テキスト ボックス: 高齢者の豊かな生活のために                       1998年10月20日発行
手 賀 沼 通 信 (第7号)      〒270-1147 千葉県我孫子市若松151-3
  (TEL&FAX:0471-83-2898) (E-mail:y-nitta@mvc.biglobe.ne.jp)             新田良昭


  手賀沼通信第7号は少子化について取り上げたいと思います。高齢社会は少子社会を言いかえたものといってもいいでしょう。高齢社会は少子社会によって必然的にもたらされるものでもあります。私の世代はもう直接少子化防止のお役には立てませんが(チャップリンやイブモンタンのような例外はありますが)、子供を産みやすくする社会を作る環境の整備など、間接的なお手伝いはできると思います。
  少子社会を正面から取り上げた厚生白書の内容をご紹介しましょう。

平成10年版厚生白書「少子社会を考える」を読んで

  7月から8月にかけて、平成10年版「厚生白書」を読みました。今年の厚生白書には「少子社会を考える−子供を産み育てることに『夢』をもてる社会を」というサブタイトルがつけられています。厚生白書は今まではどちらかというと、高齢社会にフォーカスした書き方がされていましたが、今年は高齢社会の裏返しでもある少子社会がもたらす問題点やなぜ子供を産まなくなったのかなどについて掘り下げて分析しています。今年の2月に出た厚生省年金局の年金白書「21世紀の年金を『選択』する」をあわせて読むことにより、厚生行政の考え方の一端がわかるようになっています。

  日本の白書は、日本情報教育研究会の「日本の白書」によると、官公庁発行のものだけで39種類もあります。とてもすべてに目を通すわけにはいきませんが、2年前研修教材を作るため、そのなかで「経済白書」「労働白書」「環境白書」「国民生活白書」「通商白書」「厚生白書」をざっと拾い読みしました。その時感じたのは、「厚生白書」が一番読みやすく、わかりやすいということでした。レターサイズの大判で一番重いのですが、字が大きくて高齢者向けですし、カラーを使ってきれいに編集されており、図表やグラフ、写真などがふんだんに挿入されていて、添付資料の豊富さ、多彩さも抜群です。何よりも感心するのは、厚生行政についての反省とか問題点などについて正直に分析しており、悪い点は悪いとして謝っていることです。これは、菅厚生大臣の時に出た厚生白書で、エイズ問題について厚生省のとってきた医療行政を深く反省し陳謝したのがきっかけとなったわけですが、小泉厚生大臣の元で作られた今年の白書にもその方針が引き継がれています。さらに今年は女性が中心となって作成されたのが特徴で、マスコミにも大きく取り上げられました。
  対照的なのが「経済白書」です。難しく、読みにくい上、政府の経済政策の誤りについてはほとんど触れていません。わざとわかりにくく書いているのではないかという疑いさえ持ちます。経済企画庁としては他の省庁の失政に触れることはタブーなのかもしれません。もし来年の経済白書が書かれる時まで堺屋長官のままだったとすれば、どんな経済白書が出てくるのか楽しみです。

  以下、女性のライターが中心となって書かれた、第1部「少子社会を考える」のポイントとなっている第1章と終章の一部を要約してみましょう。第1部は6つの章で220ページからなっており、また各項目毎に表やグラフで具体的に説明されておりますが、ここでは言葉で要点しかお伝えできないのが残念です。
  第1章は「人口減少社会の到来と少子化への対応」です。戦後の日本の出生数と出生率は次のとおりで、ともに1970年代半ばから低下しつづけています。

                 出生数         合計特殊出生率

  1949     270万人          .23
     (第1次ベビーブーム)
  1973     209              .09
     (第2次ベビーブーム)
  1995     121              .43

  そして1997年には、ついに15歳未満の年少人口より65歳以上の老年人口のほうが多くなりました。このままの状態が続くと、21世紀初頭、我が国の人口は減少に転じ、21世紀を通して減少を続けます。国立人口問題研究所の1997年中位推計によると、現在の12600万人の人口は、2050年には約1億人、2100年には約6700万人となると予想されています。
  白書では少子化がもたらす影響が経済面と社会面とからとらえられています。まず少子化がもたらす経済面の影響としては、

  ・労働力人口が減少する。 
    6787万人(1997)    6260(2025)
  ・経済成長を制約する恐れがある。
  ・現役世代の負担が増大する。
    国民所得に占める社会保障給付費(年金、医療、福祉等)は18.5%→29.5%〜35.5%
  ・現役世代の手取り所得が低迷する。
であり、少子化がもたらす社会面の影響としては、 
 ・家族の形態が多様化し、家族の概念そのものが変化することも予想される。
  ・子供の健全な成長への影響が懸念される。
  ・住民に対する基礎的なサービスの提供が困難になることが懸念される。
  ・地域社会が担ってきた国土資源管理等の役割が維持できなくなる恐れがある。
とされています。

  戦後の出生率の低下の流れは2つの時期に分けられます。1回目は第1次ベビーブーム(1947年〜49年)の後で、結婚した女性が産む子供の数が減ったためでした。昭和12年生まれの私の世代は兄弟が4人とか5人という家庭はざらでしたが、戦後は子供の数は2人が一番多く、多産多死から少産少死へと状況が変わりました。
  2回目の出生率の減少は1970年代半ばからで現在まで続いています。その主たる原因は晩婚化の進行です。

  白書は晩婚化の原因を次のように解説しています。
  ・雇用者化、生活空間の郊外化が、母親に子育て負担を集中させた
  ・仕事と家事・育児の両立を志向する女性には、きわめて負担が重かった。
  ・専業主婦にとっても、結婚の現実は優雅なものではなかった。
  ・学歴()偏重社会は、母親にも大きな負担をもたらした。
  ・結婚に積極的な夢や希望を感じられなくなってきた。
  ・男性にとっても結婚は急ぐ必要のないものになっている。

  第2章は「自立した個人の生き方を尊重し、お互いを支え合える家族」で今後の家族のあり方を、第3章は「自立した個人が連帯し合える地域」で今後の地域のあり方を、第4章では「多様な生き方と調和する職場や学校」で今後の職場や学校のあり方を説いています。

  終章では「子供を産み育てることに『夢』を持てる社会を」作るにはどうすれば良いかを次のようにまとめています。
  ・家庭内の個人が自立し、それぞれの生き方を尊重する中で、お互いを支え合えるようになれば、家族は潤いの感じられるものとなり、子育てに喜びを感じることのできるものになるだろう。
  ・職場優先の企業風土の是正と多様な生き方の適切な評価により、男性も女性も家庭や地域での生活と両立する働き方ができるようになるだろ。
  ・生活圏にあったまちづくりにより、地域社会に新たな共同性が生まれると、地域による子育て支援力が増し、親たちの子育ての負担が軽減され、子育ての喜びが増していくだろう。
  ・職場における新規学卒採用の偏重と年功序列型賃金制度の見直し、学校教育における多様化 ・流動化の動きによって、就業や就学と子育てが両立する人生をより柔軟に設計できるようになるだろう。
・過度の受験戦争が是正され、親子関係がより多面的なものとなり、教育に対する親の不安感も 軽減されるだろう。
  ・家族・地域・職場・学校がそれぞれ変わっていくことで、「男女が共に暮らし、子供を産み育てることに夢を持てる社会」の形成につながっていくことが期待される。

  最後はやや理想主義的で抽象的になっていますが、女性の目から見た少子化防止に対する警告といえるのではないでしょうか。


高齢者対象のパソコン教室のお手伝い

  7月末から8月にかけて、東京都中高年勤労者福祉推進協議会(東京都中推協)主催の「超初心者のためのパソコン入門講座」のアシスタントをする機会がありました。このコースは東京都中推協が会員のために開いたパソコン教室で、パソコンに触るのが始めてという超初心者のために、2時間のコース5回で一応パソコンの基礎を手ほどきするという教室でした。

  入門講座といっても、キーボードやマウスの操作からはじまって、ウインドウズ95、お絵描きソフトのペイント、ワープロソフトの一太郎、表計算ソフトの1-2-3を学び最後は前もって用意された新聞に、自分で作ったタイトル(ペイント)と記事(一太郎)とグラフ(1-2-3)を貼り付けるというかなり高度な内容です。講師は本業はサラリーマンですが、余暇生活開発士やD−PAL余暇大学事務局長などいろいろな肩書きをお持ちのパソコン達人の福田峰夫氏で、講座の内容も氏の発案です。生徒は中高齢者(といってもほとんどが高齢者)約20名、場所は都民が研修や会議で利用できる東京都の「労働スクエア」のパソコン研修室で八丁堀にあります。NECのバリュースターが30台ほど設置されており、モニターやプリンターもあってすばらしい環境です。

  最初は講師の福田さんと事務局の寺井さんの2名でコースを始められたのですが、質問が多くとても2名では手が足りないことがわかり、2回目からお手伝いのお呼びがかかった次第です。私を含めて3名が新たにアシスタントとして加わりました。
  ロータスの1-2-3は使ったことがなかったのですが、あとは使用経験があったのと、毎日パソコンに触っているので気軽な気持ちで引き受けました。ところが、いざ始まってみるとあちこちからお呼びがかかり、聞かれることもさまざまで、答えに窮することもあり結構大変でした。自分で使うことと教えることは別のことだということが実感できました。
  一部の高齢の初心者の方が苦労していたのは、マウスのダブルクリック、画面上での矢印をマウスで自由に動かすこと、ローマ字変換、大文字と小文字や「全角ひらがな」と「半角英数」の切り替えなどで、ワープロソフトや表計算ソフトに入るまでに大分時間がかかっていました。また、インターネットのアドレスが、どうしても紙に書いてあるとおりに打ち込めない方もいました。「初めてのパソコン」ということで思わず緊張のあまり肩や腕に力が入りすぎていたのでしょう。
  それでも最後まであきらめず、何とかついていこうという意欲には頭が下がる思いがしました。終った時の顔は皆さん晴れ晴れとしていました。今まではなんとなく気後れがしていたものが、やってみると意外に簡単に動いてくれると感じた方が多かったのではないでしょうか。事務局に対して「またこの続きを企画して欲しい」という声がたくさんの方からあがっていました。

  これからは高齢者にとってパソコンはなくてはならないものになると思います。杖や車椅子が身体機能の助けになるのと同じように、パソコンは知的機能と情緒機能の大きな助けになると確信しています。インターネットは無限の情報源ですので、家にいながら世界中の情報を取り入れることができます。パソコン通信はいながらにして友達の輪を広げます。記録をつけたり、財産の管理をしたり、ゲームを楽しむこともできます。何よりも頭と手先を使うことにより、ボケ防止に役立ちます。
  手賀沼通信の読者の方で、まだパソコンをお使いでない方は、だまされたと思って一度トライしてみて下さい。そして退職されて家におられる方は、ぜひ自宅に1台備えることをお勧めします。高級なものでなくて結構、私たちが普段使うような機能は、安いものでも十分備わっています。


健康器具を使ってみて

ハンディローラー

 足のマッサージをするためのハンディローラーを第5号でご紹介した椅子式マッサージ機といっしょに購入しました。椅子式マッサージ機は足裏のマッサージはできません。足裏のマッサージには、大きく分けて2つのタイプがあります。

  一つは今回購入したもので、ローラーが回転しながらマッサージをするタイプともう一つは、足の裏をたたいたりバイブレーションでマッサージするタイプです。どちらにするかは好みの問題と思います。これも実際にテストしてみて自分に一番合ったものを選ぶのが後で悔いを残しません。私はたたくタイプがよいかなと思いましたが、家内はローラー型を選びました。

  フジ医療器製、取得価格約2万5千円でした。

使った感想は、椅子式マッサージ機に比べると正直言ってそれほどインパクトのあるものではありませんでした。確かに気持ちはよいのですが、ローラーがくるくる回るだけの単純な刺激で、椅子式マッサージ機のようにいろいろなメニューを楽しむ事が出来ません。椅子式マッサージ機にはゲーム感覚での変化がありますが、ハンディローラーはあきてくる感じです。人間贅沢なものだと思いました。


本の紹介

別冊宝島407

「この資格なら役に立つ!」 高島徹治 編集                          宝島社  838

  資格情報研究センター代表の高島徹治氏の編集になる不況に打ち勝つ資格徹底ガイドです。高島さんはご自身でも社会保険労務士など約60の資格を持っておられ、別冊宝島シリーズの編集は、「この資格を取れ!」「この資格をつかめ!」に続く3冊目です。 

  私も資格に関心を持っていますので、ほんの中でちょっと座談会に顔を出させてもらっていますが、この本は何か資格を取ってみたいと思っている人にどの資格が役に立つかの情報をホンネで提供しています。またこのシリーズの特徴である読み物としての面白さもあります。同氏の著書「一生トクする資格一発合格術」(ティーツー出版)と合わせて読むと選んだ資格の合格への道が近づくと思います。なお、高島さんも手賀沼通信の読者です。 


6ヵ月を振り返って 感激と感謝

・手賀沼通信の発行を始めてあっという間に6ヵ月たちました。その間皆様方からは、温かい励ましやいろいろなご援助を頂き本当にありがとうございました。お礼申し上げます。

・新藤さんと大門さんからは興味ある一文を寄稿いただき、この通信に花を添えることができました。

・読者の数も電子メール、郵送、「日本中高年生きがいづくり協会」事務局長の上原さんのご協力による郵送分を合わせて120名を超えております。第1号の時の約2倍になりました。

・感想、ご意見などお待ちしております。

inserted by FC2 system