テキスト ボックス: 高齢者の豊かな生活のために     2001年3月20日発行      新田ライフプランニング
手 賀 沼 通 信 (第36号)         〒270-1147 千葉県我孫子市若松151-3
  (TEL&FAX:0471-83-2898) (E-mail:ynitta@jcom.home.ne.jp)                 新田良昭 
  http://www.mercury.ne.jp/koyukai

 今月のテーマは、手賀沼通信の原点に戻って「老いを考える」とします。
 人は例外なく年をとり必ず死にます。どんなにお金があっても、どんなに地位が高くても神さまは公平です。万里の長城を築いた秦の始皇帝は不老不死の薬を求めて部下を広大な領土の隅々まで遣わしましたが、どこにも見つけることはできませんでした。あたりまえです。
 しかし楽しい老年期をすごし見事な人生の終末を迎えることは努力次第によって可能です。今月はそのことについて考えてみたいと思います。
 人の価値観は多様です。今迄多くの老人を見て来たり自分の老い先を考えたりしながら「明るく楽しく老年期を過ごし惜しまれて死ぬ方法」を書いてみました。私の意見は例によって独断と偏見に満ちています。それは違うとかおかしいではないかといったご意見が出るのは当然です。また書いたことについて自分でもしっかり実行できていることはほとんどありません。ただ、既に人生設計ができている方はさておき、今迄全く考えても見なかったという方に、それぞれご自分の老後や死を考えるきっかけになればと考えております。

 そこでお願いがあります。このテーマについて皆様方のご意見をお寄せいただきたいのです。感想,反論,ご意見何でも結構です。メールでもお手紙でも結構です。できれば5月の「手賀沼通信」に、お寄せいただいた皆様方の文章を載せさせていただきたいと思っています。お名前を出す事はいたしません。忌憚のないご意見をお待ちしております。


明るく楽しく老齢期を過ごし惜しまれて死ぬための12章

1.「自立」が明るく楽しい老年期のキーワード

 男性の皆さん、奥さんが先に逝ってしまった後のことを考えたことがありますか。平均寿命からすると男性は76歳、女性は83歳、しかも夫婦は男性のほうが年上のことが多いので、自分が残されると考えている人は少ないのではないでしょうか。ところがそううまくはいきません。私の両親の場合も家内の両親の場合も父親が残りました。
 男性にとっての自立とは、毎日の生活を自分一人でやれるということだと思います。炊事、洗濯、掃除、買い物、近所ということだと思います。炊事,洗濯,掃除,買い物,近所づきあいなどです。もし自信がないという方は今から訓練してみてください。料理などやってみれば以外に楽しいことがわかります。また奥さんに感謝されます。体が動く間は子供や孫の世話になるなどとは考えず自分一人で生きることを考えましょう。

 女性にとっての自立はやはり経済問題が一番です。また公的な規則や手続きに慣れていないことが多いのではないでしょうか。年金や保険がどうなっているか,不動産はどうすればいいのかなど戸惑うことが多いと思います。ご主人が逝った後、しっかりした生活の基盤を作るために遺言を書いておいてもらうことが大切です。夫が亡くなった後財産を息子や娘が持っていってしまい、自分は厄介もの扱いといった話をよく聞きます。死を話題にすることは、いやなものかもしれませんが、死は必ずやってきます。さりげなく、しかし明確に話し合っておきましょう。

2.生きがいを持とう

 定年になってさて何をしようかと迷う人が少なくないようです。生きがい探しのセミナーや生きがいを求める人達のサークル活動が盛んです。生きがいを持っている人とただなんとなく毎日を送っている人との違いは若さに現れます。身体的な若さだけでなく精神的な若さも違います。
 生きがいは人によって違います。他の人から見てなんであんなことが面白いのだろうと思われるようなことも,当人にとって生きがいであれば,余計な口を挟むことはタブーです。
 生涯現役,生涯学習,ボランティア活動,お金儲け、ゴルフ,水泳、ウォーキング、盆栽、ガーデニングなど趣味でも仕事でも世のため人のためでもなんでも結構です。生きがいを持ちましょう。
 ただ、薬害エイズの安部元教授やそごうの水島元会長やKSDの古関元理事長のように,世の中に害をもたらすような生きがいは許されません。

3.長生きをしようなどとは思わないこと

 今の世の中長生きはしたくなくても出来る時代です。無理に長生きをしようなどと考えてはいけません。元気で自立して人に迷惑をかけずに暮らせるなら,これ以上のことはありませんが,そうでないなら,生きることに執着しないほうがいいでしょう。何事にも執着はよくないのです。人はどうせ死ぬものです。自然に任せればいいのです。自分が身体中に管を入れて点滴しながらじっとベッドに横たわって死を待っているだけの状態を想像するとぞっとします。人に迷惑をかけずPPK(ピンピン生きてコロリと逝く)か尊厳死で逝きたいものです。
 よくちょっと病気になるとすぐ医者にかかる人がいます。薬を一杯もらっては結局のまずに捨ててしまう人もいます。病気になったら医者にかかるのでなく,病気にならないよう努力しましょう。そして介護保険の世話にならず喜んで介護保険料を払いましょう。

 ただ障害者の方や病弱な方にはあてはまりません。大いばりで出来るだけ長生きしてください。元気な健常者がお世話する義務があるのです。

4.感謝の気持ちを忘れずに

 私の父の姉は今から20年くらい前に90歳でなくなりましたが、なくなる前に皆さんありがとうといって死んだと身近にいた妹から聞きました。叔母は一人息子を日中戦争で亡くし、女ぐせのよくなかった叔父に先立たれ私の家に同居していました。同居といっても台所は別で自立した生活でした。その上家は叔母の家だったのでこちらが同居していたようなものです。愚痴を言わず,大袈裟に考えず,でしゃばらず、人を頼らず、静かな毎日でした。そして自分で自分のことができなくなると自分からさっさと老人病院に入院し,毎日ありがたいありがたいといって生活していたそうです。当時はそんな話を聞いたとき、それがどんなことを意味するのかあまりよくわかりませんでしたが,そろそろ高齢者の仲間入りする年齢になると,叔母の偉さが改めて理解できます。
 今の自分をふりかえって、毎日感謝の気持ちをもって生きているかと聞かれたら、どちらかというと世の中に不平と不安を感じながら生きていると答えることになりそうです。しかし社会や経済や政治の方向と感謝の気持ちとは別です。このような時代だからこそ,家族や回りの人に感謝の気持ちを持ちながら生きていかなくてはならないと思います。

5.介護を経験してみよう

 昨年4月から介護保険がはじまりました。介護保険は介護の大変さを家族だけでなく社会全体で支えようということでできた制度です。約1年たっていろいろ改善点や反省点も出てきていますが,いずれにしてもこれからの高齢社会を考えると欠く事の出来ない制度です。
 介護はお金と人手がかかります。私達全員が何らかのかたちで介護に関わるようになるのが理想ではないでしょうか。

 もし自分は介護なんか不要だと考えているとしたら大間違いです。なかなか死ねない時代、PPKの幸運を享受できる人は少ないのです。昔は看取り3月といいましたが、今は違います。昨年の厚生白書によると65歳の男性の場合、平均余命は16.5年ですが,そのうち自立期間は15年です。つまり1.5年は要支援か要介護なのです。女性の場合は21年の平均余命のうち,2.7年が要支援または要介護となっています。  
 自分が介護される立場になったとき介護した経験があるのとないのでは違ってきます。介護した経験があると介護されやすいのです。介護者の気持ちがよくわかります。今の80歳以上の高齢者は兄弟が多かったのと,親が早死にだったため介護の経験があまりありません。介護しにくい人が多いのではないでしょうか。
 親の介護をした人は問題ありませんが、そのチャンスのない人は、老人施設などのボランティア活動で介護にかかわってみましょう。

6.地域との繋がりを持とう

 サラリーマンは現役時代は意識的に地域の活動にかかわらない限り地域との繋がりはあまりありません。しかし定年後の長い人生を楽しく送るには地域社会との関係を大切にする事がキーです。もちろん近所との交渉を出来るだけ少なくして生活する事も可能ですが、いろいろな行事や交代制の当番や災害時の事などを考えると、良い関係にあるに超したことはありません。また地域の役員を経験して市役所や警察などに知人ができると何かと便利です。
 私も今年自治会の役員を1年間勤めてみて、いろいろなことがわかるようになってきました。近所の顔見知りも増えました。最近住宅地やマンションも空き巣やピッキングなど物騒になってきています。地震や噴火も頻繁に起きています。お互い声を掛け合ったり助け合ったりすることがいざというとき役に立つのではないでしょうか。

7.ITこそ高齢者のもの

 IT革命は企業や若者のためだけではありません。高齢者こそIT革命のメリットが大きいのです。IT革命が高齢者にもたらすものを挙げてみましょう。

@インターネットを使うことにより家にいていろいろな情報がえられる。
世界中の情報が即時に安く手に入ります。検索にちょっとしたテクニックが要りますが、慣れれば辞書も「知恵蔵」も地図も時刻表も買う必要はありません。

Aインターネットショッピングで家にいていろいろな買い物が出来る。
わざわざデパートに行く必要はありません。年をとって買い物が億劫になったとき更に威力を発揮します。    

B電子メールで交流の輪が広がる
電子メールでやり取りする高齢者が増えています。手紙というとちょっと身構えますが,メールは気楽に出せます。電話やFAXのようにとんでもない時間にかかってきて不快な 思いをする事もありません。

C情報発信が容易になる
情報発信が簡単に出来ます。「手賀沼通信」もパソコンがなければこんなに簡単には出せません。ホームページを作る人も増えています。    

Dネットで株式や投資信託や外貨MMFへの投資が手軽に出来る
証券会社に出かけたり電話をしたりする必要はありません。安く手軽に投資できます。自己責任になりますので人を恨む事もなくなります。    

Eパソコンで年賀状作成、記録の整理,確定申告,資産の管理などが容易になる
パソコンでの年賀状作成は常識になりつつありますが,ワードやエクセルなどのソフトを使って記録,計算、作表などが簡単に出来ます。

Fデジカメと組み合せて写真の整理が簡単
デジカメで撮った写真をメールに貼りつけて送るのが大はやりです。

 以上は高齢者のIT利用のメリットの例です。これ以外にもiモードの利用などを含めるとITの価値はどんどん広がります。

8.仲間作り,ネットワーク作りを

 マズローの欲求5段階説にもあるように,人は何かの集団に帰属していたいという気持ちがあります。会社人間の間は会社に属しているためにあまり気になりませんが、会社から離れてみると仲間が欲しくなってきます。若いときよりも退職後のほうが,同窓会や同期会への出席率がよくなるのがその証拠かもしれません。
 趣味の会でも勉強会でもボランティアでもなんでも結構です。仲間作りをしましょう。市の広報や同好会の機関紙や市販の雑誌などに会員募集の案内が出ています。インターネットでも募集しています。「東京いきいきらいふ推進センター」や「日本セカンドライフ協会」などでは,いろいろな交流サークルや団体を紹介してくれます。
 その気になればいくらでも仲間が出来ます。ただ私の反省では、あまり多くの会に首を突っ込むと中途半端になってしまうことです。永く続けられる会がいいでしょう。そして世話役の一端を引きうけるくらいになれば会の中での住み心地が良くなることでしょう。

9.家族を大切に

 一人暮らしでない限り私達の生活の基盤はやはり家族だと思います。そして子供が成長し両親をおくった後は,夫婦という事になります。配偶者との生活を大切にする必要があります。
 そのためにはつかず離れずがいいのではないでしょうか。夫婦でも全く一緒という事はありません。お互い趣味も違い友人も違います。生活の習慣も違うかもしれません。自分の生活を守りながら助け合っていくのが理想ではないでしょうか。
 そのためには何らかのルール作りが必要かもしれません。家庭によって歴史の積み重ねがあるため一概には言えませんが,一例としてお互いの言葉とか家事の分担とか小遣いとか子供の前での振るまいなどをどうするかです。
 そして出来れば遺言を残すと同時に,財産の明細や重要書類の保管場所やいざというときの連絡先なども書いておくといいと思います。PPKの死は何時やってくるかもしれません。 

10.健康がベース

 明るく楽しい老齢期を過ごすベースはなんといっても健康でいることです。健康は自分で守っていくものです。そのためには一人一人自分流の健康法を考えましょう。
 健康のもとは,食べ物と運動と生活習慣です。食べ物は栄養のバランスを考え食べ過ぎをしないことです。油の多いものや塩気の多いものも要注意です。私の場合は全く落第ですが。
 運動は足を使う事が一番でしょう。年をとってくるとジョギングよりはウォーキングがいいと聞いています。それも思いついたときに多くやるのではなく毎日実行する事が大切です。
 生活習慣で云えば,お酒の飲みすぎ,タバコ,睡眠不足、イライラ,不規則な生活などをやめることでしょう。

 ところで上に書いた事はどこでも言われている事です。目新しい事は何にもありません。
 私の意見は違います。みんなが同じようにやる事はないのではないでしょうか。好きにすればいいと思います。タバコを離せない人に煙草を止めろといったらかえってストレスがたまるでしょう。
 日本人は今世界一の長寿国です。農薬たっぷりで無機栽培の野菜を食べていてもこんなに長生きなのです。ダイオキシンもなんのそのです。好きなものも制限して、やりたくない事をしてまで長生きしたいとは思わないという人は、それでいいと思います。結局はこれも自己責任なのです。自分流の健康管理とはそういう意味もあります。要はPPKにつながればいいのです。

11.準備は若いうちから

 ところで、生きがいづくり、健康づくり、仲間づくりなどは出来れば定年になる前から心掛けて準備しておくほうがいいでしょう。定年になってからいきなりといってもうまくいくかどうかわかりません。またここではあえて触れなかった定年後の生活費などお金の問題は,出来るだけ早い時期から準備しておくことです。早ければ早いほどいいでしょう。
 もし定年後に新しい仕事を始める予定があり,それに資格が必要な場合は,現役の間に資格を取得して,人脈づくりなども早めに取り掛かることが望ましいと思います。

12.人生は楽しむもの

 人生の最後のステージは楽しいものにしたいものです。私は常々人生の黄金期は60歳台と唱えています。現役時代でも仕事がうまくいったときは大変な喜びがありますが,なんといっても退職して自分の時間を自由に自分の好きなことに使えるということはわくわくするものです。
 その人生の黄金期を最大限に楽しむためには3つのことが欠かせません。それは、好奇心と遊びごころとプラス思考です。

 何でもやってみよう,何か面白い事はないか、という好奇は生きがいのきっかけをつかむアンテナです。若さを失わない最大の武器です。生涯学習で学習対象の発見も好奇心からが大きいのです。
 遊びごころは取り組み姿勢です。余裕をもって楽しくやろうということです。私の場合まだ遊びごころが足りないのを自覚しています。先日中推協を含む4団体の「楽しいセカンドライフは自らの手で演出しよう」というフォーラムで、あるパネラーが「浮き草人生」が良いと言っていました。好きなことを自由に楽しみながらやろうということでした。
 プラス思考は気持ちの持ち方です。ちょっとまずいことがあっても明るい面を見て,次の飛躍の糧にしようということです。マイナス思考の人は良いことがあっても,それが気にかかって心配ばかりする人です。プラス思考は人生をバラ色に変える考え方です。
 この3つのキーワードで人生を大いに楽しみましょう。


ぼけたらあかん、長生きしなはれ               作 書籍店主、某老、98歳

   老人の処世術を見事にうたった詩を見つけました。なかなかここまでの心境にはなれません。 作者不詳ですので黙って掲載しても叱られないと思いご紹介いたします。

1.年をとったらでしゃばらず
    憎まれ口を泣き言に
    人の陰口やぐちいわず
    他人のことをほめなはれ
    聞かれりゃ教えてあげてでも
    知ってることでも知らんふり
    いつでもアホでいることや

2.勝ったらいかん負けなはれ
    いずれお世話になる身なら
    若いもんには花もたせ
    一歩さがって譲るのが
    円満にゆけるコツでっせ
    いつも感謝忘れずに
    どんな時でもヘェおおきに

3.昔のことはみな忘れ
    自慢話もしなはんな
    わしらの時代はもう過ぎた
    なんぼ頑張り力んでも
    体がいうことききまへん
    あんたは偉いわしゃあかん
    そんな気持ちでおりなはれ

4.お金の欲を捨てなはれ
    山ほど積んだゼニ金も
    死んだら持っていけまへん
    あの人はエエ人やったと
    そないに人に言われるよう
    生きてるうちにバラまいて
    徳を山ほど積みなはれ

5.そやけどそれは表向き

    ほんまはゼニを離さずに
    死ぬまでしっかり持ってなはれ
    人にケチやと言われても
    お金があるから大事にし
    みんなベンチャラいうてくれる
    内緒やけれどほんまだっせ

6.我が子に孫に世間さま
    どなたからでも慕われる
    エエ年寄りになりなはれ
    ボケたらあかんそのために
    頭の洗濯生きがいに
    何か一つの趣味持って
    せいぜい長生きしなはれや

inserted by FC2 system