今月のテーマは「確定申告を簡単に」と森正男様からご投稿いただいた「重荷を背負って18年」です。
 確定申告は3月15日までですので、今月の手賀沼通信は早めにお届けいたします。用意のいいかたはすでに申告済みと思いますが、まだの方のご参考になれば幸いです。

 森正男様は手賀沼通信の初めの頃からの読者で、今までに5回ご投稿いただいております。これは今までご投稿いただいた30名の方の中で、私の弟についで2番目でした。今回いただいたため1番目に並びました。大変ありがたいことと思っています。

 なお今月号は編集の都合上、最初のテーマは1段組に致しました。

確定申告を簡単に

 現役を終えた年金生活者にとっては春は確定申告の時期です。毎年やっていることとは言え面倒です。税金を納めるという国民の義務を果たすために、あるいは払いすぎた税金を返してもらうためにも確定申告は避けて通れません。そこで少しでも簡単に済ませる方法があれば助かります。
 私は公認会計士や税理士のような税金のプロではありません。一納税者でまったくの素人です。素人がインターネットを使ってすべて自分で処理する方法を探ってみました。すでにご存知の方も多いと思いますが、まだの方は試していただければと思います。
方法としては、ホームページで申告書を作成したうえで、申告書を印刷し添付書類と併せて郵送する方法と、郵送せずに直接電子申告(e−tax)を利用して伝送する方法とがあります。ここでは郵送する方法について説明いたします。

1.確定申告書を作る
 国税庁のホームページ(http://nta.go.jp)に行きそこから申告書の内容をインプットすることによって申告書が出来上がります。
 ホームページから「確定申告書等作成コーナー」をクリックします。
 「確定申告書等作成コーナー」のページで「所得税の確定申告書作成」を選びます。
 次に作成する申告書を選択します。申告書は6種類ありますがその中から該当するものを1つ選びます。
@年末調整済みの給与所得のみの方が、医療費控除、住宅ローン控除などを受ける場合
A年金収入などを含む雑所得のみの場合及び給与所得と雑所得の場合
B年末調整が済んでいない給与所得又は複数箇所からの給与所得がある場合
C給与所得、雑所得、配当所得及び一時所得のみの方で、予定納税のない場合
D事業所得や不動産所得などがある場合
E退職所得、株式の譲渡及び先物取引に係る所得がある場合

 高齢者の場合は年金をもらっているのでAの申告書が該当する場合が多いと思います。サラリーマンで医療費控除を受ける方やマンションなどの住宅を購入した方(最初の年だけ)は@の申告書になります。自営業の届けを出している方や不動産所得がある方はDになります。
 ここではAの例を取り上げましょう。
 次の画面で「生年月日」をインプットすると、次に「給与所得」をインプットする画面が出ます。給与をもらっていない方は何もせず「次へ」をクリックしてください。給与をもらっている方は源泉徴収票から該当項目を入れます。
 次に「雑所得(公的年金等)」をインプットする画面が出ます。ここで年金について該当項目をインプットします。最初は社会保険庁からの年金(厚生年金、国民年金など)を入れる欄です。社会保険庁以外は下の段になります。下の段には「所得税法第203条の3適用分」の第1号、第2号、第3号の区別があるので、支払者から届いた書類を見ながら間違えないように入れましょう。もし「厚生年金」以外に「厚生年金基金」と「企業年金」をもらっているようなときは、「次ページへ」をクリックして2つ目を入れてください。インプットした後、内訳が下のほうに出ますので確認しましょう。
 「入力完了」を押すと、「申告書A(所得・所得控除等入力)」のページが出ます。
 この画面にはインプットした給与や年金から所得控除を差し引いた金額が、「所得金額」の欄に計算されて出ています。ここで65歳以上で年金をもらっている方は所得金額が増えたことに驚かれると思います。昨年の所得から65歳以上の人の年金控除の金額が65歳未満の人の控除額と変わらなくなったためです(ただし最低控除額70万円については65歳以上の人については50万円加算し、120万円にする特別処置がとられています)。その分増税になりました。
 次は「所得から差し引かれる金額」を入れましょう。
 まず「社会保険料控除」です。青色で下線が引かれているところはそこをクリックするとインプット画面が出ます。社会保険料控除のところをクリックしてインプット画面を出してください。ここで入れるのは健康保険料や介護保険料などです。配偶者の国民年金保険料を払っているときはそれも入れます。
 「生命保険控除」「損害保険控除」も入れましょう。その他該当する控除がある方は忘れず入れてください。「配偶者控除」「配偶者特別控除」はどちらか一つです。配偶者の所得が38万円以下の場合は「配偶者控除」、38万円を超える場合は「配偶者特別控除」です。なお38万円は収入金額ではなく所得金額です。なお65歳以上の高齢者に昨年まであった「老年者控除」がなくなりました。これで高齢者は最低5万円は増税になります。高齢者にとっては年金控除の見直しと老年者控除廃止とダブルパンチで増税です。
 すべての該当項目をインプットし終わると納税金額または還付金額が計算されます。

 ここでがっかりしないようにしましょう。この原稿を書くため昨年のデータを入れて計算してみました。昨年までは自分で計算表をエクセルで作り、それを送られてくる書類に転記していました。その昨年の控と今年ホームページで計算した税額と比べてみました。かなりの増税になっていました。一瞬間違いではないかと思いました。おそらく地方税のほうも大幅な増税になっていることでしょう。来年からは2年間かけて定率減税が廃止されます。ますます増税です。
 国会議員や公務員の人数を減らし独立行政法人などを統合して無駄遣いを減らして欲しいものです。

 「次へ」を押します。
「住所等入力」画面から「住所・氏名等入力」を押し、「住所・氏名等入力」画面から必要項目を入力します。なおこの画面から「税務署の所在地および管轄区域」を調べることが出来ます。税務署から申告書を送ってきている場合は調べる必要はありませんが、初めて郵送する場合は、ここで郵送先の管轄の税務署を調べてください。
 提出年月日など決まっていない場合は、入れないでおいてあとで記入してもかまいません。「入力終了」を押し,「次へ」を押すと申告書印刷画面になります。
 「申告書印刷」画面では印刷の前に「入力データを保存する」を押してインプットしたデータを保存しましょう。もしあとで訂正したいような場合、保存したデータを読み込んで、訂正することが出来ます。なお読み込みは「申告書選択」画面から「確定申告書データ読込」を押すと読み込むことが出来ます。保存する場所は、自分のパソコンのマイドキュメントなど、自分で指定します。電子申告をする場合は印刷画面から飛ぶことになります。ここでは郵送するため印刷しましょう。「確定申告書の印刷」を押してください。
 画面の右のほうに確定申告書の1ページ目が出てきます。確定申告書はPDFファイルで作られています。PDFファイルはパソコンに入っている「Adobe Reader」で読むことが出来ます。右の「ファイル」から「印刷」を選んで印刷しましょう。
 2種類3枚ずつ、合計6枚印刷されますので、控用をとっておき後の4枚を送ることになります。

2.確定申告書を送る
 確定申告書は添付資料と併せて所轄の税務署に郵送します。混雑する税務署にわざわざ出掛ける必要はありません。送る前に提出用に印鑑を押すのを忘れないようにしましょう。
 「源泉徴収票」「生命保険料支払い証明書」などの添付資料は提出用の第二表の裏に貼り付けてください。

 なお国税庁のホームページでは、「確定申告の記載例」「確定申告に関する手引き」「確定申告期に多いお問い合わせ事項Q&A」「各種様式」などを見ることが出来ます。
 私の下手な説明でご理解いただけない場合は、これらのページで調べてみてください。

特別寄稿
重荷を背負って18年
森正男     

 昨年の6月15日に妹が63年の生涯を閉じました。昭和63年5月、40歳半ばにして、くも膜下出血で倒れて以来18年間、とうとう元な姿にかえることなく、この世を去りました。

 ある日突然頭痛と吐き気に襲われ、救急車で柏市の病院に運ばれ、14日間頭痛に耐えながら検査の毎日が続き、漸く東京医科歯科大学に入院が決まり、病院に到着して間もなく、発作を起こしてしまい、発作のショックで前歯が4本も折れてしまい最悪の状態になってしまった。
 医師の診断の結果殆ど仮死状態で手術の出来る状態ではないとのこと、家族や兄弟は落胆してしまい、声も出ない状態だった。夕方まで様子を見ていると、かすかに反応が出て来たので手術をして見るが確率は低いとの説明を受けて、承諾書に亭主が署名押印した。明け方まで9時間もかかる大手術だったが、何とか一命は取り留めたが、術後半年は意識が戻らず、高熱が続いて家族や兄弟が交代で付き添った。半年が過ぎた頃、僅かに反応が出てきた。それからは薄紙を剥がすように少しずつ意識が戻ってきた。
 以後9年間に10回も手術を繰り返し、方々の病院を転々として完全に障害者になってしまった。それでも会話が出来るまでに回復したが車椅子の生活を余儀なくされた。まともな部分と狂った部分が同居して、やたらに人を怒鳴ったり、そうかと思うと昔の話を我々以上に覚えていて話す時は本当にまともなのだ。冗談に家内に女性の話でもしょうものなら目くじら立てて、そんなこと言うものでないと本気で怒る。救われるのは性格が明るいので調子に乗ると歌もよく歌った。障害者になってからは心の抑制も出来ず、善し悪しの判断もなくごく自然体で生きた。
 平成8年悪いなりに小康状態を保つようになり、柏市の紹介で八街市の身体障害者療護施設コスモ・ヴィレッジに入所した。今までは何処の病院に転院しても狭い部屋のベッドに閉じこめられ、騒いだり、怒鳴ったりするもので、看護士さん達の嫌わ
  れ者になり、随分虐められたものだ。そんな生活から解放され、相部屋ではなく個人部屋を与えられて、施設長や職員の皆さんが献身的で明るい態度で接して下さることで、精神的に安定して、次第に明るさを取り戻して行った。毎週亭主が日曜日には面会に来るのを唯一の楽しみにしていた。施設ではスーパーに買い物に連れて行ったり、カラオケにも連れて行ってくれた。私達夫婦も月に1回〜2回は必ず面会に行き話し相手になった。女同士でないと話も続かないので、殆どは妻が相手をしてくれた。行くたびに話の内容は昔話しと子供の話と話題は同じものだが、何時も新鮮な態度で一緒に手拍子を取りながら歌い、楽しく対応してくれた妻には感謝している。
 入所当初には、ときわ会の葦の会の皆さんや、TOMACの皆さんが遠路わざわざ慰問に来て下さり、歌やマジックで楽しませてくれて、想い出を作ってくれたことには本当に感謝に堪えない。
 今年に入ってから、言動が時々おかしくなり、看護士さんから聞いた話では、脳を傷つけると老化が健常者より、20年も早いとのことだった。最近は昼間でもベッドで横になる時間が多くなって来たとは聞いていた。1年前には肝心の亭主が脳梗塞で倒れてしまい、見舞いに来られなくなってしまったのも張り合いを無くしてしまったように思う。6月7日面会に行くと、何時も玄関付近にいるのに見えないので、部屋を覗いて見ると、本人がいなくてベッドが立てかけてある。看護士に聞いたところ少し体調がおかしいので2、3日八街総合病院に入院して様子をみるがそんなに心配はないとのことだった。大急ぎで病院に駆けつけた。
 酸素マスクをしていびきをかいて眠り続けていた。声をかけても、体を揺すっても目を覚ますことは無かった。以後15日まで眠り続けた。夜中に娘から電話があり、お母さん連れてきたとのこと、死を意味していることは明らかだった。18年間重荷を背負ってよくここまで頑張って来た妹、死に顔は重荷を下ろしたやすらかな元の顔に戻っていた。冥福を祈る。
 

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