テキスト ボックス: 高齢者の豊かな生活のために                                1998年4月20日発行
手 賀 沼 通 信 (第1号)        〒270-1147 千葉県我孫子市若松151-3
  (TEL&FAX:0471-83-2898) (E-mail:y-nitta@mvc.biglobe.ne.jp)          新田良昭

手賀沼通信事始め

なぜ「手賀沼通信」の発刊を思いついたか

  「手賀沼通信」第1号をお手元にお届けします。

  「手賀沼通信」は、千葉県我孫子市に在住する私こと新田良昭が取材、執筆、編集、発行する一人新聞です。  私はこの3月31日に61歳でサラリーマンを退職しました。大学を出てから、三井生命に4年6ヶ月、日本アイ・ビー・エムに28年9ヶ月、アコムに4年9ヶ月と合計38年間会社人間でした。そして次にやることはまだ決まっていません。現在ハローワークで雇用保険請求の手続きをしており、いい仕事があれば働きたいとは思いますが、このご時世とこの年齢ではそう簡単に見つからない感じです。  「何もしないでいると、ボケるよ」とよくいわれます。確かに会社に通っていると、たとえ窓際族であってもそれなりの刺激があります。通勤に体を使い、会社の対人関係に気を使い、多少なりとも仕事に頭を使います。自然にボケ防止になっているのです。ところが退職して何もすることがないと、体も気も頭も使う機会がありません。朝からいい気になってビールなぞ飲んでいると、アルコール依存症になるのが落ちです。  そこで「ボケ防止に情報発信を」と考えついたのが新聞発行でした。情報発信をすれば情報収集にもつながり、次にやることのきっかけも掴めるのではないかと思って始めた次第です。

一人新聞のお手本

  高知県須崎市に「土佐一人新聞」を発行されている三好さんという方がおられます。この方は会社の役員でしたが、思い立って奥様と二人で都会を抜け出し、高知市に近い風光明媚な須崎市で農業を始めました。米とミカンと野菜を作り、家畜を飼い、養蜂でハチミツを生産しながら、月1回の一人新聞を発行しています。また一人で自宅の建築に取りかかっていますが、家を建てる地盤を固め、建築用の材木を伐採し、切った材木を山からおろして来るのも自力です。また、酒造トラストで有志を集め、作った酒米から「土佐一」を醸造させて、有志に配っておられます。  したがってこの土佐一人新聞は、人にまねのできない「非日常的な」日常生活や、イノシシの話ミツバチの話など興味深い体験談が出てきますが、本来の目的は鋭い切り口でいまの世の中を切りまくることに置かれています。私はこの新聞を2年半ほど前から送ってもらっており、時間ができたら自分も一人新聞を作ってみようと思っていました。もちろん「土佐一人新聞」に太刀打ちできるとはとても思いませんが、できるだけ近づきたいと考えております。

テーマは高年齢者の生活に役立つこと

  いま年金制度と健康保険制度が揺れています。また資産の目減りが目立っています。家のローンを返し終わり、多少の蓄えで老後の生活をと考えていた退職者にとっては大変住みにくい世の中となっています。またこれからの若い人たちにとっては、年金に対する不安がぬぐえません。バブルの後遺症とともに、少子化のスピードと高額な老人医療費と世界に類を見ない低金利政策がその原因です。老後への不安が増えています。  私は平成5年に社会保険労務士の資格を取りました。仕事の都合で社会保険労務士としての登録はまだしていませんが、老後の問題はこの資格に大いに関係しています。自分も老後のことを考える年齢になり、再度関連する法律や制度について勉強してみたいと考えるようになりました。  この「手賀沼通信」は、老後のことを考える材料やヒントを提供させていただくつもりです。暗い話題だけでなく、明るい話題を意識的に取り上げたいと思います。本や雑誌からの一般論でなく、なるべく自分の体験や取材を通して生の内容が出せればと思っています。  また地域との接点も探ってみたいと思います。所期の目的が達成できるどうか、ご愛読くださるようお願いいたします。

「手賀沼通信」配布の要領

  この一人新聞は、できれば月1回発行したいと思っています。購読料は無料、大きさは電子メールの場合はB5版の4ページとし、FAX、郵便の場合はB4版の2ページとなります。いずれかの方法でお送りいたします。  電子メールアドレス、FAX番号をお持ちの方はご連絡ください。郵便が一番費用がかかりますので、電子メールが使えれば有り難いです。(手間も郵便が一番かかりますが、今のところ時間はたっぷりあるのでそちらは気にしていません)  なおワープロソフトはワードを使っています。一太郎などワード以外のソフトをお使いの方はお申し出ください。一太郎などでも読めるようテキストの形でお送りします。

お願い

  手賀沼通信を読まれた後の感想とご意見をお待ちしております。また年金その他高齢者の生活に関するご質問があればお寄せください。出来る限り調査して、次回以降の手賀沼通信で取り上げさせていただきます。  また、今後送って欲しくない方もご連絡ください。


年金をもらうまで

  手賀沼通信の最初のテーマは、サラリーマンの高齢者にとってもっとも関心のある厚生年金の話から入りたいと思います。   厚生年金や共済年金は60歳になると受給権が発生します。男性の場合で昭和16年4月1日までに生まれた人、女性の場合で昭和21年4月1日までに生まれた人は65歳からもらえる年金と同額を「特別支給の老齢厚生年金」という名目で60歳から受け取ることが出来ます。それ以降に生まれた人は生年月日に応じて、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢が61歳から64歳と異なってきます。60歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえる年齢までは、約半額の部分年金となります。そして昭和24年4月2日以降に生まれた男性と昭和29年4月2日以降に生まれた女性は65歳から老齢厚生年金がもらえることになります。  年金はもらえる年齢になっても自分で請求の手続きをしない限りもらえません。自動的に社会保険庁が支給することはありません。手続きは結構面倒ですし、時間がかかります。

1.年金額の照会

  それでは年金をもらうまでどんなことをする必要があるか、私の場合を例にご紹介しましょう。私の場合は年金に関心があり、勉強のために余計なことまでしているので必ずしも良い例ではありませんが、少しは参考にしていただけるのではないかと思います。

  自分の年金がいくら出るのか、それを知るために平成7年11月、新松戸にある松戸社会保険事務所を訪れ、年金見込み額の照会を行いました。「55歳くらいになると社会保険事務所へ行くと教えてくれるよ」と聞いたので試しに行ってみたのです。基礎年金番号(当時は年金証書記号番号)と印鑑、それに免許証その他本人確認のための証明になるものが必要だったように思います。かなり待たされましたが、係の人が親切に教えてくれました。

  コンピューターに就職してから30年以上にわたる給与がインプットされており、しかもそれが再評価されているので、年金計算の元になる標準報酬月額は、複雑な計算式で出されます。(私の場合昭和35年の初任給は1万4千円でしたが、これにある数字を掛けて再評価するのです)ついでに家内の厚生年金の見積り額も聞きましたが、本人でないと教えられないと断られました。夫婦でもプライバシーは厳しく守られていました。

.年金相談

  次に行ったのが銀行で開いている年金相談の窓口でした。昨年1月、60歳になる直前に、2つの都銀と1つの地銀で話を聞きました。3つもの銀行に行ったのは、将来自分が年金相談を受けた時の参考にしたいためでした。都銀は個人相談、地銀は30人くらいの人を集めたセミナー形式でした。銀行が年金相談を行うのは、年金の振り込み口座を自分の銀行にして欲しいためなのです。いずれも社会保険労務士が相談を受けてくれました。
  ところが驚いたことに、ある都銀での社労士は間違ったことを教えてくれました。今年の4月から厚生年金と雇用保険の失業給付はどちらか1つだけの選択となりましたが、それは昭和13年4月2日以降に生まれた人が対象になるのです。それ以前に生まれた人はいつ失業しても雇用保険はもらえます。昨年の年金相談の時にその点を聞きましたら、「4月1日以降に止めると、どちらか1つだけになるので3月中に止めたほうが得ですよ」との答えでした。その時はまだあまり情報がなく、おそらくその社会保険労務士も誤解をしていたのでしょう。この誤解は結構あったようで、今年になってから日経新聞にも、人事担当者が誤解して早期退職を薦めているという記事も出ていました。 

.特別支給の老齢厚生年金の裁定請求

  昨年2月60歳になったので厚生年金の裁定請求を行いました。裁定請求とは社会保険庁に、年金を支給してくださいと申し出ることです。裁定請求は60歳になったら忘れず行いましょう。その時まだ勤めていて給料が高く年金がもらえない(支給停止)場合でも、裁定請求は済ませておくほうが後々のことを考えると望ましいといえます。
  裁定請求には
  ・厚生年金保険老齢給付裁定請求書(年金振込先の金融機関または郵便局の証明が必要)
  ・厚生年金被保険者証または年金手帳
  ・配偶者の国民年金手帳
  ・戸籍謄本
  ・住民票謄本
  ・みとめ印
  ・課税証明書、非課税証明書のいずれか(配偶者が年収850万未満の時)
などが必要です。

  私の場合は家内が専業主婦ですので、市役所で非課税証明書をもらって提出しました。配偶者が年収850万円未満の時は、加給年金が基本年金に加算されて支給されます。  請求先は勤務先を管轄する社会保険事務所となります。裁定請求をすると約2ヶ月後に年金証書が送られてきます。まだ厚生年金の被保険者である場合は、在職厚生年金が支給されるかあるいは全額支給停止になります。全額支給停止は年金額によって違いますが、まず月収が38万円を超えた場合は年金は支給停止になると考えて間違いありません。
  厚生年金基金にも加入している時は、そちらにも請求する必要があります。厚生年金の年金証書が来た後、コピーを添付して担当の年金基金組合に請求します。
  私が体験したのはここまでです。以下は物の本からの記事です。

4.裁定請求した人が65歳未満で退職した時

  在職老齢年金をもらっているか全額支給停止の人が64歳までに退職した場合は、退職後1ヶ月を経過した時点で資格喪失届を退職した会社を管轄する社会保険事務所に提出する必要があります。年金額が改定され年金の支給が開始されます。年金は増額され、1ヶ月か2ヶ月後に支給されます。
  年金の支給は偶数月の15日に支給されるのが規則ですが、1回目に限って奇数月に支給されることもあります。
  なお、資格喪失届は郵送でもかまいません。

5.65歳になった時 

  65歳になった時は、「裁定請求書(国民年金・厚生年金保険給付裁定請求書)」が65歳になる誕生月の前月までに送られてくるので、住所地の市区町村長の証明を受け返送することになります。


知っておくと便利

・「年金は60歳からもらうと損だそうですね。65歳からもらった方がいいのでしょうか」と何人かの人から聞かれました。特別支給の老齢厚生年金については60歳からもらっても、65歳からもらっても金額は同じです。
・一方、国民年金については60歳からもらうと65歳の金額の58%しかもらえません。しかも一生その額です。自営業やサラリーマンの奥さんの場合は要注意です。なお、老齢厚生年金の受給者が老齢基礎年金(国民年金)を繰り上げて受給すると、特別支給の老齢厚生年金は支給停止となります。したがってサラリーマン本人の場合は通常は繰り上げは考えられません。
・ただし厚生年金を繰り下げて受給すると、年金額は増額になります。たとえば66歳からもらうと年金額は12%増しになります。この際は老齢基礎年金も繰り下げる必要があります。
・月末付けで退職すると、翌月の年金は支給されません。たとえば3月31日付で退職すると、4月1日に厚生年金の資格を喪失します。年金は資格喪失月の翌月から支給されるので5月分からの支給になります。3月30日付けで退職すると、4月分から年金が出ます。もし会社が認めてくれるなら、月末の1日前に退職すると1ヵ月分の年金を余分に受け取れることになります。


地元の勉強会に申し込む

  女性の場合は近所づき合いや習い事やボランティアなどでしっかり地元でのネットワークを持っていることが多いのですが、サラリーマンの場合、地元の人とのつながりが薄い傾向にあります。  私の場合も「愛友会」という民謡の会に入っているくらいで、あまり我孫子の人との付き合いはありませんでした。退職後は何とか地元とのつながりを持ちたいと思っていたやさき、今まであまり読んでいなかった我孫子市の広報紙「あびこ」が目に付きました。4月から開校される40種類くらいの各種の講座や学級が出ていました。そこで

  ・高齢者福祉の学習-福祉基礎コース(全24回)
  ・男性料理-料理の基礎(全12回)
の2コースを申し込みました。

  なんとなく気恥ずかしい感じがしますが、これからは何にでも挑戦してみようという気持ちも持っています。市の講座は何といっても費用が安いのと近いので出やすいという特徴があります。また、出席する人と親しくなれる楽しみもあります。
  我孫子のようなあまり大きくない市でもいろいろな企画があります。地方によってはおそらくもっとすばらしいサークルがあると思います。その気になって探せばチャンスはいくらでもあると思います。
  また、新聞のチラシを見ていたら、柏にある麗澤大学の文化講演会「21世紀日本への提言」(全7回)の案内があったので、これも申し込みました。7回で受講料3500円も魅力でした。
 私のモットーは「生涯学習」と「生き生きネットワーク」です。第二の人生はまだ始まったばかりで、行き先の定まらないヨットのようにふらふらしていますが、いろいろなことに足を突っ込んでいるうちに目的地が見えてくると確信しています。

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