16年の7月中旬、私は9泊11日の日程で、スイスに行ってきました。マッターホルン、ユングフラウ、モンブランの三大アルプスと氷河を見学しながらハイキングし、氷河 特急、ゴールデンパス・ラインやブリエンツ・ロートホルン鉄道のSLに乗車するという、人気のコースです。

頂上を見せたマッターホルン
 スイスは、国全体が美しいところです。2日目に訪れたマイエンフェルトには、気高く聳えるアルプスの山々、風に揺れるモミの木、のんびりと草を食む牛や羊たち等々、名作『アルプスの少女ハイジ』を彷彿とさせる世界が広がっていました。
 サンモリッツからツェルマットまで270キロの距離をゆっくりと7時間30分かけて走る氷河特急の旅では、アルプスのパノラマの凝縮された美しい風景が車窓から見え、存分に楽しむことができました。
 4日目の午前中にゴルナーグラート展望台まで行った時には姿を現わさなかったマッターホルンが、夜9時過ぎになってやっと雲が切れ、頂上を見せてくれました。すばらしく頭の切れる優等生の巨人が座っているようで、しかも、近寄り難い冷徹さと完璧な美しさを備えていました。
 周囲をぐるりと断崖に囲まれ、静まりかえったエッシネン湖は、陽光を映して湖面が様々な表情を見せています。神秘的な美しさの漂っている湖でした。
 6日目の、アイガー北壁を背にしてのハイキングには感動しました。後方に、標高差1,800メートルの巨大な絶壁を持つアイガー北壁が覆い被さるようにそそり立っています。その前の、数百種類の花々が見渡す限り一面に咲き乱れているお花畑の中を、まるで花の絨毯の上にいるように、歩いてゆきます。魔の山の迫力と高山植物の美しさが対照的でした。
 スイスは、こうした自然の美しさに恵まれた国です。だが、その「与えられた美しさ」を保つために、スイス人一人ひとりが並々ならぬ努力をしているのも事実です。
 町並みづくりが、その一つでしょう。最初に散策したチューリッヒの市街地は、菩提樹の並木道がきれいに続き、狭い地域にそれぞれ個性溢れる建物の教会が立ち並び、美しいチューリッヒ湖と相俟って、町全体を芸術作品のようにしています。何気ない路地裏や坂道の石畳も、魅力的でした。
 ツェルマットは、素晴らしい町です。メインストリートを歩いていると、自分が俳優になり、まるで映画のセットの中で演技しているような気分になります。大通りに面した家々は、シャレー風の木造づくりで統一され、窓という窓には必ずといっていいほど、赤やピンクや白のゼラニュウムの花などが飾られています。
 見る側の私たちには非常に心地良いものですが、管理する方はその手入れが大変のようです。まず花選びから始まって、朝晩二度の撒水は欠かせないので、なかなか外泊することができないという話を聞きました。花や庭の手入れに関しては、市町村の条例や環境保護団体の規則などによって、細かく規制されています。住宅の建て方(外壁に占める木材の比率、屋根の材質、仕様)、洗濯物の干し方(通行人から見える場所には洗濯物を干さない等)なども、市町村の条例で定められているそうです。
 また、ツェルマットやヴェンゲンなどの観光指定地域では、自然環境への影響に配慮して、この自動車全盛の時代にも拘らず、排気ガスを排出するガソリン車の乗り入れを禁止しています。町の中を走っているのは、電気自動車と馬車だけ。この制度など、ガソリン車が大量に駐車される隣町の協力も大変なものだと思います。
 同じ理由で自動車道路を作らずに、カートレイン(自動車列車)を走らせている地域もありました。レッチュベルク峠下のゴッペンシュタインからカンデルシュテックまでの区間です。
 アルプスの景観を損ねないように、ユングフラウ鉄道はアイガーの山腹に穴を開けて、その中に登山電車を潜らせています。終点のユングフラウヨッホ駅も山腹のトンネルの中で、外からは見えません。
 この10日間、バス、電車、遊覧船そして徒歩で、何キロ走破したでしょうか。そのどこにも、ゴミや塵はおろか、見苦しい落書きや張り紙などを、一切見かけることはありませんでした。
 こうして例を挙げれば切りがありませんが、スイスはそれこそ挙国一致で、美しい国を作り上げてきたのです。
 新田次郎氏は、著書『アルプスの谷 アルプスの村』に、こう書いています。
「実際にいつ来ても、いつ見ても、スイスは美しい。スイスというところは、一木一草にいたるまで、意味あり気に生えている。
 確かにそのとおりだった。チューリッヒの町に滞在中、公園に行っても、街を歩いていても、森へ行っても、湖に行っても、この感じを受けた。例えば、写真を撮るのに構図を考える必要はなかった。露出が適正であるならば、撮られた写真はすべて絵になるようなところであった。」
 前段の部分は、同氏のスイス旅行に同行した航空宇宙評論家の佐貫亦男氏の言ですが、それも含めて、40年以上前の印象が、そっくりそのまま今日のスイスにも当てはまっています。
 町並みも、それを構成する民家も、教会も、牧草地も、森も、それらはみな人が作ったものです。スイスの美しさは、「与えられた美しさ」であるとともに、「作った美しさ」でもあるのです。
大自然の美しさを最大限に利用することにより、スイスは世界に冠たる観光立国となりました。しかし、もう一つ忘れてならないのは、長年世界中の旅人を迎え入れてきたスイス人の、ホスピタリティー(親切な、もてなしの心)ではないでしょうか。
 私たちがブリエンツからSLに乗ってロートホルン山に行った時。このSLに乗ってくれたお客様には、とことん楽しんでもらおうという、運転手の笑顔と何気ない仕種にホスピタリティーを感じたのは、私だけでしょうか。

ツェルマットの美しい町並み
 ツェルマットの人たちが、マッターホルンを見にきた遠来のお客様をがっかりさせまいとして、昔から言い伝えてきた言葉があります。「初めて来た人には、見せてあげない。2度目の人には、ちょっとだけ。そして3度目だったら、全部見せてやろう!」これなど、もし天候に恵まれずマッターホルンを見ることができなかったとしても、ああそうか、そういうものなのかと、自分自身を慰めることができる、その心遣い、温かい気持ちの表われでしょう。それがスイス人の心なのです。
 グリンデルワルドでは、幸運にも町の夏祭にめぐり合えました。一曲歌い終わったところで、仲間の帽子を取り、それを家内にかぶせて一緒に写真に入ってくれた町の男声合唱団のおじさん、若い人たちと手をつなぎながら楽しそうにフォークダンスを踊っていた80歳近いお婆さん、そして、夕食を買いにスーパーマーケットに出向いた際、ニコニコしながらハムとテリーヌを2割以上もおまけしてくれた売り場のお爺さん。どの顔にも、海外からのお客様にこのスイスへ来たことを喜んでもらおうという、おもてなしの心が感じられました。
 美しい国スイスは、こうして作られていました。

死 亡 時 の 諸 手 続

 「夫の大往生」「妻の立ち往生」という言葉があります。現役の夫が亡くなったときはそのショックも大きいですが、悲しんでいるひまがないほど後始末に追われることになります。遺族が直面する諸手続です。
 そんな大変な例ではありませんが、この度経験したことをまとめてみました。以下の例は現役の死ではありません。退職した世帯主の高齢者で、共済年金と厚生年金の受給者、国民健保加入者、喪主とは別世帯のケースです。ご参考になれば幸いです。(なお現役の場合はもっといろいろの手続が必要です)
 市役所への死亡届、葬儀の準備と施行、埋葬許可証の取得などは葬儀社主導でやってくれます。遺族が対処する必要があるのはお金の準備と一段落した後の諸手続です。

1.葬儀社の手配と葬儀費用の準備
 できれば葬儀社を決めておいたほうがいざという時慌てなくて済みます。病院で亡くなった時はこちらで注文をつけない限り病院では病院で決めている葬儀社を手配します。葬儀社によっては斎場や導師も決まってしまいます。費用も予想以上にかかることもあります。高齢者の仲間入りをしたらどこでどんな葬儀をするかを常々決めておいたほうがいいでしょう。
 葬儀にはまとまったお金が必要です。香典が沢山集まる場合は別ですが、故人の負担で葬儀を行う時はなるべくはやく故人の口座から喪主の口座に必要なお金を移しておく必要があります。銀行が死亡の事実を知った場合、故人の口座がクローズされると聞いています。

2.埋葬料の請求
 国民健保加入者は10万円の埋葬料が出ます。申請書に記入し、会葬お礼のはがきと健康保険証を添えて市役所に届けます。我孫子市では故人と喪主が世帯が別の場合は喪主宛の葬儀社の領収書が必要でした。

3.未支給の年金の請求
 年金は前月と前々月の2ヶ月分が偶数月に振り込まれることになっています。例えば6月と7月分が8月15日に振りこまれます。年金受給者がなくなると、通常未支給の年金がもらえます。8月に亡くなった場合は8月分(1ヶ月分)が未支給の年金となります。届出が遅くなると通常通り年金が振りこまれるため、後で返さなくてはならず面倒な手続きが必要となります。
(1)共済年金
 共済年金の場合は共済組合事務局に連絡すると、提出書類と添付書類の一覧表が送られてきます。下記の書類をそろえて事務局宛郵送すれば指定した口座に未支給年金が振りこまれます。
提出書類
・「年金受給権消滅届書」および「支払未済給付請求書」
・「口座振込依頼書」
添付書類
・受給者の「年金証書」または「年金改定証書」
・受給者の「除籍謄本」
(2)厚生年金
 市役所の年金課に行って提出書類をもらい、記入後添付書類と一緒に年金課に提出します。指定した口座に未支給年金が振りこまれます。
提出書類
・「年金受給者死亡届」
・「未支給保険給付請求書」(請求者の振込先の銀行で口座番号の確認印をもらう)
添付書類
・年金証書(見つからない時は理由書を提出)
・受給者の「除籍謄本」
・受給者の「除住民票」(本籍・続柄の記載されたもの)
・請求者の「住民票」(     〃     )
・請求者の「戸籍謄本」
・生計同一申立書(世帯が別の場合)
 未支給年金の請求のため社会保険事務所に電話したところ、「必要書類と印鑑を持って社会保険事務所に来るよう」に言われました。わずか1月分の年金を受け取るのに待たされるので有名な社会保険事務所に行きたくはありません。一方、共済年金の事務所は「書類を送るのでそれに記入して送り返していただければ未支給の年金を支払います」とのことでした。社会保険事務所に再度電話して「共済年金は郵送でいいといっています」と言ったら、「市役所に届ければいい」と別の人が答えてくれました。社会保険事務所はサービスと職員教育に問題があるようです。

4.不動産の所有権移転登記
 故人所有の不動産がある時は相続人名義に所有権移転登記をする必要があります。そのままにしておくと、後でその不動産を売りに出すような場合、面倒なことになる可能性があります。
 所有権移転には遺言書か遺産分割協議書が必要になります。遺言書には公正証書遺言と自筆遺言があります。公正証書遺言はそのまま使えますが、自筆遺言の場合は家庭裁判所で「遺言書の検認」を行ってもらう必要があります。
 今回の経験で、不動産のある方はぜひ公正証書遺言に不動産の相続を書いておくべきと感じました。自筆遺言の場合は遺言書の検認が必要になり、かなり面倒な手続きが必要になります。
 公正証書遺言の場合で司法書士に依頼したケースをご紹介します。1週間で完了しました。
必要書類
・公正証書遺言
・被相続人の「除籍謄本」
・被相続人の「除住民票」(本籍・続柄の記載されたもの)
・相続人の「住民票」(     〃     )
・相続人の「戸籍謄本」
・相続する不動産の「固定資産評価証明書」
・司法書士への委任状 費用
料金は相続財産の評価額によって変わるようです。今回のケースは以下になりました。
司法書士報酬  登録免許税/印紙税
・土地相続33,000円25,800円
・家屋相続27,000   7,300   
・登記簿謄抄本1,000   2,000   
・貼用印紙   1,000   
 合 計61,000   36,100   

5.遺言書の検認
 自筆遺言の検認を行う方法を調べてみました。ガイドと記入用紙はFAXアンサーで入手できます。
 (FAX:03-3503-4355)
(1)概要
 遺言書(公正証書遺言を除く)の保管者またはこれを発見した相続人は遺言書を家庭裁判所に提出しその検認を受ける必要があります。封印された遺言書は家庭裁判所で相続人等の立会いで開封しなければなりません。検認とは相続人に対し遺言の存在および内容を知らせるとともに内容を明確にしておくものです。
 下記の種類をそろえて申立を行い、受理されると家庭裁判所より呼び出しがあります。相続人は遺言書を持参して検認を受けます。
(2)申立人
遺言書の保管者、遺言書を発見した相続人
(3)申立先
遺言者の最後の住所地の家庭裁判所
(4)申立に必要な書類
・申立書(FAXコード0713で入手可能)
・申立人の戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・遺言者の除籍謄本
・遺言者の改製原戸籍謄本(出生から死亡までのすべての戸籍謄本)
 高齢者の場合、太平洋戦争を経験しており戸籍謄本が焼けてしまっている場合があります。すべての戸籍謄本を取るには時間と費用がかかります。現在の戸籍から一つ一つさかのぼって本籍を登録した役所を訪問するか郵送で取り寄せることになります。試しに追っかけようとしましたが大変ということがわかりました。司法書士に依頼すれば2〜3万円の追加費用で取得してくれるようです。

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